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2007年06月01日

秋葉東子『秘書の恋』

 所作の美しいイケメンシェフと、美坊主の見習いシェフがいるトラットリアを見つけてしまいました。ヤバイ。通う。

 ごついこわもてだけど実は親切な第二秘書×人当たりはいいけど結構黒い第一秘書。
 あと近所のカフェのバイト×童顔常務。

 なんか読んだことあるなあと思ったら、こないだルチル買った時に読んだんでした。
 あんまり恋愛面が面白くない。秘書カップルはなんで恋愛になってんのかよくわからない。特に受けが攻めをちゃんと好きなのか、なんで好きなのか、はよくわからない。常務カップルも描写不足。ライトタッチな展開も特に面白みが無い。絵もいまひとつ…。

2007年06月02日

石田敦子『魔法少年マジョーリアン』1

 三回裏、五点先制ッ!

 小学生男子二人組がひょんなことから魔法少女マジョーリアンとして悪と戦うことに。

 期待半分、一応読んどくか的な気分半分で買ったのだが、予想以上に教育的…であったような気もする。
 ガサツ少年マサルは、入学式で一目ぼれした美少女がなよなよ美少年イオリだったとわかってイジメに走り、周囲の男子はそれに流されてイオリをイジめ、女子は男子はガキだと呆れつつ、黙って耐えるイオリ。マサルも学校ではガキ大将しつつも家に帰れば女のやなとこ丸出しの三人の姉がいたり、一方のイオリも母子家庭で家事だのやっていて。などなどいろんなモチーフが盛りだくさん。
 イオリはトランスジェンダーの、マジョーリアン化はトランスセクシャルの喩であったり、そういうなんだかあざとい教育的な画法が見えつつ、お色気もたっぷり。

 絵がいまいち。特にアクションシーンがあまり巧くないというか書けてなくて、勿体無い。

2007年06月03日

沙野風結子『蜘蛛の褥』

 高校時代の後輩先輩、蜘蛛をせおったヤクザ×検事。
 検事は真実を見極めるため、自分で捜査に手を出したりして周囲に煙たがられているのだけれど、今の同僚はこころよく協力してくれるため、既婚者なのだけれどつい心惹かれてしまう。そんな折ヤクザの組絡みの事件にかかわって、後輩に再会してそういう関係になりつつ。

 作者は後書きとかフライヤーのコメントとかで、「意味のある3P」という言葉を書いておられ、すごくそれにこだわってたんだろーなーという気はする。のだが、どうにも同僚がダメすぎで…。退場する時もほとんどフェイドアウトって感じで、そんなキャラだから、3Pについてもヤクザの側から見れば意味はあるんだろうけれど、検事の側からみるとどうにもこうにもな意味しかないというか。

 なんだけど、じゃあヤクザ視点で話が作られてるのか、あるいは物語の構成においてヤクザサイド視点がキモになっているのか、というとそうでもない。
 どうもヤクザの検事への執着がどうも記号的にうつるというか、こんなふうに一人に執着すんのははじめて、ってのはよく使われる言葉だが、よく使われる言葉なのだからもう一工夫ほしい。
 あとモンモンにかんするエピソードとか、画としては強烈だが、描写のせいだろうかなんだか物足りない。このエピソードとか、先の3Pも、展開としては強烈なわりにうまく活きてなかった気がする、というか。展開が悪いというよりも、エクリチュールに力技もしくは巧みさが足らない印象だった。うーん。うまくいえないけど。
 そんなこんなで、ちょっと全体に物足りなさが残った。

剛しいら『紅茶は媚薬』

 どうもわたしはこの絵師さんはすごくニガテらしい…。
 お話どうこうよりも前に、絵に拒否感を感じてしまった…。

 紅茶会社の英国貴族×茶園の三男坊。
 好きだった幼馴染が次兄と結婚したのを機に、家から独立して紅茶の販売会社をひらきたい、と思った受け。まだ日本に進出してない英国のミルククラウン社の紅茶をあつかいたいと思って単身英国へ。

 …無茶しやがって(笑

 こういう、何も持たない若者が、若さと(からまわりしがちな)熱意だけで、成功を勝ち得てしまう話って、実はあまり好きではないんです(特にそういうテレビドラマが好きではないのですが小説でも同じことです。
 受けはこんな無茶をする上に無計画で、貴族と話してるときは英語というか丁寧語なのに、一人ごと言うときは日本語で言葉遣いがすごく悪いし、正直言ってわたしのニガテなタイプ。貴族にあたってくだけるつもりでスーツ一着しか持ってこないとか、ツメがあまいのか金がないのか、どっちもなのだろうがどっちだろうと無茶しやがって…という印象。
 まあそういうとこがあってもお話だから別にいいのだけれど、なぜ攻めは受けを受け入れたのだろう、という疑問が残ってしまったので、無茶が無茶のまま通ってしまったという印象だし、そういう展開はどうも好きになれないのだ。
 攻めは紳士なのだが、なんで受けを口説いてたんだろう…とか思ってしまうし、やっぱり描写不足な印象。

 紅茶あてクイズとか、紅茶会社での重役会議とか、展開面でもちょっとイタい感じもあったし、全体的になんだかやっぱりいまひとつな感じだった。

2007年06月04日

榎田尤利『華の闇』

 おお。なんだか非常にオーソドックスな男花魁もの、という印象。
 しかしまあなんだか全体にBLというより吉原ものがたり、という感じだった。

 というわけで勿論(?)財閥の後継者×男花魁。
 過去に知り合い同士だったふたり、吉原で再会して勿論(?)攻めは逆上、勿論(?)無茶を言って身請け、勿論(?)水揚げ後は長々と買い切りお仕舞い、云々。

 攻めは遊びのキライな朴念仁で不器用で、しかしややサドっ気があり、受けは昔も今も辛い運命に負けず穢れない、凛とした青年で、つまりキャラ設定もオーソドックスなんですな。受けの姐さんなんかはかわいそうだが微妙にキャラが薄いというか、でもこれ以上濃く書かれても困ってしまうかも。絵師なんかも微妙にいるような、いらないような。あの絵のエピソードはなんだったのか。なくてもいいかも?という微妙な印象。

 絵は蓮川愛でいい(あの80年代風の絵柄が好きだ…というのは褒めているつもりです)のだが微妙にこの話には合わない気も。あとどうもわたしは受け女装ものがニガテなので、やはり花魁の姿がしっかり描かれちゃうとちょっと萎える。

2007年06月06日

高井戸あけみ『恋愛の神様に言え』

 高井戸あけみはBFCのあとは面白いのか面白いのかビミョウな話が多いけれど、今回は結構面白かった。

 水泳部×陸上部エース。隣のクラスだった攻めにひょんなきっかけでからまれはじめる受け。

 なんか妙に日常のこまごました出来事や地理やなんやの世界のふんいきとかがしっくりきてて、面白かったんだよね。受けの幼馴染のメガネ少年とだらだらな不良くさい彼氏とか、攻めの妹やネコなどの周囲も面白かった。
 あと、高井戸あけみの絵はあんまし巧くない気もするのだけれど、でも好きだ。顔の書き分けもできてないようで結構しっかりそのキャラになってる、気もする。
 脇CPもふくめて続きがあったらいいな。

2007年06月08日

霜月かいり『君を迎えに』

 なんだかやっぱり表紙絵が入らないと淋しいですね。

 高校時代の友人@東北が東京に出た友人にラブで連れ戻しに来ました、とか。
 そのふたりの友人カップルのモテ男ときゃわゆい子、とか。
 あとInferior Dollの脇CPとか。

 あれだ、正直この作家が現代もの描いてもなあ…という感じだ。
 お話が面白いわけでもないし、絵が違和感ありまくりというか、…正直なんだかダサいのだもの。
 Inferior DollのCPの方も、最早バイオロイド関係ない話で特に面白くなかった。
 

伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』

 映画化されるそうですが、映像化は不可能だと言われていた云々、という宣伝文句はなんだか使い古されてるなあ…と思っていました。でも読んでみて、これは無理だろ!と思いました。どう映像化したんだろう???気になるー。

 そんなわけで、トリックはまあ古典的ですが、でも面白かったです。

 物語の内容に関しては、特には…視点人物の男子主人公と女子主人公、そしてその周囲の人々、という感じなのですが、殆どの登場人物が若気の至り、という印象。特に女子の視点人物は独善的な印象で、好きになれなかった。
 視点人物の男子がずっと蚊帳の外、というところとか、あざといなあと思った。あざとい上にあまり意味を見いだせないというか。なんかそういう、技巧優先というか、何かが描きたいために技巧を使うのではなくってとりあえず使っておくって印象っていうか。
 そういう技巧優先に見えちゃうとことか、ブータンやボブディランやコインロッカーなどのモチーフがどうもうまくつながんない印象なこととか、村上春樹的なふんいきとか、底が浅いなあって印象だった。

 しかし、あまりにアホな感想ですが、正直に書きますと、厚さのわりにかなり短時間かつストレスもなく読めたので、話題作をちゃんと読んだぞワーイ!という無駄な満足感は、ありました。だからそれなりに読んで損はしてないかな?という気も。

 アレ?この作者、陽気なギャングが地球を回すの人か。

2007年06月10日

鷹狩みつる『○○伝奇○○○サーガ』

 BLにかんしてはたいがい厚顔無恥なクロエですが、流石にこれは伏字にさせていただきます。

 表題作は王子とお供二名の旅。内容はタイトルと絵のとおりでした。
 後半はイタリアンレストラン?もの。ポニーテールの人が女性だと気付きませんでした。
 あと、ホンリという言葉を初めて知りました。

やまねあやの『ファインダーの虜囚』

 ファインダー、だっ!

 ネイキッドトゥルースが本誌で半端に終わって、続きはコミックスで!と書かれていたので、それではクライマックスまで書下ろしかー大変だなー、にしては結構早く出たなー、と暢気に考えて読んでみたら、…香港篇連載分に書き下ろし20ページ程度、で、続きは次巻、ですか…まだ終わらないですか、そうですか…そうですよね…。

 まあいいんですけど、いやはや、なにしろフェイロン秋仁まんさいでよかったですよ。もう麻見よくね?とか思ってしまったわたしはとことん棘道でしょうか。書き下ろし部分冒頭の、クルーザーの中でチャイナ着てみょうにしどけなく座って秋仁に話しかけているフェイロンがすごくかわいいなあと思いました。

 ところでフェイロンって、チャイナ服着てるともうとんでもない美人で、スーツ着てるとクールビューティなんですが、なんだけれどもスーツの時って微妙にちょっとダサい気もして、そこがいいです(笑。スーツもカコイイけれども、チャイナ服だと破壊力数倍、というか。やまねあやのの絵が巧いのでしょう。

 番外編みたいのはどこかで読んでた。
 あと、後書きの絵がすごかった。

2007年06月12日

医龍/絵板ログその1

 ログを持ってきました。

 あ、やおいですんで、ひとつよろしくです。

2006/12/26 (Tue.) 00:15:02 スペリオール。

 つないだ手をこんどは離さない。
 その手の先には、その人が。

 霧島がどんどん美しくなっていきますね。
 この絵板は基本朝伊で萌ゆるためにはじめたのですが、…原作がどんどん霧朝、はてには霧伊にかたむいてきており、どうしよう、オラワクワクしてきたぞ、って感じでこまってしまいます。
 しかし、スペリオール読者の友人に医龍はどんどんヤオイ化してるね!と言ったら、どこが!?と言われてしまいました。どうみてもヤオイなのに!(すみません

2007/1/3 (Wed.) 21:01:44 霧伊!霧伊!霧伊!

 年末に冬コミで医龍二次創作をいろいろ拝見して、結論としてあたしやっぱり伊集院総受けなんだ…!と思いました。
 でもとりあえずしばらく、霧伊!

2007/1/8 (Mon.) 17:39:53  「外科結びかい?」

「どれどれ、おじさんがコツを教えてあげよう」

2007年06月13日

雪代鞠絵『ビューティフル・サンデー』

 大手化粧品会社社員×婚約者の弟。
 上昇志向の強い攻めは、専務の犬として大活躍で専務のわがまま娘と婚約中。大阪へ赴任することになって、遊んでた男をきろうとして婚約者の弟を利用したら、その弟に脅迫されて大阪赴任中は弟を恋人扱いする約束をしてしまう。毎週末通ってくる弟をつめたくあしらいつつ、次第に違和感と情をおぼえはじめて云々。

 梗概からしてベタだーと思いつつ、ほんとにベタで、結構面白かった。予想通り、弟はそこそこに宜しいかわいそう受け(笑)だった。
 攻めは東大出て恩賜時計まで貰って化粧品会社営業…?と首をかしげたが、その理由は作中で説明されたのでよいかと。ただ、最初の方は結構傲慢自己中攻めだったのに、次第にふつーに受けかわいがり攻め(?)になってしまって、変化の振幅の大きさのわりには、ちょっと契機不足な気もした。
 ほぼ全編、週末の弟とのパートと会社での新製品の戦略会議が交互にくる形になっていて、ちょっと面倒くさかった。最初のあたりで時間の経過がよくわからなくて、会議パートではあんまり時間がたってないみたいなのに、弟はもう何回も大阪に来ているように読めて???となったり。あと会社のパートは冗長すぎたし、キャラも不必要に多い気がした。童顔の上司とか意味ありげすぎ。
 末尾がちょっとポエムチックというか(笑、ちょっとあっけないというか、いまいち物足りなかった。

 まあそんなことはどうでもよくて、このタイトルは…。
 さわやかなにちよう…?

2007年06月14日

ミハ。

「か、勝ち、たいっ!」


 わかったー!今日はおとうさんが見に来てるから、だっ!(たぶん…。

 「マウンドをゆずりたくない」から「勝ちたい」に変化してきたのはよいよね。だってこの感情ならみんなと共有できるもん。

2007年06月15日

『知りたいバトン』

 なまけもののひとりごとたつみさんから『知りたいバトン』をいただきました。ありがとう!ていうか、以前余所でいただいたバトン、答えられなくてすみません…。お詫びになりませんが、こちらは早速答えさせていただきます。


▼お名前を教えてください(フリガナもつけて)
木島クロエ(キジマクロエ)です。

▼名前の由来を教えてください。
苗字は覆面の仕分け屋さんから、名は真っ白と黒のゲルニカ(中村一義)=黒絵、クロエ、です。

▼今の名前は何代目ですか?
以前のHNはマイナーチェンジしつつずっと使ってたので、これが二代目かと。意外に少ないか。

▼サイト名(ブログが主の人はブログで)を教えてください(フリガナもつけて)
「マヨイガ(マヨイガ)」です。ブログタイトルは「クロエニッキ2007 語り得ぬものについても、沈黙してはならない(クロエニッキニマルマルナナ かたりえぬものについてもちんもくしてはならない)」です。
…ちょっと嘘をつきました。自分ではニセンナナと読んでいます。どっちでもいいけど。

▼サイト名(ブログ名)の由来は?
サイト名は「遠野にては山中の不思議なる家をマヨヒガと云ふ(柳田國男『遠野物語』)」より。ブログタイトルは毎年適当に変えていて、由来はいろいろです。今年のサブタイはウィトゲンシュタインから引用してます。

▼サイト(ブログ)を開設してどれぐらい経ちますか?
サイト自体は1999年10月~、ブログは2004年8月~。

▼そのサイト(ブログ)は何代目ですか?
散々無料サーバを流浪してますが、初代のままです。

▼初めてできたオン友は?
ご、ごめんなさい、覚えていません…。

▼現在結構メールしているオン友は何人居ますか?
マヨイガでは居ないです。元々オフからの友人なら居ますが…。

▼メル友じゃなくても交流のある人は?
やっぱりマヨイガではあまり居ないですね。

▼自分が一番仲いいと思っているオン友は?
コメントをのこしてくださる方は、たとえいちげんさまでも大事なお友達、と勝手に思っています(笑。

▼相互リンクはしてもらってますか?
何人かの方にしていただいています。これまたオフの友人ばかりですが。

▼相互とブクマ、どっちが多いですか?
ブクマ…だったかな?

▼ちなみにこのバトンを回してくれた人とは相互してますか?
していただいてます。

▼このバトンを、成り立ちが知りたい1~10人の方に回してください。
(アンカーは無しです。かならず誰かに回してください)
たまちゃんことおやぎさんちの成り立ちがよくわからないので知りたいです。よかったら宜しくお願いします。

2007年06月16日

篠伊達玲『ゆびさきの誘惑』

 食品グループ社長次男坊で秘書×グループ経営の創作和食ダイニングの料理長。
 元料理長とイタリヤ人CPの前作があるらしい。
 お話は…筋っていうか…ええと、食事をねだりにくる攻めと、少年ぽい天然受け、というか…それだけ?

 受け一人称で、天然子ののんびりエクリチュールがタクミくんみたいでいいかも…と思いつつ読み始めたのだが、「雨なので攻めが車で送ると言ってくれたけれど、受けは自転車通勤なのでそれはムリ」というエピソードに二ページがついやされた(受けが自転車が駅前にとめてあるだの、明日の朝の通勤がどうのだのさんざんグダグダ言って断る)辺りでちょっとイライラしはじめ、そんなまどろこしいエクリチュールでほとんど内容がなかった印象。

 あと、年上同僚シェフとその腕にほれこんでるヤクザのエピソードは、きっとこの後続編で書かれるんだろうなーと思われるが、しかし今作の半分近くのページとかなりの量のエピソードが既にその二人についやされている気がして…バランス悪いというか、ヘタというか。だからただでさえ魅力ない主役CPとそのエピソードが更にうすくなってるし。
 つけくわえるなら、受けがこの若さで料理長ってのも…。

 なんかもう、いろいろともきー!って感じの一冊だった。

夜光花『凍る月 漆黒の情人』

 二十歳までしか生きられないと言われ、傷がすぐに治ってしまうという不思議な能力をもっている受けは、ほとんど外に出ることも許されずに育った。事情を知らない受けは、自分の特異体質をいぶかしみながらも、二十歳になったら自由にしていい、という祖父の言葉を信じ、祖父と唯一の友人である幼馴染をたよりに二十歳になるのを楽しみに生きていた。二十歳の誕生日が近づいたある日、受けと幼馴染は恐ろしい獣におそわれかかる。更に後日、祖父の元に妙な男が訪ねてきた。

 こんな梗概では、正直食指がうごかないというか、凡庸なラノベサスペンスもしくはファンタジー、という印象で、最初は読む気がしなかったのだが、どうしても帰りに読む本がほしかったので買ってみた。
 …おもしろかった。というか、かなり気に入った。

 最初の数十ページはやはり冗長で、文章もあんまりうまくないのでやはりしんどかった。しかし秘密が明かされはじめて、更にBLとしての構成もととのってくると、もうすんごくツボだった。

 えーと、ちょっとネタバレになりますので反転しますが、「餌」たる人間を食べないとひとがたを保てない獣人攻め×獣人と契約しないと死んでしまう「餌」たる受け。

 ええと、以下もちょっとネタバレに近いですが。
 BLには限らないのですが、わたしは広義でのカニバリズム、というか、物語の中での機能としてのカニバリズムが大好きなのです。これは勿論現実のカニバリズムとは全く別次元での話で、というのは、物語の中であってもカニバリズムが表象されるというのは余程のことなので、なんらかの理由付けがなされたり、ほかの機能が付加されたりすることが多く、そしてそのことによって複雑で面白い物語が生成される可能性が生まれると思うのです。人間を餌としか見られない天使の出てくる寿たらこ『コンクリート・ガーデン』とかね。

 で、今回気付いたのだけれど、そうした機能としてのカニバリズムは、結局人間の関係性にプラスアルファの物語をもたらすこととかが可能だという意味において、BLととっても相性がいいんではないでしょうか。吸血とかの場合は、特に人間関係が面白くなるし、BLにも向いてると思う。
 ちょうどこれまたわたしの大好きな時間ものSFが、非BL物語においてもドラマチックだけれど、だからこそBLにおいてもその力をいかんなく発揮するように。

 まあうんちくはいいんですが、とにかくこの攻めと受けの運命による関係性はすごくツボだったわけです。
 受けは純粋培養系だけれど、結構ガッツがあるかも。祖父の面打ちをならっていることもあってか、なんとなく崎谷はるひ「白鷺シリーズ」を思い出すのだが、藍のようなかわいらしくピュアピュアな雰囲気ではない。恋とかしてみたい、とか言っちゃう無神経さも面白い。
 攻めも傲慢・不器用・親切という傲慢攻めのポイント揃い踏みで(笑、いいですね。受けがめそめそ泣いているのをもったいない、とか言って涙をぜんぶなめとっちゃうとことか可笑しくてよい。
 攻めが気持ちを自覚しちゃって、受けはまだわかってないのもいいです。後編では、攻めが断腸の思いで受けが幼馴染と契約することを許してしまい、受けはとまどいつつ攻めの元を離れて、結局戻ってくる、とかいうベタベタ展開を期待(笑。

 高橋悠の絵はあまり合わない気もした。じゃあ誰がいいのかと言われても思いつかないのだけれど。

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 しかしBL読んでると、ほとんどの作品で必ず一箇所以上日本語がおかしいところ(誤字脱字ならまだいいんだけど、いやよくないけれどね、言葉の誤用とか語法の間違いの方が気になってしまう)に気づいてしまうのですが、この作家は、というか特にこの作品が、なのかな、すごく間違いだらけで文章としてはかなりひどかった。内容は面白かったので、楽しく読めちゃったけど。BLの原動力は文章力よりも萌えなのか…なんだかそれは、せつないような…いや、萌えもエクリチュールの一部とみなして、文章力よりもエクリチュールが優位である、と考えておけば、いい、かな…(笑

2007年06月18日

英田サキ『いつわりの薔薇に抱かれ』

 あ、カニバリズムには勿論吸血も入ります、ということなどを追記しました。

 おぉー来たー。

 表向きは若き実業家×ホテルのバトラー、実は香港マフィア×警視庁のおとり捜査員。

 新しくマフィアのボスになった攻めの来日情報をえて、中国系工作員との接触をうたがった警視庁某課では、中国語が話せる受けを滞在予定のホテルにもぐりこませる。そのホテルでは丁度上階にはバトラーサービスを展開していたため、受けはバトラーの訓練を受けて攻め部屋付きにしてもらう。最初は攻めに拒絶されかけたものの、次第にバトラーとして受け入れられたところで、滞在中の恋人となってほしいとか言われだして・しかし断ったら任務失敗しちゃうし・だんだん本気になっちゃうし・攻めの元カレの影とかもあり・攻めはまだ元カレ好きそうだし、云々。

 受けは男性らしさがありつつ、攻めに引かれていってしまう乙女心がそんなに女々しい感じがしなくってよかった。絵のおかげもあるかも。しかし、バトラー、捜査員、契約恋人といろんな要素を持ちつつ、その切り替えが今ひとつうまくいってない気がした。契約恋人として、いきなり服脱いでまな板の鯉(笑)になって攻めに爆笑されるとことかはそれがうまくいっていたんだけれど、特に前半のバトラーと警官との振幅はもっときっちり書き込んで欲しかった。発話と心内の振幅がもっとあってもよかったし、あと例えば捜査報告のメールを文章化するとかして、バトラーの発話と捜査員としての言葉の差異をもっと書いてくれたらよかった。その点、最後の告白シーンとかは急に言葉が変わった雰囲気が出ててよかった。
 攻めはきちんとした傲慢攻め(笑)というか、傲慢で、結構紳士で、実は孤独で、と折り目正しい傲慢攻め(笑)だった。長髪なのも個人的には良い。

 物語の筋も、恋愛面は勿論、マフィア関係のエピや元カレのエピ、攻め母のエピなど、どれもうまく機能してて全体としてもしっくりきていて面白かった。特に攻め母の「何日君再来」とかは、受けの語りにおいてもうまく機能しててうまいなー、…と思っていたら、あとがき読んだらこのシンクロは偶然の産物だったらしい…(笑

 しかし、これは…続編、もしくは番外編…ないんですか???(涙。是非書いて欲しいのですが。

 あと、そういえば攻めサイドの過去は丹念に語られたけれど、受けの方は全然だし、その辺りからめて…続編読んでみたいのですが…。

 石塚理の絵は、表紙はいまいちに思ったけれど中の挿絵はよかった。二人ともゴツくてよい。

2007年06月21日

仔犬養ジン『裏切りの夜』

 先月読んだ。

 …こ…こいぬ、こいぬやしない…?
 作者はミキティか…?とかちょっと思いましたが。
 こいぬかい。だそうです。何にせよミキティ。

 内容はごくふつうにニューヨークを舞台としたクライムもの。ただ主人公たちがゲイなだけ(笑。

 汚職事件に関して攻めを疑って調査してる受け、攻めもかかわった過去のある事件がふかくかかわってきて、その件でも調査したりなんだり…やる気ない紹介で恐縮です…読んだのが先月な上に、内容がややこしいんだもの。
 なにしろことの起った順番とか人間関係の描写がへたなのか、途中何度か事件の概要がよくわからなくなった。でもクライム小説にはありがちなこと…か?(笑
 ただ、冒頭の受けとの初対面シーンでいきなり人違いをするところの描写とかもあんまりうまくなかったし、全体に文章はもうちょっとかなあという印象も。

 とはいえ全体的にはそこそこ面白かった。クライムものとして(笑。
 一方BLとしては、冒頭の攻めが仲間と賭けをして受けをくどき、それがバレる展開はよかった。

剛しいら『愛を食べても』

 特別交通機動隊の朴念仁×淫乱ゲイさま。
 浮気症の受けに愛想がつきそうな攻め。そんなある日、仕事中にパトカーに乗っていたら未確認飛行物体がやってきて、受けが宇宙人に寄生されてしまいました。

 …アレ?『ブレイクアウト』…?まあ、よくある人形遣い系の話ですね。BLでもよくあるのかは知らないけど(笑

 そんなわけで、宇宙人に寄生されて、おかしくなっちゃった受けの面倒をみつつ、次第に学んで人間らしくなってきた受けが超しおらしいので罪悪感感じつつ惚れ直していってしまう攻め、という筋自体はわるくない。のだが、受けに「ミュッ」だの「ピギッ」だの言われると、笑うというか脱力してしまうじゃないですか。奇声を発しても奇妙な行動とってもいいけどさ、その奇妙さがあまりにステロタイプでなあ。安っぽい。しかもエッチシーンでもこのままなんで、どうしたものか。どうもしないけど。
 あと素の受けの口調がすれっからしっぽくしたいからなのか、なんだか古くさい言い回しが多くてちょっとキツい。というか全体に文章が弛緩しているというか、うまくなかった。

 まあしかし、最後のあたりの宇宙人への始末のつけ方とかは、わりあいよかったような気がした。でも全体としては…、なんだかなあ、という感じだった。

2007年06月23日

木原音瀬『こどもの瞳』

 これも一月以上前に読んだ(笑。なんかもう書くエントリタイミング逸しまくりだけれど、気にしないで書いてしまおう。

 てなわけで。
 設定も展開もすごく好みなのだけれど、最後がよくないというか、いや最後の展開はいいんだけど、まあ後述。

 幼少時にひきさかれた兄弟。
 成長して兄は会社社長に、弟は結婚後妻が亡くなり、残された息子とカツカツながらも楽しい二人暮し。妻の病気の折にどうしても治療費が足りず、兄に直訴にいってすげなく追い返されたことから、弟は兄を嫌ってる。しかしそんなある日、アパートに突然やってきた兄は幼児返りしてて、仕方なく家においてやることに、云々。

 設定も展開も、好みだった。兄の容赦ない子どもらしさとか、そんな状況でデキちゃったりするエグめの展開も、この作者っぽい文体がうまく活きててよかった。
 男同士で、実の兄弟で、なにより兄は幼児返ってる状態、と何重にも禁忌で、それは物語としては面白かった。

 しかし結末が不満だったのは、兄の変化は予想通りではあるものの、変化後の兄とのエピソードがほとんど書かれてないことで。もっと端的に言えば、兄とのラブラブをもっと読ませてよ、という感じ。
 せっかく続編まであるのに、視点というかCPがかわってるし。もっとも、祖母宅でのやりとりや、弟息子視点での描写とかはちらりほらりとあって、充分に想像はさせてくれるんだけど、もっとダイレクトに書いて欲しかった。
 しかしあれです、なんだかこういう感想(もっとラブラブいちゃいちゃが読みたい、とか)って、言いづらい気がするのですよ。別にエロが読みたいというわけではないのだが、そう思われちゃいそうだし。ラブラブいちゃいちゃだって、物語に必要な要素だと思うんだけど(しかし、どうもくだらん規範批評にしかならないね…うーん、ラブラブいちゃいちゃって要素を、もっとうまく擁護できないものだろうか。

 あ、兄×弟、ですよ。

扇ゆずは『ダーリング』


 うーん…この作家、絵がヘタに…なったんではないだろうか。
 この表紙からして体格差おかしいし、理緒のデッサンもあぶない。本編もデッサンのおかしい絵が多かった。具体的には、腕が短かったり、肩や手足が妙に細かったりとか、指が太すぎたり、手が大きすぎたり、理緒とトモちゃんの顔の大きさが違ったりとか、そういうの。でも、崩れてるのは理緒や女の子の体のデッサンが中心で、トモちゃんのような、がっしりした体型の男子は、描きなれてるからかそんなに崩れないみたいだけれど…。理緒のような性別受けを描き出して、仕事も増えた(多分)せいなのかなあ、という印象。

 内容は、東京郊外の公立高校に転入してきた都会の超イケメンが、超天然ニブちんメガネ美少年に恋をしてしまいました、というオーソドックスなBLコメディ。
 視点は理緒とトモちゃんどちらへも動くので、トモちゃんに惹かれつつトモちゃんが自分なんかを相手にするわけない、と思い込んでる理緒サイドと、理緒に振り回されて悩みまくりのトモちゃんの、互いの勘違いすれ違いっぷりが非常にベタながらはがゆく面白い。

 理緒は守村悠季みたいな印象で、やはりこの作家のフジミとか見てみたいなと思った。しかし時折あんまり幼くなってしまうことと、わたしは元々この作者の絵がとっても好きなので…デッサンの崩れっぷりが気になってしまって仕方なかった…(涙

2007年06月24日

剛しいら『愛を売る男』

 男らしいイケメン系元カリスマホスト×中性的な現カリスマホスト。
 攻めホストはある目的のために、銀座に新しいホストクラブをオープン、受けを新宿の店からひきぬいた。もともと攻めにほれてた受けは攻めの申し出を受ける条件として攻めの体を要求。そんな中、攻めの捜していた女がホストクラブに現れて云々。

 サスペンスの展開がメインだったと思うし、その意味では面白かった。
 BLというか、恋愛物語も、ノンケでかつ恋愛をしない攻めと、母などとの過去のトラウマをかかえつつ攻めに恋する受けの気持ちが、すれちがってるというか違う場所にある感じが面白かった。受けが攻めに過去のこと(手術の)を言わなかったっぽいところとか、面白い。

 しかし最後のあたりの二人の向き合い方が、なんだか違和感が残った。受けの視点での描写がなかったからか、あの病院での甘え方なんかは内面が見えなくてちょっと怖い。攻めも、受けを受け入れた過程はいまいちわかるようなわからないような。異様な事件で判断がちょっとおかしくなっているんでは、とか思ってしまう。
 BLにかぎらず、こういう事件を中心とした物語は、恋愛の成就がつり橋効果に見えてしまいがちな気もするのだ。

 しかし、この表紙は山田ユギかと思っていた…。

榎田尤利『ひとりごとの恋』

 鳥人ヒロミの絵と、このタイトルにすごくワクワクしてしまったのでした。
 のですがしかし。

 ずっと好きだったノンケが結婚・離婚、受けのマンションにころがりこんできたら、なぜか弟もついてきました。当然のように弟=攻めに襲われたりなんだり。

 勿論、受けのノンケ兄にたいするせつなーい内面とか、そんな受けを強引にしかしやさしくまるめこんでくれる攻めとか、そういうのを期待してたし、まあそういうのもあったし、面白くなかったわけではない。

 何が不満なのか、と考えても、何が不満なのか…しかしこの不満な感じは『Stepbrother』の読後感と似てる気がする。両者の共通点は、物語の後半から末尾で、なぜか第三者とかが急にでばってきてしかもものすごい存在感だったり饒舌に語ってしまったりするので、アレ?となってしまうとこ、な気がする。

 この『ひとりごとの恋』でも、受けの恋してたノンケ兄がでばってくるのは仕方ないにしても、受け家族のエピソードも必要なものだとしても、それらの比重があまりに大きいし、末尾を受けの家族にしめさせちゃうのは、なんだか違うでしょ、と思ってしまった。受け家族は恋愛を基本として考えた時にはかなり関係ない存在だし、もう第三者(ノンケ兄がこれにあたる)ってか第四者くらいでしょ、と思うんですよ。ノンケ兄の妻の描写とかも、妙に過多だったような気もする。

 あと、一人称もダメだったのかも。タイトルからしても、一人称語りなのは仕方ないと思うんだけど、『交渉人は黙らない』もそうだったけど、饒舌にすぎる語りだなあと思った。

 うーん。しかし途中までは面白かったとこも結構あった気がするのだが…これも結構前に読んだので、わすれてしまった。すみません。

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 そんなこともあり、この作家の一人称語りとか群像とかってニガテな気がしてきました。群像で言えば、『少年はスワンを目指す』もあんまり面白くなかったのです。絵が寿たらこなのに…(涙。

2007年06月26日

いとう由貴「たとえ~シリーズ」

 たとえ世界がでたらめで、種もしかけもあって、生まれたままの色じゃ、もうだめだって気付いても~♪

 イギリス貴族の一家、二人目の妻が日本人で超ビッチでした。その妻が亡くなって息子を日本から呼び寄せひきとりましたが、家族も使用人も皆ビッチ妻の記憶もなまなましく日系子が憎らしくて仕方ありません。日系子はとりあえず次男たちの通う全寮制学校にほうりこまれましたが、そこでもいじめられまくりです。そんな状況でも三人目の妻の連れ子兄は寮長なので多少気にかけてやりましたが、他の兄の姦計で日系子が男とホテルにいるとこを目撃してしまい、超激怒。日系子はけなげにがんばってましたが、連れ子兄につめたくされて流石にへこたれてきます。
 …改めて人間関係がややこしいなあと思ったけれど、それ(家族関係の複雑さ)がこのシリーズのポイントだろうなあ。
 予想通りのかわいそう受け弟に、よくできたちょっとゆうずうのきかない感じの攻め兄でした。
 しかし、クライマックスで、いきなり饒舌な説明がはじまってしまうお話はあまり好きではありません。しかも、これまで黙って耐えてきたキャラがそれをやっちゃうと、なんだかなあ、という感じ。

4813011055たとえ禁じられた恋であっても
いとう 由貴 門地 かおり
大洋図書 2007-02-26

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 こんどは兄たちの幼馴染のかわいこちゃんに兄との恋愛がバレて壮絶にいじめられます。
 物語的には特筆すべきこともないかなあ。特に悪くも無いけど、エピソードがあんまり記憶に残らない感じ。ただ、また何ぞの姦計にハマって兄が誤解をする展開になったらつまらんなあ、と思っていたら、兄は弟を信じてたのでそれはよかった。

4813011489たとえ背徳の罠に堕ちても
いとう 由貴
大洋図書 2007-04

by G-Tools
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 こんどはもう一人の兄のCP。
 奨学生寮の寮長に弟たちの恋愛がバレて彼等を守るためにクールビューティ兄が寮長さまの言うなりです。
 ちょっと展開があっちこっち行ってる感じでまとまりがなかった印象。それにつけても、いきなり長野オリンピックとか書かれててビビった。現代ものだったのか、このシリーズ。
 イラスト、寮長がカコイイ…!

2007年06月28日

夜光花『水曜日の悪夢』

 牛泥棒は…?

 タイトルに若干の不安を覚えつつ、バイオリニストのカコイイ表紙に惹かれて&数作読んでみてこの作家に興味があったので購入。

 …わはははは。
 いや、笑うようなとこのある話じゃないんですけどね。

 事故によって奏者の道をたたれたバイオリニストが音楽関係の高校で講師をしてたら逸材発見。父親からの暴力に困った高校生を自宅に住まわせることに…。
 なんて梗概を読んでたので、四十ページでまず仰天。聞いてた話と違うじゃん、と(笑
 いや、虚をつかれてある意味面白かったけれどね。
 途中までは我慢して読んでいたのですが、半分くらい読んだ辺りでどうにも堪えられず、最後の辺りを先にめくってしまいました。

 以下ネタバレに近いですので、ご注意を。

 そりゃあね、確かにわたしは時間ものSF+BLが好きだと言いましたけど、でもね。

 時間ものSFBLが好きなのは、ふたりの関係性がよりドラマチックになるからであって、恋愛をきっちり書いてくれなきゃ、SFとして読むしかなくなってしまうわけじゃないですか。そしてこの作家は、BL抜いたらかなり力量にとぼしい、文章すらまずいとこだらけの作家(だとわたしは思う)なわけで。

 まあなんにしろ、バイオリニストがずーっと「高校生の才能のために、情緒面をのばしてやりたくって、自分のことを好きだと言うのにつきあって恋人を演じる」という鬼畜ぶり(笑)で、これはとってもBLとしてはしんどいですよ。で、いきなり最後にあんな展開になっても唐突すぎるというか、これまた異様な事件の中で惚れた気になっちゃってるだけのつり橋効果に見えてしまったし。

 そんなわけで、今作では文章のまずさも一層気になってしまった。「真吾はバイオリンの練習をしていたものの、邪念に囚われているような音を出している」というところとか、前半後半で時制がちがうこともさりながら、…先生への恋情で気が散ってる、ということを書きたかったのだろうけれど、「邪念」て、ちょっとどうよ(笑。とか。

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 しかし逆に言えば、BL部分をうまく書いてくれたらかなりわたしの萌えツボにハマってくれる作家なんじゃないか、という気もする…『凍る月 漆黒の情人』がそうだったようにね。

2007年06月29日

榊花月『カミングホーム』

 牛泥棒は今読んでるお。

 五人兄弟のまん中、母はなくなり、父は海外赴任。社会人の長兄、大学生の次兄、中学生と小学生の弟にかこまれて、家事を一手にひきうける高校生。
 …って時点で、おかしいと思う…なんで一人でんな苦労するのさ。
 賢かったり何かに秀でていたりする兄弟たちの中で、平凡な三男が居場所をつくりたくて家事を引き受けてた、ということらしいのだけれど、それでもやっぱりそんな状況を平然と受け入れてた兄弟たちはおかしすぎ。居場所をつくりたくて自分からそんな状況を招いてた、とか言われて自分でも褒められたいために一人で苦労をまねいてた、とか反省しちゃう三男もおかしい、というか自罰的すぎ…。

 長兄の同僚のなつこいお兄さんが攻めなのだが、三男に大変だね、とゆって気を使ってくれた、だけなんだよね。それで惚れてしまうのは、なんだか妙にリアルではあるけれど、ちょっとやな感じ。そんなごくふつうのやさしいお兄さん、に惚れてしまうのは、周りの家族がそのふつうの優しさをくれなかったから、なわけで。物語として三男の恋愛のために、周りの兄弟とかが機能として徴用されてるような印象で、あまり気分がよろしくない感じ。
 (しかしそういえば、『恋人になる百の方法』の攻めも、ふつーのお兄さんだった。

 あと、こんなに兄弟が多いのも、なんだかなという感じ。兄弟たちはそれぞれにキャラたってはいるけれど、だからこそそれぞれにもったいない印象でもあった。

2007年06月30日

木原音瀬『牛泥棒』

 明治。造り酒屋の長男、大学で植物学の助手に×攻めの乳母の子兼幼馴染で口のきけないお世話係。
 三話連作というか、二話プラスおまけという感じ。
 梗概などからはわからなかったのだが、プロローグで突然「あやかし物」であるということ(受けがひとならざるものを見てしまう体質で、身内に小鬼を飼っている)が判明し、かなり仰天且つガッカリ。だって多分BLとしてはあんまり期待できなさそう(つまり端的に言えばあまり萌えられなさそう)だと思ったし、そうだとしたら、残りの部分(非BLの部分)だけで楽しめるようなお話を書いてくれる作家ではなかろうなあ、という印象を持っていたから、ちょっとガッカリしたのです。
 まあでも、それでちょっと一歩引いて読んだのがかえってよかったのか、かなり楽しめました。

 攻めはお坊ちゃんでかんしゃく持ちで、最初の印象は『坊っちゃん』か?という感じだった(笑。ので、あんまし萌えなかった。本邦初の植物図鑑の話あたりから、おや?牧野博士か、と気付き、牧野富太郎について全く知らないことに気付いて調べてみたら、結構そのまんまだった(笑。
 受けはたおやかに攻めに付き従う良妻賢母、という感じで、本文中でもまんま妻として下女として世話したい、とか書かれてしまう感じ(ところでジェンダー的に問題のある言葉の使い方が多かったのだが、時代設定からして仕方がない…のかな。
 そんなわけでとにかく二人とも、書かれたキャラだけだとちょっときびしいんだけど、絵の効果が絶大で、少女漫画チックなかわいらしい挿画がかなり有効に役立っていた。かわいらしい挿絵と、次第に発展していく関係性のおかげで、かなり萌えた。
 特に、一つめのお話で受けがあれつけてなかった話とか、二つめのお話で、攻めに浮気されたと思って受けが靴をみがきながら泣いてるとことか、そのつづきで女に襲われかけた受けのとこに攻めが戻ってくるとことか、個人的にはとてもよかった。

 あやかし物としては、予想通り特に良くも悪くもない感じだったけれど、BL設定をうまく活かせてたかな、とも思う。
 ひとつめのお話、いつ牛を盗むんだろう???と思っていたら、そう来たか、という感じだった(笑。あと、お話自体どうやって決着をつけるんだろう、ご都合主義っぽくなっちゃいそうだ…と思ってたらああいう感じで、ああこの設定をこう使えば、ご都合主義もアリだなあ、と思ったりした。
 あと、周りのキャラたちもうざったくならない程度にしっかりキャラがたって&書き込まれていてよかった。

 そんなわけで、予想よりもかなり面白かった。続編があったらいいなあ。

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