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2008年01月02日

新年。

 2008年になりましたね。
 今年のサブタイは、「星の数ほど男はあれど月とみるのはぬしばかり」という都都逸からです。都都逸っていいですよね。アホだったりせつなかったり、うまくハマるととってもいい。「萌えて読むなら千里も一里」とかも考えましたが、萌えという言葉をつかうのはあからさまにすぎるかしらと思って遠慮しました(笑
 都都逸以外でもいろいろ、たとえば『S/Z』(エスパーズィー)をもじって「攻/受」(セメパーウケ)とか、アホなみもふたもないタイトルを考えてもみましたが、あまりに下らないというかもうブログなのかなんだかわからない。

 そんなわけで、今年もマヨイガをどうぞ宜しくお願い致します!

2008年01月03日

ごとうしのぶ『恋のカケラ』

 仕事始め…(涙
 なんでこんなにいっぱい仕事があるんだろうか。

 発売から随分たってしまいました。忙しくて後回しにしてたというのもあったんですが、夏休み最終巻なので、ちょっと読むのに構えてしまっていたのかもしれません。
 正直なんか全体にごたごたしてた印象だけど、面白ポイントやおいしいとこはそこここにあった感じ。

 免許のことを考えながら、「ギイに関しては不明だが」って…!(笑。相変わらずのんびりしてるなータクミは(笑
 ホノカさんはまた、「海千山千」とか余計なことを…!託生的にもだけど、読者的にも余計!(笑。いやしかし、高校以降の豹変については、断言してくれてよかったというか…(笑
 宮古野さんはなんか結局よくわからない人になってしまった気がするけど、よかった。何がって、宮古野さん雅彦さんはなんかイヤだなあという気がしていたので…ヨリちゃんよかったね、と…(笑。しかし、四冊分の描写を思い返しても、ヨリちゃん雅彦さんのフラグは多くはなかったし、読者が感情移入するには全然描写がたりないCPという気もしたのだけれど、しかしなぜかまとまってくれてうれしかった…なぜだろう。ヨリちゃんの涙がカワイくてとてもよい。ギイはヨリちゃんを見習って、一度くらいほんとに泣いてみたらいいんだと思う(笑
 宝物の結末は意外とよかった。でもラングの秘密の庭はどうなったんだー。

 後半のギイタクの展開は読んでてしんどいなあ。一見、託生が勝手に落ち込んで自己中ぽいように見えるけど、ギイも気付いてあげなよ、という気もする。
 ギイは佐智はただ一人の幼馴染だって言うけれど、ギイは友達多すぎるほど多い(それこそホノカさんとか)し、託生本人が今回あっさりそうと認めていたように、託生にはギイしかいないのになあ。雅彦さんと違って託生にはギイただ一人しかいないのは、慎ましいわけでも何でもなくて、冷静に考えればすっごくつらい状況じゃないですか。そしてそれって託生一人のせいではないし、ギイのせいでも多分にあると思うので、ギイはもうちょっと責任感じてほしいし、聡いギイなのだからもうちょっと託生の心を思いやってほしい。あたしは託生に甘いですかね。
 というかこの二人、なんだか微妙にうめてないミゾをのこしたままのような気がするんですが、いいのかな。なんかのフラグなのか…だったら不安だけど。でも深い意味はないのかな(笑。てういうか、佐智とギイの関係はなんであんな不安になるような感じで書かれるのかなあ。何か意味があるのか。託生大好きな佐智は好きだけど、そうではない時の佐智はなんかよくわかんない。
 託生にかんするギイの無鉄砲評価は、ここまではっきり書かれてるのは初出かな?一年のときの託生のことが想像できて面白い。

 CP以外のコンビがいろいろ面白かった。
 託生と三洲の会話がたくさんあって超おいしかった。この二人のコンビが好きなんだけど、託生は基本他人に無関心だし、相手は三洲だしで、あんまりからみがないんだよね。同室なのに(笑。「Pure」とかの数少ないやりとりだけで今まで我慢してたので、今回はたくさん喋っててうれしかった。しかし、三洲、医学部志望か…!また驚いたよ。でもいつも予想を裏切ってくれる三洲らしくって、とっても納得。
 ギイと三洲の会話もいいなあ。面白い。この二人の協調が、二学期に託生をめぐるあれこれの中で活きるといいなあ。
 章三はあまり活躍してなかったので残念。真行寺とのからみとか、めったに見られないからもっと書いてほしかった気もする。

 物語とは別個のレベルで気になることもあった。
 佐智は、コンサートと探検を両方もりこんだ物語の構成のせいでなんだろうけど、現れ方がおかしいというか、あと託生の扱いが粗雑な気が…(笑。あと、なんかみんな(特にギイ)宮古野さんちに勝手に人を誘いすぎ。三洲は初対面の雅彦さんにキツすぎ。対外用の柔和な三洲はどこへ行った。と、ちょっと対人関係が気になる人が多かったのは、お話の構成上の問題なのかなと思った。
 あと、なんか昔のエピの引用が多いのが違和感が…いいんだけど、今まであんまりなかったパターンで、なんだか唐突。

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 ところで、ルビー文庫のあつめてマイレージキャンペーン、は、いいのだが、70ポイントで特製本って…、しかも、一冊で1ポイントという鬼畜なマイレージ…、え?もしかして、ルビー文庫70冊かわないといけないの??…アホか!アホなんですか!?
 新潮文庫のYonda?clubはもう三周目くらいなのだが、それは新潮文庫だからであって、ルビー文庫はそんなに買えないぞ。でもタクミくんのエピがのるんなら、あつめちゃうじゃないか…一体何の修行だ…マジ勘弁。

2008年01月04日

ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」9

 あーこのころはへいわだったなー、と…。
 かなりグダグダと連載時に感想書いてたあたりなので、最早改めて書くこともそんなにない。しかしやはりサクラダイチはかわいい。今後の交流が楽しみである。

 おまけ漫画では、田島と三橋の仲良しぶりにワーですよ!ついに公式設定として、田島が三橋を自分のテリトリーにつれまわしてる、とかいうネタが出てしまうとは…!!高校生なのにかわゆすぎる。
 あと、千代ちゃんと水谷はなんか仲いいよね。

おおや和美・ごとうしのぶ『Pure』

 なんかほぼ予想通りのコミカライズだったなあという印象。あれだ、三洲が貧血のシーンとかそのまんまっていう感じだった。というわけで、あまり書くことがない感じ。
 しかし、ゼロバンでの部屋の話が…!ほんとにまあ、なんという色気。まったくこまったものですぷんぷん!(嘘です!

2008年01月05日

高遠琉加『溺れる戀』

 なんというか、ものすごい丁寧な描写だったな、という印象がまずあって、面白かったかと問われると、うーんとうなってしまうというか…。

 帝大の元同級生。
 銀行の三男はのんびりしたお坊っちゃん。あんまり裕福でない柳橋の呉服屋の息子は、いろんな悪いうわさがたえないのと、まわりになじまない態度で、けれど研究はできる孤高の学生で、ついつい目でおってしまうし、なんだか助けてくれたりもするのでどきどきである。ある日借りた傘を返しに行ってそういうことになり、しかし呉服屋はつぶれて彼も行方不明に。
 数年後、ある使命のために母とともに豪華客船に乗ったお坊っちゃんの前に、また彼が現れ、云々。

 率直に言ってよくあるお話によくあるキャラ、過去への遡及語りという構成もふくめて、もう全般によくある系統の物語。ある使命、とかまんま予想通りだし、そのオチのつけ方も予想通り。
 なのだが、すんごい丁寧に描写してくので、そういうのが好きな人には向いてるだろう。いちいちの描写はきれいで、巧いなと思わせられる表現もそこここにある。時代背景の描き方とかもそんなに違和感ないし、『こころ』の引用とかも、ごく自然でいい。
 そんなわけで、手っ取り早く萌えたいときにはおすすめしないが、しかしじっくり読んでも萌えるかどうかは微妙だ。

 萌え、というのはレベルのひくい要素としてとらえられがちな気もするが実はそんなことはないと思うので、というのは、萌えっていうのはキャラ自体の魅力とか、キャラとキャラとの関係性に生まれるものだと思うので、それらがしっかり書けてる=萌えるテクストっていうのは、きちんと評価すべきなのだと思う。
 何がいいたいのかというと、本作は攻めも受けも、キャラとしての魅力はあんまりなくて、攻めは視点がもらえてないせいもあって内面は不可知な部分が多く、受けは視点人物というせいもあるのだがぽやーんとしたお坊っちゃんというだけだし、どうも突出した魅力は感じない。二人の関係性も、ごく薄い関係しか構築せず、けれど何年たっても互いにしばられてしまう、という点がミソになってるけど、それって結局ありがちな関係とも言えてしまう。
 そんな感じで、人物描写の面でも突出した魅力があるわけではないので、美しい描写の数々もなんだかそれだけだなあという印象に終わってしまっている気がするのだ。

 しかしそれでもやはり、描写には魅力があるので、どうも評価しづらいね。
 図書館の窓際で眠り込んでる攻めを見てるとことか、すごくいい感じ。
 なんとも気もちよさそうに、彼は熟睡していた。顔の上でやわらかな光が踊っている。頬を撫でるように。風が彼の耳に何かを囁く。いたずらするみたいにひらいた本の頁をめくっていく。彼はたくさんのものに愛されているように見えた。
 ここが気に入ったのは、こんなかあいらしい描写を攻めにしてしまう、というところがちょっと面白かったので。
 …うーん、しかし。結局そういうとこも、勿体無い、のかもしれない。物語かキャラか、どっちかでも出色なとこがあったら、もっと面白かったと思うんだけどなあ。

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 というわけで、保留中の2007年のBL小説ベスト10ですが、もう一冊感想書いてからにします。
 勿論あのヤクザです。

2008年01月06日

しみず水都『セクレタリーはセクシーで』

 うーん。
 社長×秘書。
 女性問題で失敗したのを父に助けてもらったため、父のカトラリー関係会社の社長を引き受けることになった攻め。超優秀超美形な秘書が、人前だとべたべたしてきて二人になるとそっけないのは、きっと社の女性に攻めを近づけないようにしてるのです、多分。

 秘書が昔は女性にモテモテでさんざん遊んでたとか、裏ではバリバリ仕事して煙草吸ってカコイイとか、そういう設定はすっごくイイと思うんですが、そしてそんな秘書が社長にだけはごろごろにゃんにゃん、社長に近づく女の子に嫉妬しまくり、とかいうのもとってもいいと思うんですが、だのになぜ微妙だったんだろう…。
 やはり社長の前の秘書がただのかわいこちゃんだからかなあ。もっときちんと男っぽかったらよかったのに。挿絵のせいもあるのかもしれないけど、過去とか裏での設定はすごく男らしく一見思えるのに、打ち明け話してみると結構受け身だったり、総じてすっごく性別受けっぽい印象で、なんだかちぐはぐというか…。
 あと、なんかいまいち全体の構成がねられてない印象もある。お話自体がいまいちというか。

 しかしこのタイトルは本当に強烈ですごいと思う。いえ、褒めてるんです。

2008年01月08日

高口里純『ななひかり』1

 昨年末に読んだ。
 これからお読みになる方のために。

 …主人公にはカノジョがいます!

 有名俳優の隠し子高校生、遺産を相続するために、残りの隠し子にあって財産分与の手続きをすることに。
 高校生は地味だけどなんか色気があって、センパイとか弁護士とかがなぜか引き込まれちゃう感じ。カノジョいるけど(笑
 高校生のファンはまだまだ増えそうだし、これからの展開に期待。

猫田リコ『おつかいくん』

 昨年末に読んだ。
 印象がよかったのは、ここのところのコミクスがあまりに自分にあわなかったせいかもしれない。 

 ちょっとエキセントリックなことかいじわるなこと、天然どんくさいこ、というこの作者の王道CP、最後に寄り添ってく感じのお話など、とてもこの作者らしい一冊だった。
 「スケスケスケベ」とかも奇抜な設定と構成で、タイトルも猫田リコらしくていい。
 山田ユギとの合作温泉王は…あれ、山田ユギのコミクスでも読んだっけ…何度見ても全然絵もテンポも合わないなあ、と(笑

 あとなんか、エロがとみに排除されてきてるね。猫田リコの場合は確実に、これって売れてきたってことなんだろうなあ…(笑。以前はこの作者のエロはすごく違和感があるし、なくても面白いだろうと思っていたんだけど、ないならないで、なんだか展開が派手さに欠けてる気がした…。エロを展開に入れたほうが、最低な傲慢攻めとか最悪なわがまま受けとかの強烈なキャラをつくりやすいからだろうな。あたしは猫田リコのそういう強烈キャラが結構好きなので、やっぱエロあったほうがいいのかも、と思ったりした。

2008年01月09日

ごとうしのぶ・おおや和美『15th Premium Album―タクミくんシリーズイラスト&ファンブック』

 アンケートと中庭が一番面白かった。
 託生…章三大好きだね(笑。変な意味ではなくね。というか、真面目な話、託生の交友範囲が狭いとか、親しくなるには時間がかかるとか、いろいろ理由はあるんだろうけれど、お嫁さんにしたくてお兄さんにしたくて、女装させて一日デートをしたい相手が章三なんて、なんかすごい懐いてるなあというか、気をゆるしてるって感じですごくいいなあ。
 ギイはやっぱり高林のこと結構好きなんだなあと思う。片倉を弟にしたいって…どういう意味だ(笑
 章三が駒沢を弟にしたいというのは…わかる気がする(笑。託生かと思ったんだけど、そうは来なかったね。
 三洲の弟にしたい人が託生でよかった!よかったね!
 泉…弟の恋人がギイっていいよねって、なんかいいな。泉らしい身勝手さで、でもギイタク設定がアプリオリなのがなんだかいい(笑
 吉沢は中前かってるなあ(笑。ていうか、ギイ大好きだね(笑。泉がギイを好きだったせいもあるんだろうけど、もともと変な意味じゃなくて好きなんだろうなあ。泉とケンカをしたら、何かプレゼントをしないとだめ「かもしれない」というのがすごい吉沢らしくて…(笑
 利久は玲二は玲二呼びじゃなかったっけ。

 地図とか名簿とかも面白かった。地図はしかし、なぜ手書き…CGでも外注すればいいのに…。祠堂の校舎とかモデリングした3Dとか、見てみたいじゃないか。ていうかそれは映画版のことか…。映画のあたりは全部は読んでないけれど、ええと、ちょっと(ちょっと?)だけくりごとを。

 ギイが日本人なのがやはりつらい。外国人でもたぶんつらいと思うんだが、それでもこんなに日本人すぎると、もうこの話タクミくんじゃなくっていいじゃん?って感じで…日常的すぎるというか。ギイの配役は難しいというか、万人が納得する配役は永久に無理だというのはわかってはいるが、それにしてもなあ。個人的には、ウェンツがもう少しだけ美形でもう少しだけ(二年時なら少しだけだ)身長があったらWaTはギイタクだったんだけれど(ウェンツ好きな方には失礼な物言いだというのは百も承知だが、だってなにしろギイなのだ。しかし、こないだドラマにでてた城田優という役者は、今まで見た人間の中で一番ギイ(あたしのイメージするギイ)に似てた。個人的にはアンドレア王子を超えた(なにしろ日本人だし。

 あと、役者ふたりのインタビューとか読んでてすごく違和感を感じて、何でかなと思いつつ読み進めて気づいたのは、ああ彼らや映画の製作サイドにとってはギイって「ちょっとキザなイケメン」なんだろうなあということだった。きっとタクミくんも、BLの古典作品て程度の認識なんだろな。仕方ないけど。
 少なくともあたしにとってタクミくんは、ありえない世界を(他に類を見ないようなエクリチュールで、というのもあるけど)構築し得た物語であり、ギイはもう絶対ありえない存在なんだよね。製作サイドにとってもギイはありえない存在だろうけれど、それはたぶんこんなイケメンでタクミに都合のいい男いねーよ、っていうレベルのありえなさなんではないかなと思う。そうじゃないのだ。ギイはなんというかもっとこう、存在自体がありえないというか。なんかいろいろ超越しちゃってるというか。うまくいえないけど。あたしにとってはカッコいいとかどうとかいうキャラじゃなくなってきてる気さえするような…(だから二次創作があんなことになってきちゃってるんだろうな、と自省。つまりまあ、とにかくギイは映像ではたぶん表現できないだろうってことなんですけどね。
 そういうギイのありえなさはもちろん映像化できない要素なのかもしれないけれど、でもそれをわかっているのといないのとでは、作品にたいするイメージや、映像化の際に初手を置く場所が、きっと違ってくるんだろうなと思う。
 でも映画見たらまた印象や感想も変わるのかも。

2008年01月10日

樹生かなめ『猫から始まる恋もある』

 タイトルから、通い猫の共有から始まる恋の話か?と思ったら、受けが猫になっちゃって、しかも彼氏は猫嫌いで、いけすかない同僚の世話になっちゃうという三角関係と、ツボはいりまくりの設定だったので、初読作家だったけれどあまり迷わず購入。
 面白かったけど、ちょっと欲求不満というか、でもやっぱりツボ設定なので面白かった(笑

 彼氏があまりに下司だったのが意外で、ちょっとあざとくもあったけれど、でも落窪ものとしては楽しめた…落窪なのは攻めですが!(笑。受けがずっとすきだったのに言えなくて、しかもなんでか嫌われているし、あげく受けを先輩に横取りされて、猫化した受けが失踪したと思い込んで受けの猫を大事にする、という攻めが、とてもかわいそうでせつなくていい。特に前半はせつな攻めの暴露話が多くて面白かった。猫の見合いに本気な攻めとかもかわいくてよい。
 受けは普通の元気な受けっこで、キャラとしてはあまり面白みはないのだけれど、猫なのでよい(よくわからないけど。
 ちょっとあっさりしすぎてるとことか、ときどき妙なテンポになって飛んだりする会話とか、なんだか書き方がシュールな印象があった。攻めの見合い話の決着のつけかたとか、特に後半は展開もふくめてなんか乱暴だし…いいけどね。

 受けが猫になっちゃったのは血筋のせいってことで、お兄さんとか出てきて、最初は拍子抜けしたけどキャラがへんというか描写がへんな感じで面白かった。何百年も生きて枯れちゃってて、でも受け大好きなところろか。

2008年01月12日

一之瀬綾子『俺式恋愛計画』1

 成がなにやらもてているが、それはいいけどなんで成は友里を意識するようになったんだっけ?なんで友里は成好きなんだっけ?なんかあんまりきっかけが思い出せないのに、二人とも互いを特別っぽく思ってるのがちょっとよくわからない感じ。
 ていうか友里のキャラ自体がちょっとよくわからない。秀才で結構場慣れもしてて、なのに成の元カレとかと対峙してるとアラが出てきてしまうように見える。あと成や恭は、中学生高校生のころからスレすぎていると思う…漫画だからいいけどね。
 成の元カレは役どころがいまいちわからない。友里の後輩は悪いやつだなあ。友里の友達関係も意味深だ…。なんだかキャラが結構多い。

2008年01月13日

矢城米花『妖樹の供物』

 旧家へバイトで配達に行ったら、何か呼ばれたような気がした大学生。呼んでたのは旧家が祀っているご神木で、旧家の一族に供物にされてしまう。ご神木の声を聞ける長髪の若者はちょっと親切にしてくれるけど、夜な夜な木に犯され、ご神木のご利益を得たい一族にもまわされるハメに。

 かわった設定ものは好きです。描写とか展開とか、いまいち物足りないところとか、逆に饒舌すぎるなあというところ(たとえばストックホルム症候群とかいう単語がああしてダイレクトに書かれちゃうとちょっと萎えてしまう)もあったけれど、全体的には結構楽しく読めた。
 攻めはこんな状況で育ったので性格的にいろいろ不器用な感じで、受けは素直ちゃんで、それぞれあまりかわったキャラではないけれど、でも何と言うか、納得はできる感じ。

石塚真一『岳』1

 やくもさんにおすすめいただいたように思います。

 山岳救助のお話。
 数話たったあたりからこなれてきた感じで、キャラとかもしっかりしてきて面白くなった。山岳救助のお話そのものは結構シビアで、毎回ハッピーというわけにはいかないので、ちょっとしんどい。父子家庭の親子の話とか面白かった。

 しかし、わりと最近気付いたのですがあたしは高所恐怖症ぎみなので、絶壁とかシュルントとか想像するだけで超怖い。あと泳げないせいだと思うのだが空気がないのもダメなので、雪崩も超怖い。だから山登りにはすごく興味があるのだが、絶対無理な気がする…特に雪山は。
 そんなわけで、漫画だけでもかなりゾーっとしてしまいました。『楽園まであともうちょっと』とかも山出てくるけど、この作家のが写実的だし怖い場面が多かったので…。

2008年01月16日

英田サキ『愛してると言う気はない』

 『さよならを言う気はない』のつづき。前作より面白かった。

 メガネヤクザと恋人同士になったが相変わらずひどい扱いをうけつつ尻を狙われる探偵は攻め専希望。

 メガネヤクザに受けに弟が居たのにはちょっとびっくりした。酒乱の父を殺した受けと、そんなわが子を見捨てた母と、母に庇護されてきた弟、という関係性はベタながら面白かった。病気の母に兄を会わせようとする弟の無神経な善意と、それがしんどいメガネヤクザがなんでしんどいのか、というあたりは、痛いけれど面白かった。しかしその後のメガネヤクザの行動は…やはり痛い…うーん。弟のその後とかは読んでみたい。

 あと弟の恋人がらみで、同系列組織のヤな感じの美形ヤクザと確執が起こるのだが、こっちの筋もとても面白かった。探偵がメガネヤクザのために身体をはる展開は、探偵がちょっとマヌケだしベタだがやはり面白い。
 美形ヤクザと受けとの過去の確執とか、オチはそう来たか、って感じだし(笑、メガネヤクザが探偵に純情ささげてたこととか、クリスマスの話での可愛げっぷりとか、これはよいツンデレですね。でも、前作の後半からそうだったけど、やっぱあんまりツンではなくなってきてるよね。もうちょっと傍若無人でもいいのに…でも探偵がますますヘタレそうだから、ツンはこれくらいでいいのかも…(笑

 しかし、あらすじを読んで、リバを楽しみにしていたのですが…(笑

2008年01月17日

小笠原宇紀『魂シズメ』1

 現在の日本人に抹殺された古代民族が蘇って云々。無愛想系剣道少女と、幼馴染のぽやぽや美少年と、なんか蘇ったイケメン先生が化け物退治。

 …やはり主人公は男子のほうがいいのではなかろうか…(笑。面白くなくはないけれど、凡庸なファンタジーかな、という印象。うーん。

立野真琴『ミューズの学園で逢おう』1

 芸能科のある進学校。

 一話完結だったのがちょっと残念。物足りない話が多い。
 一話目の、売れっ子アイドル×ちょっと天然奨学生という超王道CPの話を、もっと引き伸ばしてほしかった…。
 二話目のモデル×モデルは、視点人物が自己卑下しててちょっとしんどいし、正直いまいち。
 三話目の数学教師×元神童作曲家はそこそこ面白かったけど、クライマックスの数式が…ちょっと、何と言うか…何とも言えない感じ…(笑
 しかし後書きにあったように、恥ずかしいと思わずに書こうという作者の意気込みは買いたい感じです(笑

 あとは別の読みきりで、これは雑誌で読んでた。ちょっと痛い…面白くなくはないけど。

2008年01月18日

医龍/絵板ログその3

07/1/28 (Sun.) 02:25:43 スペリオール

 木原…!うわあ。何と言う展開。彼はかなり卑小なひととして描かれているので、いつもその反動がすごい。お母さんのエピソードとか、今回の名前のこととか、なんというかすごくグッとくるものがあると思う。
 木原の告白に霧島が動揺しているみたいで、今後の動向に注目です。そして、伊集院もどう反応するのか…。

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 うってかわって妄想コンビニデート。

 「あ、これ」「お茶を買うんですか」「あ、お茶っていうか、このフィ、ギュア を…(し、しまった…!」「………」「あ、集めて…るんですけど、こ、子どもっぽいですよね、お恥ずかしい…」
 霧島は横に貼られた販促ポスターをのぞきこんだ。
 「……沢山種類があるんですね」「あ、……はい、この5番と8番が、まだ出ないん……で すよ、は、はは」「……」

 後日、
 「これ、霧島先生からの差し入れなんだって」「えー、珍しいですね」
 明真には大量のノベルティ開封済みお茶ペットがあった。


2007/2/15 (Thurs.) 17:51:14 スペリオール

 まあそんなわけで、霧木といえば凡ケン、じゃなくて。感想とか。

 スタッフに口止めをしている際の、影を半身にまとった霧島の姿が、今回の一連の霧島物語をよくあらわしているなあと思いました。

 野口に腰を折った霧島を見て、彼もやっぱりただの権力主義者なのか?と思った伊集院の逡巡がよいです。そして、そんな自分をさらけだしつつ、伊集院を育てると言ったことも本当なのだ、ともう一度伝えた霧島が、すっごく面白い。
 この板の#11にて、「「真っ白な医者」である伊集院の手をひくには、霧島はやはり汚れすぎてしまった」って書いたけれど、霧島は自分の手が汚れてしまっていることを自覚してるし、そしてこれからもその生き方は変えられないのだと思いつつ、それでも伊集院の手をとることを諦めない、と言うのだ。これは面白い。

 でもそれって、加藤のありようとも似てきちゃっているんだよね。加藤と霧島の差異化はなされるべきというか、そろそろ加藤の反撃が見たくもある。

 また、そんなゼロサムではいられない人々のなかで、朝田が言ったように伊集院は一人きりでも「真っ白い医者」であり続けてほしいし、伊集院の今後の成長もすごく気になる。

 …しかし、これで霧島話も一段落しちゃったし、しばらく霧島はメインでは出てこなさそうだなあ…。

榎田尤利『吸血鬼には向いてる職業』

 そんなに古い本じゃなかったのね。
 漫画家シリーズ。

 新人編集が変人漫画家の担当になったら漫画家は吸血鬼でした。
 前にも書いた気がするが、あたしは漫画家ものって大好きなのだけれど、これはなんか微妙にあたしのツボからはずれていた気がする。

 編集は執念の編集でオタクで、しかし美青年。漫画家よりも彼の描く漫画そのものに執着しているのだが、しかし血を提供してるうちにそういう関係になって、何時の間にか漫画家にホレてたあたり、よくわからん人である。恋愛感情そのものは祖母を失って天涯孤独になっちゃった寂しさとかから把捉できる気もするけど、やっぱりなんでこの吸血鬼漫画家を好きになったのかという点は説明不足な印象。あと、漫画に異様に執着するコミカルなキャラクターが、なんだかあざといというか、面白さを過剰に演出しようとしている意図が透けて見えちゃうというか…。
 一方の漫画家は、血のおいしいオタク編集を好きになるというのはわかりやすいけれど、しかし編集としての彼にどのような感情をもっていたのかがいまいちよくわからない。他の編集とは違う、というふうに差異化しつつ、そういう一風違った彼はじゃあ自分にとってどういう編集なのか、という位置づけはなされないままだから、結局恋愛感情以外の面はやはりよくわからない。

 なんというか全般に、吸血鬼漫画家×漫画大好き編集のコミカルさと、吸血鬼漫画家×孤独編集のラブとがしっくりきてない感じ。特に後者は、わりとよくある吸血鬼と人間のファンタジーやラブストーリーの典型で凡庸な印象だし、ファンタジーとしてもBL作品としても、いまひとつ弱いかな、という印象になってしまっている気がする。

 あ、でも、吸血鬼が漫画はひまつぶしのために描いてる、とかいうとことかは面白かったし、人間になる猫とかはかわいくてよかった。「呼べないのよさ」も可笑しかった…でも外科医呼ぶんなら、朝田龍太郎でしょう!(笑

2008年01月23日

鬼嶋兵伍『ジョカトーレ、捕獲計画。』

 後頭部がちょっと絶壁ぽくないだろうか…と、デッサンが気になって購入を見送っていたのだけれど、結構評判が高いようなので読んでみた。このタイトルがいいよね。
 短編集で、面白くなりそうだけど物足りない作品が多かった印象。

 表題作は後輩メガネ才能あるのにジャーマネ×サッカー部のエースで、メガネだし結構よかった。けどやはり物足りない。
 軽薄な遊び人ゲイ×かわいい系朴訥ゲイっこ、リングにあがると別人、とかも面白げだったけど、攻めの本気がよくわからないというかページがたりず説明不足。
 気弱っ子×年の近いカコイイ叔父さんはMでした、は、CPはポルノ設定だが面白いけれど、描写も説明もたりない感じ。

 というわけで、連載作品とかで読んでみたい作家だなあという気もするのだが、ロッカーものとかはむしろ冗長な印象もあったし、うーん、ちょっとまだよくわからない感じの作家だ。

リンクありがとうございました。

 それで思い出したのですが、かわゆい指揮者のほかにもハツラツとした指揮者もすっごくよかったのでした。ハツラツ、とかいう単語にしてしまうと一気に魅力が伝わらなくなっちゃうんだけど(笑、他に語彙を知らない。ところで女性指揮者ってスカートでふる人はやはりいないのだろうか。

 すいません、それは関係なかった。

 萌えプレさんの2007年ボーイズラブ総括記事リンク集&ちょっぴり集計という記事で、マヨイガのBLコミックランキング上半期下半期にリンクしていただきました。去年はあんまり漫画読まなかった気がするので、場違いな感じがしてちょっと恐縮ではありますが、うれしいです。ありがとうございました。

 いろんなサイトさんの集計をしてくだすってるのがとても興味深いです。
 『誰にも愛されない』の首位は超納得です。マニアックにも一般的にも面白いし、つくづく最小公倍数だと思います。最小公倍数は変かな。最大多数の最大萌、ですか(笑。『あかないとびら』『エンドルフィンマシーン』とかもわかりやすいですが、しかし『キスミーテニスボーイ』の評価が高いのは意外です。いえ、あたしも好きなんですが。『セブンデイズ』は、興味があったのですが迷っててまだ買ってませんでした。『百日の薔薇』は完結してから読もうと思ってましたが、二巻も出たし読もうかなと思います。

 小説の方では、『ドアをノックするのは誰?』が高評価だったのは正直意外でした。前半はあたしもすごい好きなんですけど。木原音瀬は強いですね。かわい有美子は読んだ事がないので読んでみたいです。

2008年01月24日

桜木知沙子『ふたりベッド』

 メガネ形成外科医×大学生。
 二人暮ししてる姉の長期出張で、ちいさい頃から好きだった姉の元恋人のおにいさんといっしょに暮らすことになりました。

 外面はよく、受けにはいじわるだけどでも根は親切な攻めと、姉に猫可愛がられてちょっと幼い受け。展開はごくわかりやすいし、攻めの受けへの気持ちもわかりやすいので、受けはちょっと天然というかひとりで勝手に勘違いして悩んだりする感じで、なんだかなあという気もする。前半はわりとせつない感じで読めたんだけど、後半にいくにしたがって、もうちょっと視野を広くもとうよ、と感じるとこが多くなってった印象。

 ところで、受けが怖がりなので攻めのベッドにいっしょに寝させてもらう…がゆえのこのタイトルなのだが、怖がり設定もベッドいっしょ設定も後半ではあまり出てこなかったし、なんか全般的に作品全体での構成とかがあまい印象。
 受けの友達とかの描写もあんなに必要だったのかどうか。攻めの元共同経営者とかも、まあ後から活きてくるんだけど、それは受けとその姉の家族にまつわる筋においてのことなので、なんだかなという感じ。末尾なんて攻めとの恋愛よりも、家族との和解がメインになってるし。攻めと気持ちを確認しあって、その後は家族会議で終りだもんなあ。外面がよく受けには冷たいけど本心では甘やかしたいと思っている攻めが、告白後に受けにどういう態度に出るのかすら判然としないというのは、やはり物足りないし、攻めの多面体なキャラが活かしきれてないと思う。あと、受けの勘違い是正とか家族会議とか、セリフで説明して誤解をといてく場面が多すぎて、ちょっとしらけてしまう。仕方ないのかもしれないけど。

 梅沢はなの絵は受けがしっかりした体つきなのがいいと思う。

高岡ミズミ『君に捧げる求愛』

 求愛はプロポーズとルビがふられています。
 ホテルの部屋に花をはこんだら部屋にいた攻め同僚に襲われかけたところに、部屋の主である攻めが戻ってきて助けてくれたのですが、彼は交流試合で来日中のメジャーリーガーでした。彼は勿論(?)NYをホームとする球団のひとつの四番打者で超イケメンです。

 BLにしたっていろいろとお手軽で、ちょっとあっけにとられた。
 襲われかけてるのを助けてもらって、なぜかベッドに運ばれてごくあたりまえのように睡眠をとり、翌日発熱する受け。一体バイトはどうしたんだ。黒目黒髪のヤマトナデシコが好きで、日本人の心がわからないと日系三世の同僚に相談する攻め。13歳まで日本育ちだったら感覚はほとんど日本人と変わらないような気もするのだが。展開も、パーティーに連れ出され、各地を回る交流試合に連れて行かれ、なんだかんだで渡米して同棲までがものすごい迅速なので、なんだか呆然とさせられてしまう。
 なんだけれど、でもその迅速さをわりきり、テンプレものとして考えると、ちゃんと面白かった気がする。意外にあんまりないCP設定だという気もするし。逆に言えば、このCP設定では、こういうベタすぎるほどベタなキャラと展開、すなわちメジャーリーガーが民間人にメロメロで、境遇の差を乗り越えてハピーエンド、にしかならないだろうと思うし、ていうかむしろそれ以外の展開はいやだなあ、という気もするし。

 ところで攻めがプロテクターつけて出てきたところであれ?と思ったのだが…この攻めキャッチャーだったんですね!(笑。第二話のクライマックスになるまでポジションすら書かれてなかったのだな、と気付いてなんか脱力しつつ笑ってしまった。こういう点(恋愛面以外の描写の薄さ)からも、やはりある意味お定まりのBLだなあという気もした。
 いやしかし繰り返しますが、でもそういう軽さはあっても、やっぱり結構面白かったのです。

2008年01月25日

タカツキノボル『恋愛至難!』

 おめでとう!!!よかったね!!!なんかみんな自分ちのこの話ばっかりしてんのね!勿論クロエも例外ではないので、花井くんを超応援してるよ!超頑張れ!

 タカツキノボルの初コミックスか。すごい部数出てそうなイメージだがどうなんだろう。
 限定版はCDつき。別にいらなかったのだけれど通常版がなかったので限定版で購入。

 漫画になってもやはり絵が丁寧で、ところどころデッサンがあやういけどそんなに気にならない感じ。内容はオーソドックスなBL作品短編が多いけど、なんだか間の取り方とかギャグコマとかが妙なテンポで個人的にはこのエクリチュールは結構面白い。

 表題作はデザイン課の先輩×後輩、さえない先輩が恋愛をしたいというので身なりをととのえてあげたらいい男になってしまい自分を好きだとか言い出しました。先輩はもともと恋愛経験がないしいきなり男に惚れるのもありかと思うけど、女の子にモテるノンケがなぜそんな先輩にほだされてしかもすんなりネコになるのか、よくわからない。しかしその辺はBLテンプレだから、で気にしなくてもいいのかもしれない。
 美大教授の日本画家×母の借金のため美大に合格しつつも進学できなかったたまご、はとりわけへんなテンポで面白かった。貧乏な受けはモデルのバイトで美大に行って、裏山で山菜とりはじめるし、そのせいで学生の私物が紛失したら疑われるわ、日本画家は受けをだましてヌードモデルさせて、裸の受けの周辺にマトリョーシカ大量に配置するわ、わけがわからないので(けど、ではなく)面白いです。
 あとは、純情健全なのにお酒入ると積極的なリーマン攻めとかかわいい。

 美大の描写とかデザイナーの仕事ぶりとか見てると、作者はどっちも未経験なのかな、という印象で(いやあたしもどっちも未経験なのでわかんないけど)、かつあとがきによれば漫画経験も少ないみたい(同人とかもやってないよね、多分)なので、この作者の閲歴がちょっと気になった。ただの好奇心ですが。

2008年01月26日

山田たまき『ゴールデン・アワーズ・ショウ』

 代議士の息子だが自活してるカコイイ系大学生×田舎出身の健全大学生。攻めは古い家で下宿を経営してて、受け他三人の学生と一緒に堅実に暮らしてるのだが、土曜の夜はドラァグクイーンのバイトをしている。

 攻めがドラァグクイーンという設定に惹かれたのだが、この設定はただ派手なだけであんまり活きていない気がする…。代議士の家というバックグラウンドにしばられたくなくて堅実に暮らしてる攻めの、自分が別人になれる場っていうだけだし(だけ、と言ってしまっていいと思うのだ。そんな攻めは受けの健全さに惹かれるのだが、しかしこの受けもつまりはごくふつうの大学生なので、なんだかあんまり魅力があるわけでもないし。ふたりがくっつくにあたっても、心情の変化とかがしっかりかかれるわけでも、大きな事件があるわけでもないし、お話としては地味で短いものだという印象。
 ところどころに面白くなりそうな描写はあるものの、全体としてはいまいち。文体がややスノビッシュだが面白げなので、他の作品も読んでみたいとは思う。

 柏倉大学の名前の由来はなんだろう。モデルは多分早稲田だろうけど。

 

2008年01月27日

遠野春日『砂楼の花嫁』

 2007・BL小説ベスト10を訂正しました。『溺れる戀』ではなく『愛してると言う気はない』を追加しました。

 な、なんという盛大な地雷設定…。

 アラブ某国皇太子兼外交担当×東欧某国近衛兵。
 外相警護隊の長となって訪アラブした受け。隣国のテロ組織による爆破事件に関与した疑いで拘束されるが、攻めが庇って自邸に引き取り云々。

 まあまず冒頭から、父が日本人で、両親亡き後ひきとられた先の名門貴族の一族から疎まれてて、小柄めで細い外見とか、家柄で出世してると思われてるせいで軍内部でもはぶられてる孤独な受け、がオーラのすごい攻めを見て惹かれちゃうとか、今まで異性にさほど心を動かされずにいまだ独身の攻めが、一目みただけで受けが気になってしょうがないとか、なんか手軽に運命チックなのでちょっとなあ、ってとこはあった。あと攻めにそっくりな弟は何か重要な意味があるのか、なさそうだなあ、とかも思ってた。
 でもまあかわいそう受けは好きだし、この辺りはさほど気にせず読み進めていたのだが、受けが服の下にある秘密を隠してて、という辺りでちょっと嫌な予感がしてはいたのだ。

 しかしまさか本当に半陰陽ネタでくるとは…。
 今まであんまり意識したことなかったけど、あたしこれ超地雷ですわ…。あんまり意識したことがなかったのは、BLでこのネタを読んだ事があんまりなかったからだろうと思う。全くないわけじゃないけど、そんなにメジャーではないよね。すぐに思い出せるのは『SEX PISTOLS』くらいだし、あれは人工だからちょっとまた違うし。
 どうなんだろう。これ地雷な読者は結構いるんじゃないのかなあ。せめて梗概でほのめかしといてほしいと思ったんだけど。結構みんな平気なのかなあ。

 というわけで、正直ほんと参ったのですが、この設定でエロはどうするつもりなんだこの作者、と気になったので、ちゃんと最後まで読みました。…微妙にBLのワクにおさめようとしてるような、けどやはりそのネタにふれないわけにもいかないのだろうなという感じで、最後の場面とかしんどいなあ…正直、もうほんと勘弁してくださいって感じでした。うーむ。

 お話に関しては…、受けが軍人てことがほとんど活きてなかったねそういえば。射撃がうまいくらいか。でもそんなことどうでもいいっていうかなんていうか。

 円陣さんの絵は超美しかった!軍服の麗人の横顔なんてもう最高。

 追記。上記はあるいは差別的な言説だと受けとられてしまうかもしれないと思ったので、ちょっと弁明ならびに補足をします。
 この設定が嫌だったのは、あたしがこの話をBL作品として読んでいたからです。受けを男性として描写したり、女性として描写したりされると、つまりは所々でただの男女もののエロになってしまうわけです(設定だけではなく書き方の問題でもあるのかもしれませんが。男女もののエロそれ自体がダメというよりは、そういうものを予期して読んでたわけではない(=BL作品として読んでいた)がゆえに拒否反応を感じたのだと思います。

2008年01月28日

木原音瀬『美しいこと(下)』

 仕事を早く終えてお買い物でもしようと思ってたらコレを見つけてしまって、そのあとの予定がすべてワヤになりましたよ!

 会社のさえない男・寛末に女装した姿を見られた松岡は、熱烈に口説かれほだされて寛末を好きになってしまったけれど、男だとバレたら手のひらかえされてしまい、しかし思い切れなくってとても辛いのです、のその後。

 わーもう胸がいっぱいです。

 松岡パートはわりと短く、今回はほぼ寛末視点での語りだったのだけれど、にもかかわらず寛末がすごい感じわるくて松岡がものすごい勢いでかわいそうというのがスゴイ。やっと…というところで、誰と!とか尖った声で言ってる寛末とかほんとうにひどすぎ(笑。松岡も泣くよそりゃ。
 そして、そんな語りなのに、寛末にはムカつくよりも先に早く前に進め、と応援してしまうのが更にスゴイ。というか、寛末がこんなにひどいのに面白いのがすごいと思う(笑。この話は寛末がひどくって松岡がめためたに傷ついて、っていうお話なんだよね、と。もっと言っちゃえば、それをエンタメとして提示してるテクストなんだろうなと思う。

 寛末はほんとしょうがないというか困ったちゃんというかたちの悪いひとなのだが、しかしそういう人として書かれているのだし、もうなんでもいいから松岡を助けてあげて!という一心でしか見られないので、躊躇いつつも前進してるだけで応援してしまうのだろうか。
 松岡には女装して寛末を騙してたっていう弱みもあるし、寛末にも今回は会社でのいろいろとか情状酌量の余地が残されてるあたりが担保になってる気もする(寛末のひどいしうちをエンタメとして楽しめてしまうための担保ね。
 あ、勿論そういう、寛末がひどい話が面白い、というのはカタルシス込みでの評価だけどね。これで松岡が報われてなかったら、あたしは反動でボロクソに批判、というか感情的な中傷を書いていたかもしれないと思う(笑
 いずれにしても、個人的にはとても面白かった。かわいそう受けが好きだからというわけでもない気がするのだけれど、ちょっとあんまりうまく分析はできてない。

 寛末の末尾近辺の衝動的な感情の変化は、正直ちょっとよくわからないというか、それまでが丁寧に説明されてただけに、なんで急にそこまでいくの?という気がしなくもなかった。あと、末尾はなんか急にやさしくなっちゃって、女装松岡への態度と近似してるのがそれはいいのかわるいのか、って印象でもあった。でももうなんでもいいから松岡をなんとかしてあげて!って感じで(笑、とりあえず松岡が幸せになれるんならなんでもいいかと…(笑

 松岡は女装の頃は確かにちょっと悪かったかもしれないが、基本的にすごくいいひとで…(笑。なぜヒゲを剃らないのか、とも思ったけれど、でも結果的にそれがよかった感じ。長いことバスルームにこもってたのははじめてなのに自分でしたということなんだろうが健気すぎるし、末尾のメールとかもうかわゆすぎる。あ、時計はどうなったんだろう??

 なにはともあれ、とりあえずアンハッピーエンドじゃなかったので、それだけでもうオールオッケーです。途中までちょっとどきどきしてました(笑
 あーなんだかまだぐるぐるしてますが、とりあえずそんな感じです。

2008年01月30日

日生水貴『綺麗な彼は意地悪で』

 先日読んだ。
 超人気子役だったものの、ある事件がもとで芸能界を引退して芸能事務所で働く受け。最初で最後の映画で共演した俳優はハリウッドスターになりましたが、その続編製作のために戻ってきまして、受けがマネジャーをすることになりました。社長である受け母は、彼は男女にだらしないので一緒に住んで見張れとかいっています。

 なんというか、ちょっと設定とか青くさい印象というか。
 攻めがハリウッドスターとか、性にだらしないと評されつつ全然そんなそぶりが見えず受けにめろめろなとことか、受けが元スーパー子役とか、性別不明でうってたとか、その芸名とか、今でも執念深いファンがいるとか、あと過去の事件の後遺症があるのは仕方がないがいじいじとして逃げまくって周りに迷惑をかけてるとことか、なんかもういろいろと拙い設定と描写がしんどい。映画にまつわる筋(受けのやった役をひきつぐ役者のあたりはちょっと面白かった)は悪くはないと思うのだけれど、しかしとはいえ、全体的にちょっとしんどかった…。

木原音瀬『美しいこと』再

 先日『美しいこと(下)』を読んでからなんかどっぷりとはまりこんでしまって、他の物語を入れたりしたらいろいろと零れてしまいそうなのが怖くて、別の漫画も小説もしばらく読めなかったりしましたよ!なので上巻ふくめて拾い読みしなおしたりしてましたよ。こんなにハマったお話は久々かもしれません。とりあえず思ったことを備忘。

 とりあえずやっぱ寛末はダメだ…(笑。寛末は松岡いわく「気が利かなくて、けっこう気分にムラがあって、優柔不断で、嘘嫌いだって言いながら、自分は嘘つく人」で、たとえば末尾近辺で松岡が卑怯という言葉をつかったとこは、松岡が考える時間も、寛末を信じるためにかけられる時間もなくなってたからなんだろうと思うのだが、寛末はそんなことにも気付かないのだ。でも作者も後書きで書いてるように、こういう人はよくいるというか、結構誰でもが持ってるずるい部分が前面に出てしまってるだけ、という気もするんだよね。葉山も「優しい」という評価をしてるので、他人には基本優しいんだろうし。
 一方松岡はあんまりいいひとで、それは寛末にたいしてだけではなくて、葉山やほかのひとに対してもいいひとな印象…だったんだけど、上巻も読み直してたらこずるい同僚に対してとかは、結構冷たかったりした。葉山は友達だし、彼女に親切なのはある意味あたりまえなのかも、と。つまり松岡はわりとふつうのひとなんだよね。ふつうのひと、をこれだけ魅力的に書いてるのはある意味スゴイなと思う。感情が丁寧に書かれてるのと、あと状況がやっぱ普通じゃないからなのかも。

 感情といえば、松岡も寛末ももともとノンケな上、松岡はイケメンだし女子にもモテモテで、寛末だってそこそこ女性とつきあってきてるのだけれど、同性である互いを好きになる過程にはまったくといっていいほど違和感がない、気がする。自分のことをすごく好いて大事にしてくれる相手を好きになってしまう、という気持ちは、すごく納得出来るありようという気がするのだ。
 女装して出会うという設定が非現実的だけれど、こうした物語=感情のうつりかわりが妙にリアル(物語としてのリアルさであって、現実的という意味ではない)で、よい意味でBLはやっぱファンタジーなんだよなと思った。ファンタジーだからいい加減に書いてるわけでもなく、ありえないことをきっちり手触りをつけて書く、という意味においてファンタジーだ。

 でも恋愛の過程が違和感ないとはいえ、あくまでも男性同士の物語なので、勿論互いに同性であるがために逡巡はしている。受けたる松岡は、絵のおかげもかなりある(日高ショーコは短髪ヒゲメガネのイケメンをうまく描いてくれてるよね、笑)と思うんだけど、きちんと男子だし。うーん、でもあたしが男子ではないから違和感を感じなかったという可能性もあるけどね。松岡は反応も態度も言葉もすごくかわいいけど、それでも全然女性的には感じられないとあたしは思うんだけれど、どうなんだろう。男性から見たら女性っぽくって変、とか感じるのかな。
 んで、問題なのは、というか面白いのは、男性同士なんだけど、この恋愛物語が成立する上では同性ということはたぶんメインモチーフではなく、そうした要素がありつつ展開していく物語は別のところにきちんと成立してる気がするとこなのだ。勿論同性であるがために寛末が松岡を拒絶することで、物語には遅延が生まれて、展開するのだけれど、でも同性であることそのものが問題なのではなく、もっと違うとこで恋愛の問題を書こうとしてる気がするんだよね。違うとこ、というか、もっと抽象的な恋愛感情、かな。だから言うなれば、ジェンダーとしての〈性〉もセックスとしての〈性〉も無関係なところで成立する恋愛物語(というか、そうであってほしいというか)な印象がある。
 作者が後書きで繰り返すように、この物語には「恋愛」しかないのだが、これは男女でもいいんだけど男女じゃなりたたない展開だし、なんかうまくは言えないけど、(パラドキシカルな言いに思えるけど)BLだと〈性〉性が排除できるんじゃないかという気がするのだ。
 うーん、まだ印象論ですな。もうちょっと読み込んだらなんか論じられそうな気がするんだけど。分析に耐えうるテクストである予感はあるけれど、でも論立てても発表する媒体がないな…。

 ところでなんか寛末視点の「愛しいこと」は読み返すごとに松岡の気遣いとか健気っぷりが新たに見えてきてうわーという感じです。二晩ほぼ完徹だなとか。たぶん帰りも寝てなさそうだなとか。お風呂が長かったのもだけど、寝たふりしてたのも寛末が怖気づいたら帰れるようになのかとか。なんかたぶんつかってないっぽいし、きっとあのあとお腹こわしただろうなとか。ケーキのまえで目をキラキラさせてる挿絵もすごいかわいい。こんな健気っこにもかかわらず、短髪ヒゲメガネのモテ系イケメンだし(笑。そんな松岡なのだからして、もっともっと報われてほしいと思ってしまう。最後はもっとラブラブにページさいてほしかったな~。

 あ、あとタイトルの意味がわからん…と思ってたら、AJICOの曲だった。

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