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2008年12月01日

高遠琉加『美女と野獣と紳士』

 愛と混乱のレストランのつづき。

 ほんとにこの作家は、いっこも萌えないときと、まったくピッタリとあたしの好みで完敗なときとの差がはげしすぎる。
 今回は、まあ前作がよかったのもあるんだけど、よかったっていうかあたしのツボにジャストというか、とにかく読んでいるあいだじゅう、もう全編にわたってモエモエでした。萌えというのはお話が面白いかどうかとは別問題で、いやお話もたぶん面白いんだけど、しかしここまでの萌えはめずらしい。

 でも読み始めのあたりは、ちょっと混乱した。キスまでしといて、まだ全然恋愛関係には入っていなくて、相変わらず傍目には冷戦状態、だったのね。なんかもうちょっとは関係が進んでるんじゃないかと勝手に脳内補完してたので、違和感があった。あと、たぶん『長靴をはいた黒猫』と混線したのだと思うんだけど、シェフ弟と桃瀬が一緒に住んでるんだったっけ?とか妙な勘違いをしそうになった。
 あと、どうも次巻への引きが多いというか、この一冊の中ではあんまし解決してない問題が多いので、続きが気になる。

 美女こと、シェフの元カノフランス人女性は、シェフへの未練とか雑誌記者だとかの要素もまあいいんですが、なにしろとってもおいしそうに料理を食べる、という設定が、いいミソですね。ディレクトールは既に彼女へのニガテ意識をかんじてるけど、シェフと恋愛関係になれば更につらい気持ちになるだろうし、で、そのつらさはどうせひっくりかえされることだろうから、そのカタルシスが楽しみですね。って、そのカタルシスが次巻もちこしだとは思わなかったですがね… (笑
 彼女がもちこんだ、シェフのコンソメをさしての「金色のスープ」という言葉と、それに拒否反応をしめすディレクトールが、すごくいいです、かわいそうなんだけど。ディレクトールはおんなじコンソメスープを飲んでても、「金色のスープ」を享受出来ないんだなあ、と。

 野獣こと、シェフは、まさかこう来るとは思わなかったド最低な展開で、びっくりです(笑。でもシェフは、実はわりと無神経だしひどいし、それを思えばいきなりのこの最低ぶりも、まあそうかもなあと思える。
 だってこのシェフは、ディレクトールのかかえている傷を知った後でなお、弟のつくったパンを示してのお説教とか、イチがあんたのためにつくったんだからケーキ食べろとか、気持ちはわからんでもないが、精神的なキズを考慮してない無神経さというか、少なくともカウンセラーには怒られそうな対応なんではと思う。
 そしてだがしかし、そんなひどさすらもディレクトールには伝わってない気がする。なぜならあいかわらずディレクトール視点のシェフは、ただただ怖いだけで、だからそこにまだ好悪の感情は生まれてないんだよね。好きとか嫌い、以前の段階で。
 ジビエは…食べてみたいけれど、あたしも食べられないかもしれない。ところでディレクトールのために調理したジビエはどうなったんだろう。このシェフが食べ物を無駄にするとは思えないので、まあ誰かが食べたのだろうけど(笑

 紳士こと、本部長は、なんかそんな気もしたけどまさかそんな…という展開で、そうかー。

 ディレクトールがゴルドが欲しい、って言ってる意味というか、モチベーションがよくわからなくて、ちょっと理不尽というか不条理な夢なのかなあと思っていたのだけれど、そしてそれでもまあいいかと思っていたのだけれど、実はもう少し意味があったのですね。そしてその理由はベタだけれどますますせつない。
 そんなすべてを失ったディレクトールに、シェフはアレだもんなあ。ますます最低(笑
 けどもうどこに進んだらいいのかもわからなくなってしまったであろうディレクトールに、シェフは「あんた自身は、何が欲しいんだ?」と、いまひとたび問うてほしいですね。はたして彼があんなことされたシェフをほしいと思えるようになれるのかどうかは知らないけれど(笑。ていうか今の状態では、デイレクトールはおいしく食事をしたいとも、家族恋人がほしいとも思えないだろうし、だから何が欲しいかもわからないというか、何も欲しいものなんてないと思ってるだろうし。そうするとシェフは手詰まりになるんだろうけれど、どう事態を打破するのかな。本部長の手助けではなくて、単独で頑張ってくれないと、男っぷりがあがらん気がするけれど、既に本部長が動いてるしなあ。ていうか、この男っぷりというのも読者目線での評価かもしれない。シェフのド最低行動は読者にもシェフ本人にとってもド最低だけれど、ディレクトールにとっては別に評価対象ではないのかも。シェフはいまだ怖いだけの相手だからね。

 しかし、次で終わりの予定なのかー。この作者は潔いというか、シャレード文庫が潔いのかなあ。なんだかこうしてきっちり終了まで見据えたシリーズというのは、珍しい気もする。構成がきれいにまとまっていいんだろうけれど、淋しいというのも正直なところだ。

2008年12月03日

ユキムラ『桃色天狗』

 最近人外ばかり読んでる気がします。
 両親が亡くなって金持ちの祖母にやっかいになってる高校生、両親がかけおちしたせいでどうもうとまれてるようです。そこに、高校生のご先祖様に助けて貰ったとかで恩返しにきたという天狗が登場。天狗はそのご主人様に惚れてたらしいんですが、なんかいろいろうるさくて、けれど助けてくれるのでなんだかちょっと好きになってきてしまいまして。

 ゆるゆるファンタジーで、面白かった。
 天狗は先祖より高校生がすき、になったのか?が、はっきりとは書かれなかったのが淋しい。でも羽のいろがかわったのは高校生の時だけなんだろうけど。

 ひろった猫がかわいくないなあと思ってたら、猫又だったので納得し、あとがきを読んで更に納得してしまった。
 おばあさんの秘書も、天然なのかわざとなのかなキャラと、真面目な秘書っぷりがよかった。
 天人も、おまけ四コマとか面白かったし、これ続編あるといいなあ。

2008年12月04日

阿仁谷ユイジ『恋愛裁判の行方』

 来週になったらいそがしさが緩和されるかなあ…。
 って毎週思ってる気がしてきた。

 短編集で、イケメン弁護士が苦手なふつうの弁護士とか、絵に一目惚れして弟子志願とか、イケメン彼氏につくしすぎてふられたとか、趣味がにている親友同士がくっつくとか、いろいろなんだが、なんだか物足りなかった。
 どれもこれも、やっとくっついた瞬間に終わりか!みたいな。
 この作家のキャラはじれじれのまどろこしいひとが多く、それが持ち味でもあると思うので、短編ではそれはあんまし面白くないし持ち味も活かされてない感じでもったいない印象。

 日本画の絵の具はなめたら身体にわるそう。もう毒そう。

2008年12月09日

嶋田尚未『メイドインヘヴン スクール編』

 『メイドインヘヴン』が前作なのですね。読んでなかったや。
 なんかぼっちゃんと、ぼっちゃん家につかえるメイドを祖母にもつせいかメイドにさせられてる少年、という設定なのか。
 両想いながらも多々のジャマがはいりすんどめというお話らしい。あとメイド少年の出生のひみつとかなんとか。

嶋田尚未『キチク王子の優雅な企み』

 なんかいろいろあった。

 『誘惑しないで』の次男生徒会長×野球部の天然かわいい系男子。
 憧れだった会長にケガさせちゃったカドでお世話係にされた受けがなんかそういう奉仕とかさせられ云々。ひねくれものの攻めと、互いに勘違いのすれ違いというベタなお話でした。
 次男はなんか前作とイメージが違うような気が。ひねくれ者、みんなには結構優しい、というキャラはなんかあってるようで違うような…。

2008年12月10日

田中鈴木『夢中ノ人』

 これはよい田中鈴木。
 美輝という少女と光輝という少年が対立している世界で、少女のナイト的存在のひとりの役をやらされる夢をみたら、光輝の手下的なかわゆい少年といい雰囲気に。って、夢だと思ってたら、なんかみんな現実にも存在するらしいのです??

 徹底的にへんな設定で、なんというか、ああ田中鈴木は好きなようにかけるような売れっ子作家なんだ(に、なった?)なあ、と深く感動した。

 美輝の城のひとびとはみんなかわいい。あんましかわいくない美輝も、美輝にベタボレのイケメンも、ちょっと暗い美少年も、コンビニバイトの長髪も、主人公もみんなキャラたってていい。長髪が主人公にへんなからみかたをするのもぜんぜんBLとは違った意味で面白い。
 光輝の城のひとびとは、かわゆい少年がちょっとキャラ弱いというか、かわゆいだけだなあと感じるのがもったいないかんじ。かわゆい少年に惚れてるイケメンおさななじみがバカすぎてかわいい。光輝はまだよくわからない。

2008年12月11日

すずはら篠『ようこそのおこしを』

 噺家の弟弟子×兄弟子とか、老舗旅館の番頭さん×若旦那とか、大学時代の友人の大臣×若き大統領とか。
 なんかかわいい受けばかりで、ちょっと天然やアホっぽいこが多く、いまいちだった。老舗旅館の若旦那とか、テディベアを大量にかざってたりしてこのひと大丈夫かしら…と心配になった。まあ近代物という設定だったとわかって、少しはいいかと思えたけれど、それにしても…ダメ旦那すぎる…。お話も軽かったりなんだりでものたりない。絵柄的に、かわいい受けとかコメディっぽいお話は合わない気がするのだが…。

2008年12月13日

夜光花『不浄の回廊』

 怪奇ものでこのタイトル、で、BL。確信的にこのタイトルで出しているとしたら、作者はほんとうに鬼才かもしれん…とかなりwktkして期待値がものすごく高まってしまっていたのですよ…。

 中学時代にほのかに好意を抱いてた一匹狼な同級生には、黒い影がつきまとっていた。除霊師の父をもち、若干の霊能力をもつ受けっこは、彼に近づくにつれその影をなんとかしたいという気持ちがつよくなるのだが、影にの正体を見極めようとしたら倒れてしまい、体調をくずして寝込んでしまう。やがて霊能の修行をつむも、学歴もないのでコンビニバイトくらいしかできず、そんな中父の命令で一人暮らしをはじめたらアパートのお隣さんはあの同級生でした。塾講師になってた彼はあいかわらずイケメンですが、暗い影はますます大きくなっていて云々。

 うーん、そんなわけで、スゴイセンスのタイトルだなあと思っていたので、案外にふつうの除霊譚だったので、拍子ぬけしてしまいました。特にラストはふつうすぎた…。あと、タイトルは、担当さんの提案だったそうで…。
 や、お話としては面白かったですよ、フツウにね。
 特に前半は、まあ期待しまくりで過剰に想像力を駆使してたのかもしれませんが(笑、かなり面白かったです。

 キャラがいいですね。
 霊能力をもつ受けは、もともとの平和主義な性格に、学校に行けなかったこともあってか、ちょっとアホに近いくらいの天然で、素直さがすごく魅力的。攻めへの気持ちが恋愛だと自覚するのはやや唐突だったけれど、天然さと霊能設定とでたいがいの唐突さは自然に描かれてる。たとえば攻めが死んでしまうかもと思って見張り続けて、ストーカー行為にはしっても、受けのひたむきさとオチとして出てくる能力との関連で納得できる。あと、ほとんど引きこもりだったせいで外見も(顔立ちはともかく)いまいちぽいというのは、そして身ぎれいにしたらあら美形だったのねなんていうオチもないというのは、BL的には斬新なのかも。
 そして、そんな受けの外見や行動をひくだのキモイだのさんざんに言いつつ、なんだかんだで受け入れてる攻めもいい。ストーカーされても、お前生徒達にあだなつけられてたぞとかわりと軽く流せるあたり、きっとうつわの大きい攻めなんだろう。受けもほんとうは攻めは優しいのだと言っていて、まあ確かにそうなのだろうとは理解できるのだが、でもどうも甘い感じにはあんましならないので、ちょっと物足りないけれど、でもこの攻めらしくていい。霊現象をかたくなに信じないあたりもよかった。

 霊能関係の物語は、前述のように前半はなかなか面白かったのだけれど、後半は受けの父が強すぎるし、ストーカー女性のあたりもあんまりおもしろくなかった。くどいようだが、タイトルあんまし関係ないし…。

 この二人で続編あったらいいなあ。

2008年12月14日

「NHK音楽祭」

 あれ?なんでこんないそがしいの??もう意味わかんない。
 しかし仕事が忙しいのもあるけれど、先が見えない中手探りでテクスト読解してくのが一番キツイ。でもトンデモ理論でもなんでも、結論つける、のも仕事のうちなのかな???

 それでこないだはマリィさんとNHK音楽祭にいちきました。アシュケナージのフィンランディア、シベコン、シベ二のシベリウスしばりですvなんだこのプログラム(笑
 アシュケナージのシベリウスなんてどんだけかわゆいんだ…と心配&期待してたら、ほんとになにもかもかわゆかったのでとっても納得しました。シベリウス自体はもすこし重いほうが好みではあるけれど、アシュケナージなのでよいのです。かわゆいは正義なのです(笑
 フィンランディアは、むしろこういう軽さも貴重かもしれない。一義的になりやすそうな曲だし。
 諏訪内晶子のシベコンは、意表をつかれるところが、むしろああそうくるだろうなとある意味予想通りというか…
 そうして、シベ二はほんといい曲だな!一楽章なんてもともとかわゆいので、アシュケナージにすんごいあってた気がします。二楽章も意外によかった気が。三ー四楽章とかこんな名曲だったっけー、とか、久々に聴くとなんかぐっときた。大好きですv

高尾理一『溺れる獣』

 弁護士として顧問をしてるヤクザの組長の息子を家庭教師してたことがあったのですが、数年後会社社長兼組でも出世中な息子に拉致されあんなことやこんなことに。弁護士が組長の愛人をしてるという噂をきいて、ふつうの結婚を望んでる弁護士のために告白しなかったのにーとか思っただそうで、誤解が解けても家に押しかけてきてごはんつくったり自分の会社の顧問弁護士を依頼したりであんなことやこんなことに。

 弁護士は、ヤクザのことが好きだという気持ちになるのがなんか唐突だったというか、ほんとに好きなんですか???好意をもって大事に思う、まではわかるし、そういう気持ちは恋愛とは別だって自分でも思ってたじゃないか。なんかもっと恋愛にはっきり発展する契機が必要だった気がする。
 攻めはなあ。弁護士にめろめろでかいがいしく強引で子供っぽいのだが、なんだかうすっぺらい。攻め視点の書き下ろしとかあったらまた違ったかもなあと思う。

 高尾理一らしい文体はいつも通りでよかった。たぶんあたしは、作者名をふせられても見分けられると思うよ!
 絵師さんは名前が七瀬かい東野裕とかとごっちゃになるのだが、そうではなくて、なんかカラーとモノクロではイメージが随分違うなあと思った。モノクロは少し昔の本仁戻っぽいのだが、しかしカラーもモノクロも人の表情はなんだかかんべあきらを思い出す…結構いろんな表情描いてはいるのだけれど、なんだかいまいち体温を感じないというか。絵自体はうまいと思うのだけれど、そのせいでちょっといまいちっぽく感じてしまう。

2008年12月15日

水島忍『傲岸不遜なプロポーズ』

 初読作家かと思ってたら、読んだことあったね。生贄ゲームの作家だね。けっこうかわった設定が多い作家さんなのかな。

 いないと思ってた父が亡くなり、実は自分は不義の子だったと判明、金持ちの父の家に呼ばれていったら相続放棄しろと傲慢にせまられ頭に来て全面戦争。

 傲慢攻めは好きだがしかしこの攻めは、受けにたいし遺産の件で威圧的にせまるのはまだしも、失礼な態度とりまくりで、あげく受けは母親のしつけが悪いとか言うし、かなり最低なのでさすがにどうかと…。
 最初から受けにだけはなぜか威圧的だった理由とか、親のしつけがどうのという誹謗をなぜくりかえしてたのかとか、受けの家を知ってたこととか、回収されてない伏線ぽい部分が多くてなんだかな。作中でも攻めの態度はちょっとおかしいとかされてたので、攻めは実は受けのことを以前からしってて複雑な思いやひそかな憧れを抱いていて、つい妙な行動ばかりとってしまっていた…とかそういう背景があるのかと思ったら、何もなかったし…。あと養子だって設定は必要だったのか。実の兄弟じゃまずいってだけなのかな。なんかはんぱだった感じ。
 稚拙な交渉や議論については、攻めは受けと対峙してるとなぜか子供っぽくなってしまうという説明がいちおうなされていたので、まあいいのだけど。

 受けはそんな攻めなので、きっちりしつけはされてきましたよとか怒るが、こちらも攻めに対峙すると子供っぽくなってしまうし、あんまししっかりさんには感じられなかったような気もする。
 受けの母は何を考えているのかよくわからない、都合のよいキャラになってしまってた気がする。

 絵はかわいいが、攻めの体型が細身すぎてイメージとあわなかった。

2008年12月17日

葛井美鳥『アフターモーニング・ラブ』

 朝起きたらとなりに売り専がねてましたがまじめ弁護士は酔ってたのかなにもおぼえていないのですが代金を請求されまして。

 葛井美鳥は受けが子供っぽくてなあ、と思いつつついつい買ってしまうのです。
 受けが家族も家もないかわいそう設定で、客をとらないと野宿だというので、マンションの鍵をわたすのですが、でも責任とれないから売りやめろとは言えないお…というわりとよくあるかんじのお話なのです。展開もだいだい予想どおりなのです。

松本ミーコハウス『恋のまんなか』

 初読作家さんです。
 絵があんまりうまくない…。お話は高校生逃避行もの…って、これって一つのジャンルなのか?と、最近気づきました。結構多いよね。
 逃避行なので、攻めも受けもかわいそう設定。
 女子にはもてるチャラいかんじの攻め、母に逃げられた父はろくでないでめったに家に帰ってこなくて、アパートの家賃も滞納しててもうほんとだめかもしれないかんじです。
 受けは学年一位で友達もいなくて、でもそれは勉強してないと父に逃げられた母がちょっとおかしくなってしまうからなのです。
 そんな閉塞感のなか、受けにガン見されてた攻めが受けに無理矢理告白させたことで、攻めの気が向いたらもてあそぶという関係に。しだいに煮詰まるそれぞれの家庭を背景に、夏休みに逃避行。

 結末はわりと簡単だったけれど、その簡単さを高校生のどうにもなんない軽さでくるんでいい感じにまとめてたと思う。数年後、は、安易だしお話としてはないほうがよかった気もするんだけど、でもそれでも個人的には、こういうお手軽なハピーエンドは、どんなにお手軽でもいいからあってくれたほうがうれしいと思ってしまいますよ。

2008年12月18日

ユキムラ『Rush!』

 野球の道をたたれて超不良高校に入ることになってしまったマジメガネ、不良少年に偶然勝ってしまったら、なんか俺を抱けとかいって迫られて云々。

 不良少年受けはかわいいのだが、初恋の刷り込みはなんかいまいちというか、初恋へのこだわりばっかりな印象で、攻めのことほんとに好きという描写があんまり感じられなかった気がした。ちゃんと好きとは言ってはいるけど、言葉でも態度でもなく、漫画なのだから描写で示して欲しいというか。これは無茶な要求…ではないと思うのだが。つまりは作者の描写の仕方の問題なのだが。
 攻めはメガネでいいし、ふつうに生活してるつもりなのに、不良少年に勝ってしまったと思われてるせいでめちゃくちゃ強いと勝手に勘違いされてくのがありがちだけど面白い。そういうクラスメイトとのエピソードとかはもっと多くてもよかった。
 全体に、なんか面白くなりそうではあるものの物足りない感じで、もったいないなあという印象だった。

 さいきんのユキムラは佐倉ハイジっぽくもあるのでは。

2008年12月20日

剛しいら『レッスンマイラブ』『レッスンディープラブ』

 バレエものということで興味をもったのだけれど、いまいちだった…二冊かっておいたのに…。

 母親にだまされて小さい頃からバレエをならってる受けっこ。くるみで王子をやることになったら、なんかケガで帰国してたロンドンで活躍中の有名バレリーノがレッスンつけてくれることになりまして云々。

 中学生の受けの一人称小説というのは、あたしは苦手なんでした。元気素直な受けそのものも、あんまりキャラとして好きなほうではないのです。

 あと攻めの先生が全然カッコワルイのもいかんともしがたい。受けに出会うまえは若い男の子つまみまくりで、うぶな子が好きとかいう感じ悪さ、受けにたいしても最初の頃はあんまり真摯でなかったぽいこと自分でも言ってるし、その後のロンドン留学関連の口出しも、これも自分でもいってるように中途半端だったし、あたまがわるいのか、受けのことあんまり大事におもってないのか、天然なのか、なんなのか。攻めとしてあまり魅力的とはいえないことだけは確かだ。熊川的な超絶プリンシパルぶりもあんまり具体的な描写ないし。

 ディープは、高校に進学した受けが不良と一緒に踊ることに、という梗概ですこし期待をとりもどしたものの、あれ?結局おどりませんでしたよね??梗概うそじゃんか。
 不良もあてうまにしてももうちょっとかっこよい見せ場とかつくってあげればいいのに。ただ出てきて退場しただけという感じで気の毒だしもったいない。

映画『僕らのミライへ逆回転』

 最近お世話になってるのがクラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~さんです。パブリックドメインとなってるクラシックの演奏データを公開されてるので、主に二十世紀前半くらい?のいろんな録音が聴けるのです。

 そんなわけで、『僕らのミライへ逆回転』を見てきました。また目黒シネマで。なんかあたしの見たい映画はだいたいそのうちあそこで上映してくれるみたいですね。あそこはちょっと時期はずした作品をやってくれるし、ほんとは1500円で二作品見られるいい映画館なのですが、疲れてしまうので続けてみたことはまだないのです。

 映画のほうは、なんか二段階くらい期待とはずれてたのですが、結論としてはほんのりいい映画だなーという感じでした。

 ちょっとイカれたジェリーは、発電所で身体に電気をあびたせいで身体に磁気を帯びてしまい、友人のマイクがつとめるレンタルビデオ店のビデオテープを全部まっさらにしてしまう。店主の不在中の不祥事に困り果てた二人は、自分達で店にあった映画を再現してテープにし、それを貸し出してごまかそうとするのだが、そのリメイクビデオが評判になってしまい云々。

 もっとおバカな映画かと思っていたのですが、そうでもなく。著作権法違反だなんて現実的な指摘が出てきたときにはびっくりしましたが(笑、そのあとの感動展開はちょっと無理くさいけれどもふつうにいいお話でした。

 でも、映画館でポスターをみてて思い出したのですが、あたしはそもそもは「ハッピーエンドにリメイク中」というキャッチコピーにひかれてこの作品に興味をもったんでした。
 かなしい映画を、勝手にハッピーエンドにつくりなおして、だいなしにしたりしあわせにしたり。そんなお話もまた面白そうではないですかね?

2008年12月21日

鬼嶋兵伍『ラブミッション@』

 短編集。
 表題作は恋愛未経験の少女漫画家に担当が疑似恋愛をさせようとするというあら?どこかで読んだかしら?
 マスクしっぱなしのプロレスラーと付き人の話は、レスラーが受けなのでよかった?
 ダメなプータローが少年に拾われて少年の父を攻めてしまう話は、少年がカッコよすぎる。
 美形東北弁モデルの話はなんというか設定勝ちなのか勝ってるのかどうか。
 親切で強くカコイイ幼なじみを拉致してまわしてしまう話はなんかドス黒い話を書きたかっただけという印象。
 ゲイカップルの倦怠期の話は短いので特になにもなし。

 全般に悪くはないけどものたりない感じで、連載ものを読んでみたいと思った。ていうか、そういえばもしかして麗人って連載ってあんましないのかな。
 あと、絵がちょっと古い…のかな。

鈴木理華『タブロウ・ゲート』3

 わーい!新刊だ!

 マジシャンのラストはおおまかにはやっぱり前作と同じ感じだったけれど、マジシャンの表情がちがってた。その展開自体はよかったんだけれど、なんか絵ではなくて構図とかがいまいちだった感じでもったいない。
 そこでアレイスターの腕ネタもでてきたのでよかった!でもなんだか今作のアレイってなんとなくサツキに冷淡な気がする…なんだか淋しい…。

 デスは元は人間体だったのか。どんな感じなんだろう。エリーと兄弟なの?っていうか、それを言うならタブレットはみんな兄弟か。
 ハイエロファントはびっくりしたけど、サツキが呼び出したらどんなキャラになるのかな。
 ていうか最後、マジシャンが…!(笑。このキャラはもとからあまりに荒木風なデザインだとは思っていたし、擬音とかもおかしかったけれど、まんま「私、残酷ですわよ」が来るとは。一瞬気づかなくて、あれ?これなんだっけ?とか考えてしまったよ。

2008年12月23日

高遠琉加『王子様には秘密がある』

 そういえば、リブレといえば、夜光花のとじこみ小説がなんと本仁戻の挿絵!だというので、小説b-Boy1月号を買ったのに、本仁絵はとじこみの表紙だけなんて読者をナメてんですか。買わなきゃよかったな…。
 リブレはかわいそうなクロエのために、超トンデモ設定の夜光花本を本仁戻の挿絵で出版してほしいのです!(笑。相性いいんではと思うんだけどなあ。

「「あの人が星嶺の“王子様”なんだって」愛らしい仕草、にこやかな笑顔に星嶺学院大学の誰もが魅了される、超御曹司・御園生美貴。キラキラ憧れの綺麗な王子様だけど、オトナの包容力をもつ年下の和廣にだけは、とっても小(!?)悪魔…。わがままだけど可愛くて、毒舌だけど上品で…そんな美貴を和廣はずっと独り占めしたくなって…。超最強のエリートツンデレも登場。一冊まるごとツンデレ純真萌えラブ。」

 …という梗概を読んでもまったく興味をそそられず、挿絵が南国ばななとはいえしかしこの梗概…と不安に思いつつ、しかし高遠琉加なので諦めて(失礼)購入。

 大学で王子様とよばれてる先輩は、家柄容姿すべて王子なのですが、実は中身はわがままオレ様なのでした。正体を偶然見てしまったせいでごはんつくらされたり家でくつろがれたりするうちに、どきどきしてきて云々。

 あとがきにもとはCP逆だったってあったけど、たしかに王子×庶民のほうが王道かもですね。でもまあ庶民×王子というか、年下庶民×ツンデレセレブというのも王道で、というか王道というよりは、ごくふつうのBLで、正直高遠琉加がこういうの書く必要あるのだろうか、と思ってしまった。

 のだけれど、それってやっぱちょっと失礼な評言だよね。あたしは悪い意味でこの作家に期待しすぎなのかもしれない。
 というのも、これまたあとがきの、かわいい本にしたかった、という文言を読んで気づいたのですが、この作家は天国が落ちてくるでうさぎちゃんvのちょうかわゆいお話を書いてた作家なのだし、そういうのもきちんと面白かったのだし、逆に観賞用愛人のような風変わり設定でも、いまいちだと感じたりしたのだし。
 つまりそもそも、あたしがこの作家に期待してたのは、変わった設定ではなく、変わった心理の・丁寧な描写、だったんだよね。ということを、最近になってやっと気づいたのでした。

 あ、えーと、お話はそんなわけで、そこそこふつうに面白かったです。が、くっついておわりなので、その後のラブラブな二人とか読みたかった。エリートで王子の行状をしかりとばす兄はちょう感じわるかった。
 …ので、後半のお話ではこの兄が主役だったのにはびっくりしましたが、こっちのほうが面白かったので二度びっくりですよ!(笑
 金持ち家の長男として期待されて成長してきた兄は、のびのび育てられてる弟にむかつきつつ、かっこいいけどぬけてる幼なじみに思われつつも、拒絶してしまい、数年後再会。という、この作家らしい不器用な受けだったので、とってもよかったのですv

 あ、うん、生きるのにも恋愛にも不器用な視点人物を、丁寧に描写する、というとこが、この作家の一番の魅力、ですね。たぶん。

2008年12月24日

綺月陣『この世の楽園』

 マヨイガでは毎年年末にその年出版されたBLのベストをきめるというひとりあそびをしているのですが、その決め方はすごくテキトウなのです。別に商業作品を網羅できてるわけでもないし、印象ばかりが先行してるので、年始めに読んだ作品はたぶん不利なのです。
 が、そんなテキトウなこの企画にもひとつだけルールがあって、すなわち「このベストに間に合わせるためだけに無理にBLを読まない」、というものです。無理にする娯楽ほどせつないものはないと思うからです。ただ、とはいっても、やはり年末になると焦ってきてしまいます。話題作とかトンデモ作品とか好きな作家の作品とかは、読んでおかないと、という気持ちに、どうしてもなってしまいます。これ↓はちょっとそんな感じでしたが、楽しく読めたのでよかったです。

 超絶わがままな坊ちゃんの教育係になってしまったエリートが、あまりに手がやけるので奔放に生きてるフリータの弟を呼んで手伝わせたら、なんか坊ちゃんは弟にはなついてしまい、あれ?なんで複雑な気分になるのかしら?という。

 そういう梗概と表紙を見て、兄→坊ちゃん←弟の3Pかなあと思ってたのですが、それであんまり期待もしていなかったのですが、評価よいみたいだったので読んでみたら、CPは違ってましたっていうか、表紙をよく見てたらちゃんとCPわかりましたね。

 というわけで、弟→兄→坊ちゃんのうえ、坊ちゃん→兄弟でした。
 兄はエリートで弟を見下しつつ、でもそれは弟をめちゃくちゃ意識してるってことで、損な性分でにぶちんなのですが、まあつまりBLの視点人物としてはよい感じかと。こういう視点人物は総受け気味が好みなので、坊ちゃんがもうちょっと兄をえこひいきしてくれたらよかった(笑
 坊ちゃんは、最初の傍若無人ぶりについてはあとで説明があったというか話の展開のキモだったのでよいけれど、それにしても兄にひどすぎたのでは。だって下僕はだれでもよかったというわけではないらしいのに、それでもなおあの態度だったの?と、ちょっと違和感。
 弟が…あんましむくわれてなくてかわいそう(涙。もっと幸せにしてあげてほしいし、兄弟がラブラブになれば弟は勿論、兄も幸せになれそうな気がする。でもなんとなく、続編もありそうかなあという気がする(ただの勘ですが。

 まあそれはさておき、この作品はデュアル攻めでもなく、ニア3Pでもなく、ほんとに3Pだというところがすごいのですが、エッチの場面も…すごかった。笑ったりひいたりしそうになったけど、みんな真面目にやっているんだよなあ…(笑。ちょっとなんというか、読者おいてきぼり感がありますが、まあむしろそれがいい、とも言える、かも。

2008年12月25日

イバラノツルヒコ『イバラノツルヒコの華麗なる日々』

 ブログの書籍化らしく、元ブログは見たことないのですが。
 ネット連載ってネットだから面白い、ってものが多いんだろうな…。
 と、そろそろ学ばなければと思いました。

和泉桂『貴公子の求婚』

 SHYノベルズの新刊がならんでるのを見て、え…?お?おおっ?おお…!と思いました。
 ペットラバーズの新作に、姫君の輿入れの続編なんて、なんて素敵なんでしょ。

 ということで、姫君の輿入れで出てきた攻めの友人の貧乏本の虫貴族・小野朝家の話。
 いよいよ財政が逼迫してきた朝家は、家人らにやいのやいの言われて、嵯峨野に住むという知性派の姫に求婚することになってしまい、いやいや嵯峨野へ向かう。事前にきいてたとおりに忍んでいったら、なんか姫に押し倒されました、と思ったらすんごい美丈夫でして。

 とりあえず、朝家がキャラ迷子…前作でのキャラと今回のキャラもなんかちがうし、天然素朴なキャラと将久を毛嫌いしてるキャラもなんかちぐはぐ。
 蘇芳も朝家に惚れてるイケメン、というのはいいけれど、時々出てくる退廃的、という表現がなにを表現したいのかよくわからなかった。隠棲中という設定だけど、なんで世をすててるのかそういえば書かれてないし、なんかよく考えてみるとこの人もよくわかんない人だなあ。

 全体的には、受けの朝家がせいぜい十人並みの容姿で「書痴」というのは面白かったが、なんかそこここに無理がきてる印象でもあった。上述のキャラ設定とかね。なんか前作でも思ったけど、感情のうつりかわりがあんまり丁寧に書かれてないというか、あまり整理されてない気がした。まあそのほうがリアリティあるともいえるのかもしれないけど。物語の展開のために、前作の攻め実親が蘇芳と比較されたり、朝家にいろいろおしつけがましかったりして、ちょっとうすっぺらいキャラになってる気もした。キャラよりも物語を優先してる印象というか。
 あと歴史物ではよくあることなんだけど、半蔀とは…とか、いきなり現代視点の解説が入るのはしらける。そのへんうまく挿絵とか入れて言葉でなく説明してくれたらなあと思う。折角ラノベなのだから、挿絵を活用したら世界観をこわさず進められそうなのに。

 ていうか挿絵なのだが、キャラ自体はイケメン蘇芳と平凡朝家はすごくピッタリだったのだが、着物がぜんぶまっしろで、手抜きすぎだ…。できれば文様を、少なくともトーンでかさねを表現してほしかった…ていうか、きちんと確認してないけど、束帯も狩衣もみな一緒だったかも…。

 …なんか文句多いけど、全般的にはふつうに面白かったのです。いや、ほんとに。婚礼奇譚集とめいうったシリーズになったみたいなので、次回も楽しみです。親王の降嫁でしたか。親王は攻めかしら受けかしら(笑、もはや嫁だから受けという判断は出来ないので、想像がふくらみまくりです。

2008年12月26日

須賀邦彦『紫紺の旗の下に』

 絵が古いな…!なんか80年代ふうだ。表紙書き下ろしはサギだなあ(笑
 三年生に一目惚れしたといって応援団にはいった長髪一年生は帰国子女で、実は小学校の同級生で、転校まぎわにキスうばわれた相手でして。
 応援団だからって長髪切られちゃうのはもったいない。時代の問題か(笑
 全般にお話も80年代ふうというか、正直あまり面白く感じられなかった…。

中村明日美子『同級生』

 そうはいいつつも、これもやっぱりいろんなとこで評価されてて気になってたのと、あと書店で少し読んだらそこそこ面白そうだったのとで、購入。

 合唱の練習中に口パクしてた優等生メガネは、実は黒板がみえなくて楽譜もよめなかったのだそうで、バンドマンのチャラ男は歌を教えてあげるとかつい口がすべってしまい云々。

 王道というよりはややありきたりか。
 チャラ男はかわいいけど、キャラとして特筆すべきことはないかなあ。
 黒髪メガネはきれいでいいのだけれど、やや心理描写が物足りない。チャラ男への気持ち、特にそのゆれうごきなんかはこういう作風ならもっと読者につたわるように書くべきなんではなかろうか。
 このメガネにかぎらず、いろんな要因で動いたり動かされたりしていく心情とその描写って、青春ドラマのキモだと思うけど、そういうのがなんかものたりない。せっかく漫画なのだから、ネーム・絵・雰囲気全部つかって心情を評言して欲しい、と思うんだけど、どれもがんばってはいるけど中途半端な感じ。別にはっきりと描かないこと自体はいいんだけど、どうもそもそもあんましいろんなことをきちんと伝える気がないテクストという気がするし、ひとりよがりな印象。

 絵は、デッサンがかわってて面白いのだが、時々二次元でくずれたデッサンでなければありえん構図とかあって、面白いではすまないようなのもあった。あと目がきれいな円形ではなく、更に不定形なのが、個人的には好きではない。

「Akinator」

 各所で話題のAkinator, the Web Geniusですが、20問程度の質問に答えていくと、頭の中で思い浮かべている人物を言い当ててくれるというおもしろいゲームなのです。
 最初の何回か、あたらなかったら「more questions」をクリックすればいいということに気づかなくてうまくいきませんでしたが、ちゃんとやれば結構あたるんですよー。土方十四郎とか三橋廉とか、マードックとかはともかくとして、まさか山中さわおがちゃんと出てくるとは思いませんでした…!(笑

 とはいえ、BLキャラは無理だろうなあと思い、海外でも出版しているらしいファインダーの標的の麻見ならばどうだ…と思ってやってみたのですが、結果、

 …オイイィィ!
 まあ麻見は無理だろうなとは思ったけれど、それより阿部さんがちゃんとわかってるってどういうことよ!(笑。それに、この無理矢理なイラストは一体…(笑
 というか、麻見≒阿部さんってことなのか?いや、単純に「sex maniac」にyesって解答したからまずかったのかもしれない…(笑

2008年12月27日

亜樹良のりかず『ハート・ストリングス』

 ヤクザ×ホスト。
 道でチンピラにからまれたときに知り合ったヤクザが店に来て云々。

 わりとよくあるホストものか。安心して読める感じ。
 この作者のコミクス買うの初めてだったかな。男らしい受けがよいですよね。攻めはちょっと顔怖すぎる時あるけど…あとがき読んでて気づいたのは、イケメン×イケメンというCPの場合、攻めを受けよりさらに男らしくしようとして顔が怖くなりがちなのかな、と思った。
 あとカラーの色づかいがいまいちというか、攻めの肌の色が微妙な時があるような。

榎田尤利『秘書とシュレディンガーの猫』

 顔もみたことない祖父が亡くなり、弁護士によばれてお屋敷にいったら喪服の美秘書と二人の従兄弟と出会いまして。祖父の遺言では、6匹の猫のうちからシュレディンガーを指摘したものに莫大な遺産をおくる、とのこと。

 話の大筋は面白かったのだけれど、ペットラバーズなので、シュレディンガーが猫の名前だとわかった瞬間にネタはぜんぶバレバレで、そしてこの作品はネタを知らないで読むようにつくってあるので、それはちょっと無理でしょう、と思いました。シリーズものなのだから、読者にネタがバレてること前提で書いてくれたほうがよかった気がする。

 キャラがなー。
 攻めは駆け落ちした両親との苦労生活から、金融会社社長になった成り上がり系傲慢攻め。なのだが、まあ秘書に惹かれていくのはいいにしても、最初の頃の傲慢ぶりが後半ではまったく出てこず、ありきたりな受け一筋の攻めになってたのは違和感があった。秘書に惹かれたことで成長した、ということなのかもしれないが、もうちょっと丁寧に描写してほしかった。
 秘書も過去のつらい経験プラスかわいそう展開なのだけれど、なんかペットラバーズの二作目もそうだったけれど、最近設定がやや極端に走っている気もする。面白いけれど、ちょっとあざといというか。そんな秘書もまたよくわからんというか、すべてを受け入れる、というようなキャラ…なのか?攻めの信じられなさは受け入れてやれなかったの?最後のあたりもややわかりづらい気が。全般に、人を信じられない猫のようでありながら、すべてを受け入れる、というのがどういうことなのか、作者もあまり考えずに書いているような印象で、こちらももう少し説明がほしかった。

 そんな感じで説明不足だなあという印象があったのだが、モブキャラも同様で。
 二人のいとことか、無駄にキャラ濃いわりに中途半端だった気も。一番年長で資金難の会社社長は、そんなわけで前半のイライラぶりはともかく、ふっきれたあたりからいい感じだったので、最後のほうではもうちょっと出てきてほしかった。のんびり大学生も、あれだけ出張ってたのだから、もうちょっと奥行書いてもよかったと思うし、メイド少女とのその後も気になる。
 あと、今回オーナーが初登場で、これまた出てきた瞬間にオーナーだろうなあと見当がついていたんだけれど、祖父とはどういうつながりがあったのかとか、もう少しは書いてもよかったんじゃ。
 いろんなところで描写不足なのは、キャラが多いせいなのかもしれない。ただ、一族再構築の物語という側面からは、こういう脇キャラは必要ではあったと思うけれど。

 イラストがやはりいまいち。
 タイの剣先のラインとジャケットのラインが一致しているとことか、なぜ?と思ってしまう。講談社フェーマススクール的な意味で。
(追記:違った、タイとシャツのラインでしたね。

2008年12月29日

桜城やや『ねえ、先生?』

 生徒×先生で、生徒は元カノの弟。先生はゲイを自覚して女性とは無理でしたので。
 王道系のお話で、この作者らしい年下がんばるわんこ攻めと、困った顔の大人受けだったので、安心して読める感じ。特筆することはないけれど、確かなクオリティの生徒×先生というか…(笑

斑鳩サハラ『Pretty Baby 3』

 メガネ超美形超セレブ生徒会長×なぜかセレブたちから愛されまくりの凡人最終巻。
 ていうか、まだ文化祭やってなかったのか…。文化祭では、実行委員長やらされてる受けが実行委員たちから仕事を認められた描写があって、拍子抜けしつつもまあいいかと思ったが、委員達から愛されまくりになってんのがおかしい。会長の兄たちは、会長にそっくり設定もベタだし受けへの横恋慕もベタだしあげく教育実習にくるとか。ということもあり、三冊目が一番王道だった気がしたなあ。ていうか、釣りが趣味設定はなんか遠く彼方な気が…。
 後半のおじいさんに呼ばれて会長実家に行き、お兄さん達にとりかこまれる話もベタでよかった。しかし、ほんと会長のやってることは「躾」だよなあと。「あんよ」はもう出てこないのかと思ってたら最後に出てくるし(笑

 しかし、これで…斑鳩サハラの五ヶ月連続刊行シリーズを全部買ってしまった。

2008年12月30日

ユキムラ『落ちぶれ紳士に愛の唄』

 ユキムラのコミクスは結構買っていなかったのだなあ、と。

 菓子職人×デパートづとめ。
 デパートで催事担当したいリーマンが、なんか年下でマイペースな菓子職人になりたい青年と出会ってなんか惹かれるんですがパリに行くとかゆうので勝手に傷ついて傷つけてさよなら、数年後に新進のパティシエになってた青年にスイーツフェアに出てくださいとお願いするのです。
 ユキムラっぽい、現代が舞台なのになんだかふわふわファンタジックなふんいき、な気がしました。リーマンのエゴとか、再開後の傷ついたパティシエの対応とか、いたいたしくってよいです。

『b-Boy Phoenix 15』

 執事特集。8割本仁戻のため、1.5割円陣闇丸のために購入。

 本仁戻の華族×ドイツ人執事が…すげえ。耽美だ…!!ガチな耽美さだ。なんかこういうの久々なのでは。
 円陣闇丸は、微妙に執事をはずしてるけど、やはりこの人の漫画好きだなあ。
 池玲文はなんかあんまり絵があれなのだが、面白かった。
 剣解も面白いけど、あんまりハッピーでなくてかわいそう。
 天城れのは、最近ますますライトになっているような気も。前からだっけか。

 ていうか、次回は変態特集て…またダイレクトな特集を…。
 執筆陣があんまし好みではないのだけれど…。

三日目。

 ということで、恒例の冬祭りにいちきましたv
 結構のんびりめに出たのですが、十一時前くらいに入場できたし、考えてみたらシャッター前サークルは少年文化しか行かないし、これくらいで充分なんですよね。

 その大和名瀬さんは、便利屋さん×専務で面白かったのですが、ちんつぶも進めて欲しいなあとわがままを。
 鳥人ヒロミさんは五岩だなんてまさか作家ご本人が公式CPくずしだなんてガチムチCPだなんて…最高です…!!(笑。げっそりして逃げてく写真屋さんがよいです。
 はじめてかもしれないと思いつつ明治カナ子さんのスペースにいったら、三村家本があってとってもうれしかったのですが、そして内容もすんごいよかったというか、よすぎるというか、これって是非本編にくっつけるべきだったのでは…!?というくらいのクオリティ(マヨイガ比)で、なんかうれしくもとまどう。しあわせすぎてこわい敏はかわいいがそれはともかく、最後の弓のカラスの話とか、本編に入れて欲しかったなあ。
 本橋馨子さんは、やはり第三の帝国が新刊で出るともうそれだけでうれしくなってしまいます。
 大竹直子さんは、予科練本が出版されるそうですんごい楽しみ。
 他にもいろいろ、なのだけれど、なぜか今回漫画本しか買わなかった。

 厚着してたからか年のせいなのか、なんかすごい疲れたので早めに出て、後輩とごはんたべて帰りました。

2008年12月31日

★2008下半期・BLコミックベスト10

 恒例のひとりあそびですv
 …わー。なんか偏ってるなあ…(笑。好き作家を複数作選んでしまうのは、もはやいつものことにしても…あんまり新しい作家さん読まなかったのかなあ、と反省。でも大和名瀬が面白くて/あたし好みだと、なんだか安心できます。
 来年からは、半期ではなくて通年で考えようかなあとも思ってます。でもそうすると、更に特定作家に偏るかもしれないですね。

 再刊作品も入れてますが、寿たらこ『GARDEN』本仁戻『サンビカ』ははずしてます。初出の雑誌があんまりBLではないのと、どっちもあたしのなかで殿堂入りしてしまう作品集なので、他の本とおんなじ枠内で評価できそうにないからです。どっちも普遍的に大好きな作品集なのです。

 上半期はこちら、小説版は夜にupする予定です。

★2008・BL小説ベスト10

 ということで、暮れもおしせまってまいりまして、BL小説ベストです。
 小説は年間バージョンですが…、これまた漫画以上に偏ってますね。なんかあんまり企画する意味ないかな…(笑。
 あ、ついでにいちおうルールの確認です(いちおうはルールと確認とにかかってます。2008年にBLレーベルから出版された単行本のうち、あたしが読んだものが候補です。評価の基準は、面白いかどうか萌えるかどうか。再刊でもキニシナイ!

 次点は、和泉桂『貴公子の求婚』高遠琉加『王子様には秘密がある』ごとうしのぶ『誘惑』です。

 ということで、今年もマヨイガをご覧くださり、ありがとうございました!どうぞよいお年を!