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[ 二次/いろいろ ]

「眼鏡人伝」その6

 マヨイガプレゼンツ、
 おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
 「眼鏡人伝」その6

 霧島がふらふらしながら立ち去った後、伊集院は愛想笑いをうかべながら手を差し伸べて、呆然としていた花井を建物の外にうながし、「病気じゃないのならそろそろお引取りいただけるかな」、と言った。
 まだ驚きがおさまらず蒼ざめた顔をしてはいたが、花井はすぐに気が付いて言った。「今、先生は何をなさったのですか?」伊集院のメガネは安物で曇りも見られ、何より彼は卑屈に微笑んでゴミをとっただけだったのである。
 「君、さっきから何言ってんの?」と伊集院はため息をつく。「メガネとかなんだとか、僕には少しもわからない」

 ちょうど彼等の真横、芝生のスペースの木が植わっている所に一人の医師が悠々と座して食事をとっていた。そのだらしない様子をしばらく不快そうに見ていた伊集院が、やがて、つかつかと医師に歩み寄ると、隠そうとしても隠し切れない苛立ちと嫌悪の表情で、注意しはじめる。
「朝田先生、いくらなんでも食べすぎですよ!そのケーキ、さっきの患者さんのご家族に頂いた『付け届け』ですよね?いくらあまったからって、それで三個めじゃないですか」「お、なんだ伊集院、オレの身体が心配か~?カワイイとこあんじゃねえの」
 見よ、朝田は怒りも煙たがりもせずニヤニヤと伊集院を抱き込んでかいぐりかいぐりして、嫌がる伊集院に手づから残りのケーキを食べさせてやるではないか。

 花井は慄然とした。今にして始めてメガネ道の深淵を覗き得た心地であった。

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コメント

いい加減ひっこめといわれそうですが、毎回色めきたちながらも興味深く拝読しています。

……先生方、原作ヴァージョンが最高です! そっかテキストに起すにはドラマの設定は平板なんですね。
と考えて、守村さんのプチ小姑(同語反復)っぷりに遡及してしみじみ感じ入ってしまいました(笑


>マリィさん
いえいえ、コメントありがとうございます!!!

このあたり、最初は医龍ドラマ&名人伝にそって書いていた(伊集院は登場場面では徹平モードですな)のですが、どうもキャラが動かなくてダメでした(笑。伊集院も朝田も漫画の方がキャラがたちまくってて、二次創作しやすいですね。

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