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2011年02月20日

サイト開設しました。

 というわけで、やっぱり星矢は別館をつくることにしました。どんどん増えていく下位ディレクトリ…。
 それはさておき、まだ原作しか読んでいないので原作のみ、黄金特に蟹魚メイン、りりしかわゆい魚たんに萌え、蟹をカッコよくねつぞうし、どちらかといえば蟹が皆に愛されてる感じの、そんな気色の悪いサイトです。
 あんまし更新頻度は高くならないとは思いますが、とりあえずマヨイガでアップした小説を手直ししておいてますv今は山羊蟹友情ものを書いていますvすでにカオスの予感がしますv
 ところで、トップ絵の魚たんの髪をどシアンに塗りながら、マイねさるサイト・BOOTSTRAPさまを思いだして切なくなりました。お帰りをお待ちしつつ、頑張りますv

GOODDREAMS
GOODDREAMS

 むこうにも書きましたが、サイト名はもちろん忘れられた僕の夢、僕以外の誰が見れる~のピロウズグッドリからですv優しい曲、優しいアルバムだと思いますv

2010年06月25日

「メロドラマ」8

 薄青い石は大きすぎ、周囲をかざる金属も装飾過多で、繊細さが持ち味のこの石には不釣合いだ。一体デスマスクは、どこでこんなものを見つけてきたのだろう。更に、どう考えてもこれは女物だ。
「む、……これ、これは……」
 アフロディーテはつい妙な声を出してしまい、こほ、と空咳をした。
「…… きれいだ」
 少なくとも、石の色は。
 いや、石自体は相当によいものだろうと思われた。冗談や酔狂で買えるような値段ではないはずだ。それに、南海の色をしたアクアマリンは、アフロディーテの眸の色にも似ていた。アフロディーテはそっと指輪を取り上げると、水色の石にきらきらと光を反射させた。
「これは、わたしの誕生石なのだ」
「知ってる。おれはそういうのわからねえから、ムウに聞いた」
 見上げれば、デスマスクは神妙な面持ちでアフロディーテの反応を伺っていた。
「デス……」
 アフロディーテは立ち上がり、膝からナプキンが滑り落ちた。
「デス、デスマスク。ありがとう。すごくうれしい」
 指輪を握りしめたまま、彼の肩にしがみつく。おずおずと腕が背中にまわされて、催促するようにジャケットの襟をひっぱると、ぎゅっと力強く抱きしめてくれた。アフロディーテは広い胸に頬ずりをして、ぎゅっと彼の背に腕をまわして抱き返した。
「なんで泣くんだよ」
「……大好きだ」

 ぱちぱち、と控えめな拍手の音が耳に届いたかと思うと、やがてそこらじゅうからさざめくような喝采が起こった。涙を指で払って店内を見わたせば、リストランテの中は、スタンディングオベーションの様相だった。客も店員も、クオーコまで厨房から出てきて、誰もかれもがこちらに向かって柔らかい微笑みを送り、手をたたいているのだ。
「これは……」
「アウグーリ、そしてグラツィエ。素敵なドゥランマ・リリコを見せていただきました」
 すぐ隣りのテーブルから、落ち着き払った声が聞こえた。振り返れば、妻らしき婦人を連れた初老の男が、満面の笑みを浮かべてアフロディーテに話しかけていた。
 アフロディーテは恥ずかしくなって、デスマスクの胸に手をおいたまま一歩離れた。きょろきょろと周囲を見回すと、先程美女を抱きしめていた伊達男が、頬を赤黒く変色させてこちらに拍手を送っているのが目に入った。女の姿は見当たらない。あの色では、おそらく平手ではなく拳の仕業であったことだろう。ともあれ、アフロディーテがデスマスクしか目に入っていなかった間に、何らかのどんでん返しがあったらしい。
 一体男と女の間に、どのような会話がかわされたのだろうか? きっとあの後、どうしようもない陳腐でくだらないやり取りが更にくり返されたのだろう。きっと、そういうものなのだ。
 アフロディーテはそう考え、てのひらの中のアクアマリンに目をおとした。
 たいそう趣味の悪い、そしてとても美しい指輪だ。それでいいのだ。そういう物語なのだ。デスマスクが本当はどう思っているのか、何を考えているのか。それは永久にわからない。けれど――
「今日は、最高の誕生日だ」
 きっと、そういうものなのだ。
 アフロディーテは顔をあげ、いとしい男の目をしっかりみつめ、そしてにっこり微笑んだ。


ーーー
 …オノマトペから小説始めちゃ行けないって、編集長の授業で言ってたっけ(笑
 なんかあたしの書くデスマスクはすごく違う…なんかただの不器用人間だな…もっとダメ人間じゃなくっちゃ…!ていうか、タクミくんに慣れてきてしまった最近では、デスアフロが一番書いてて恥ずかしい…!

 ところであたしは基本的に一次創作ができないので、もっぱら二次創作になるわけですが、自分が面白くないものというか、まあより正確に言えば、自分が萌えないものを書いちゃいけないんだな、と最近(といってもここ数年単位ですけど)やっと気づいてなんかいろいろ腑に落ちた。きっと一次創作も同じなんだろうな。
 そしてそれってつまり、恥ずかしい場面も書かなきゃいけないってことなんだなあと思うのです。

2010年06月24日

「メロドラマ」7

「――ったんだよ」
「え?」
 ほとんど聞き取れなかった呟きに首をかしげ、アフロディーテは問い返す。
「デス、なんて?」
 デスマスクは無言のまま脇を向いていたが、ややあってゆっくりとこちらに向き直り、じっとアフロディーテをみつめた。
「これで……お前の気を引けるかどうかわからねえが」
 そう言って、すっと手を差し出す。視線を下げたアフロディーテは、目をみはった。
「やるよ、アフロディーテ」
 デスマスクのてのひらには、細い金色のリボンが巻かれた黒い小さな箱があった。
 アフロディーテは言葉を失って、まじまじとそれを見つめた。
 どう見ても、装身具の入った化粧箱だ――これを、自分に?
 プレゼントの要求までは流石にしなかったので、これはデスマスクが気をきかせてくれたのだろう。だけどそれが、しかも。それが、装身具だなんて。
 慌てて見上げると、男は照れたような怒ったような顔で、そっぽを向いていた。
「これ、を……くれるのか、わたしに」
「そう言ってるだろうが」
「……ありがとう。開けても構わないだろうか」
 吐息のような返答を待たず、アフロディーテは箱を受け取り開きにかかった。箱の形状からもしやと思ったが、やはりリングだ。自分の心臓の音がうるさくて、外の音がよく聞こえない。震えそうな手を叱咤してリングケースを取り出し、おそるおそる開ける。

 それは、確かにまさしく指輪だった。
 しかも、たいそう趣味の悪い。

(つづく)

2010年06月16日

「メロドラマ」6

 唐突な問いに戸惑って、つい口をつぐんでしまう。
 そんなこと、考えてみたこともなかった。
 アフロディーテは、デスマスクと二人で過ごせるだけでうれしかったし、退屈な思いなどしたことは一度もない。けれど――
「シュラでも誘えばよかったな」
 今にもため息をつきそうなデスマスクに、アフロディーテは焦った。誤解を与えてしまった気がした。デスマスクは膝においたナプキンをとると、くしゃりとまるめた。アフロディーテは急いで口を開いた。
「デス、わたしは」
「無理しないでいいぜ。人の気持ちってのは変わるものだからな」
 デスマスクはナプキンをテーブルに置き、ふっと自嘲するように笑った。
 その表情で、アフロディーテは気づいた。
 きっと逆なのだ。
 きっとデスマスクの方が、アフロディーテに飽きたのだろう。
 それはそうだろうと思う。アフロディーテの取り柄といったら、この顔と、あとはせいぜい特技のガーデニングくらいだ。イタリア語もなかなか上達しないし、デスマスクが聞いてくれるからと、わがままばかり言ってしまった。呆れられるのも、当たり前だ。こうなるのがわかっていたのだ……怖かったのだ。

 だから、彼を開放しなければならない。

 アフロディーテはテーブルに手を置いて、心持ち身を乗り出した。
「デスマスク」
「つまらねえ男で悪かったな……お前をがっかりさせてよ。でも、」
 デスマスクは立ち上がり、ゆっくりとテーブルをまわってアフロディーテの横に立った。アフロディーテの視線はそれを追って見つめたまま、男を瞬きもせずに見上げる。デスマスクは視線を逸らし、口の中で呟いた。


(つづく)

2010年06月04日

「メロドラマ」5

 用事と気分転換とをかねて、旅に出ておりますv

---

 ため息をついた男は、一歩を前に踏み出した。女の耳元に唇を寄せて、二言三言、囁く。女は床をじっと見つめたまま動かない。ややあって、その肩がまた震え出したかと思うと、女は床に向かって叫んだ。「ばか……ばか! あんたなんて、嫌いよ!」「アンジェリカ、本当だよ。信じてくれるだろう?」「あんたなんか……!」新しい涙をこぼれさせながら女は震える声でそう言い、そして男の広げた腕に飛び込み、彼を抱きしめた。周囲からほうっという溜息と安堵の囁き、呆れたようなざわめきが起こる。アフロディーテは考える。
 一体男は、女に何と言ったのだろうか?
 きっと、どうしようもない陳腐でくだらない言葉でも囁いたのだろう。
 アフロディーテには、なんとなくわかる気がした。女は何でもよかったのだ。どんな言葉でも、男を信じるための言い訳が欲しかったのだ。唐突なこのメロドラマは、始まりと同じように唐突な大団円にて終わった。

「アフロディーテ」
 テーブルの向こうの男の声に、アフロディーテははっと振り返った。あまりじろじろ見ないように気をつけていたのに、行儀の悪い事をしてしまった。
「すまない、つい」
「気になるのかよ?」
「いや、別に……」
 視線で示されて、男女にまた視線をやる。衆人環視の中、女はまだ男の胸で嗚咽している。男は余裕の微笑で女の肩を抱いて、もつれからまったブロンドに優しくキスなどしている。本当に伊達で、下らない、駄目な男だ。けれど、少し羨ましくもある。嘘でも構わないと思えたのだろう女も、嘘を重ねても女を手放さない男も。
「アフロディーテ?」
「……あ。すまない」
 デスマスクのふたたびの呼びかけに、アフロディーテはあわてて振り返った。男はからになったカップをソーサーに戻した。
「おれと二人じゃ、やっぱ退屈か」
「え?」

(つづく)

2010年05月29日

「メロドラマ」4

 今日はアフロディーテの誕生日だった。
 誕生日を祝ってほしいと言ったら、デスマスクはしばらく妙な顔をしていた。自分からお祝いを要求するなど、流石に厚かましかっただろうかとはらはらしていると、何をしてほしいんだと問い返された。嫌味のつもりではなく、それは単に男が誰かの誕生日を祝ったことも、自分のそれを祝ってもらったこともないからなのだった。アフロディーテはしばし考えた末、男の生まれ故郷の島にある有名なリストランテの名前をあげた。以前テレビで見て以来、一度は訪れてみたいと思っていた店だった。男は軽く頷いて、今日のディナーをセッティングしてくれたのだった。
 今日の午後、いつも通り洒落ていて、いつもより少しストイックな、そして当然ながらイタリア製のスーツできめて、デスマスクはアフロディーテを迎えに来てくれた。
 リストランテは評判通り、料理は旨く、ワインもよいものを揃えていて、雰囲気のある内装もサービスも申し分なかった。そしてデスマスクは、ディナーの間中、いつも通りよく気を配ってくれた。アフロディーテの希望を聞いて、すべてその通りに差配してくれて、だから文句のつけようがない、理想的な誕生日の夜だった。
 だから、アフロディーテはここしばらく考えていたことを、実行に移すことを心に決めた。

  恋人にしてくれるとは言ったけれど、デスマスクは自分から動くことはなかった。けれど最初に宣言した通り、アフロディーテが言った通りに彼はなんでもしてくれた。だからそれがうれしくて、ついつい甘えてしまった。当たり前の恋人同士のようにデートをしてもらえばうれしくて、けれど別れたあとはいつも虚しくなった。なぜ彼が自分のわがままに付き合ってくれるのかもわからなかった。
 本当なら、嫌われたり飽きられたりする前に、潔く身を引きたかった。もう十分だと礼を言って、彼を開放すべきだと思った。まるで夢のような時間がうれしくて、あと少しと思ってずるずると日を過ごしてしまったのだ。
 自分の誕生日までこうして一緒に過ごしてもらって、申し分のないデートをしてもらって、だからきっともう十分なはずだった。これ以上わがままを言ってはいけないと、アフロディーテはそう思った。彼の方からアフロディーテを欲っしてほしいなどというのはしてはならない要求だし、願っても無駄なことだ。人の心までは願えないことは、よくわかっている。

(つづく)

2010年05月26日

「メロドラマ」3

 ちょっと疲れてます…のでデスアフロばかりで興味のない方はすみません!というかデスアフロに興味のある人はむしろ少ないとは思う!

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 女はあふれる涙にも頓着せず、男を睨み続けている。女の化粧については詳しくないが、涙にもにじまないなんて、最近のメイクは随分発達したものだ。濃い睫毛からこぼれる涙も、ゆがめられた眉も女の美しさをそこなうことはなく、一種気高ささえ感じる。「俺を信じられないのかい?」「当たり前でしょ!」とったままの腕を引き寄せようとした男は女の激しい抵抗に対して、弱ったとでもいうような色っぽい笑みをうかべた。「なあ、おい……」「もうあんたのことなんて、信じられないわよ! 信じられるわけないじゃない!」
 女の悲痛な声に、ついこちらの胸まできりりと痛む。俯いて嗚咽しはじめた女の様子に、男も流石にばつが悪そうに黙り込んだ。広くもない店内に、女のすすり泣く声だけが響く。最早客もカメリエーレも食事や給仕どころではなくなって、けれど席を立つこともできずに、固唾を飲んで男女を見守っている。俯いたまま肩を震わせ続ける女をしばらく眺め、やがて男はやれやれ、といった様子でため息をついた。あ、とアフロディーテは思う。おそらく、これで終わりだろう。絶対的なカタストロフの予感があった。
 なぜなら、自分にも身に覚えがあったから。今日で終わりなのだ。

 ティラミスを食べながら、ちらちらとそちらを伺っているアフロディーテや周囲の客とは対照的に、男はのんきにドルチェに集中していた。ふと顔を上げて、落ち着きのないアフロディーテの様子に首をかしげている。
「口にあわないか?」
「いや、そんなことはない。とてもおいしい」
 アフロディーテはにっこり微笑んで、残りのティラミスを口にはこぶ。ティラミスは濃厚で香りたかく、おいしかった。
「デス」
「ん?」
 エスプレッソの砂糖をかきまぜながら、アフロディーテは改まって口を開いた。
「今日はありがとう」
 このエスプレッソを飲み終わったら、デスマスクに別れを告げるのだ。

(つづく)

2010年05月24日

「メロドラマ」2

 白ワインが飲みたいというアフロディーテの要望に、デスマスクはワインリストをざっと見わたして、地産の白を選んでくれた。それはアフロディーテが好む辛めの飲み口で、白身魚の香草焼きにもよく合った。プリモ・ピアットのイカをつかったリングイネもおいしかった。イカの風味を活かしたソースがやや平たいパ スタにしっかりとからんでいて、濃厚なポモドーロが口中にふわっと広がった。素直に感想を述べるアフロディーテに、イカは近海で採れたものだと、男が誇らしそうに説明してくれた。
 男は故郷の島を愛し、自分が賞賛されることよりも故郷への賛辞を喜ぶたちだった。アフロディーテはそれが好ましく、少し切なく、そして少し妬ましかった。シチリアは男の内部のごく私的な場所を占めているらしかったし、アフロディーテはそれは自分が立ち入ってはいけない領域かのように感じていた。男にオーダーを任せていたのは、そのせいもあったかもしれない。
「デスはおいしいものをよく知っているのだな」
「シチリアーノだからな」
 デスマスクは再びにやりと笑った。アフロディーテはまた少し切なくなったが、そんな男の顔がやっぱり好きだと思った。

「俺がどうして最低なんだい、アンジェリカ?」「とぼけないで! また嘘をついたじゃない」「嘘? 何のこと?」「あんたの嘘なんて、お見通しなのよ! もう騙されないわ!」本人は大真面目なのだろうが、男にむかってまっすぐに指を突きつける女の様子は観衆にはやや芝居がかって見えて、ここはコロッセオだったかと錯覚しそうになる。黒いドレスは大胆に白い背中を晒し、舞台女優と言っても通るほどに見栄えがしている。
「君、何か勘違いをしてるんだろ」男は悠長にタオルをたたみ直しながら答え、ひょいと眉さえ上げて見せる。女はたやすくも激昂し、ふたたび右手を振り上げた。つややかに巻かれたブロンドが宙を舞い、ぶんと音がしそうな勢いで振り下ろされた白い優美な腕は、男のがっしりとした掌に収まってしまう。「何よ……殴らせなさいよ、せめて!」「君の手の方が痛いだろ? こんな細腕でさ」「う……っ、っ……!」
 マスカラをたっぷり重ねた睫毛の隙間から、ついに涙がこぼれ落ちた。

(つづく)

2010年05月21日

「メロドラマ」1

 ほんとはデスアフロサイトをつくろうと思っていたのですが、なんかやんなきゃいけないことがいっぱいあるのでやっぱりマヨイガで。

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※蟹魚です。

 ぱしっ、という乾いた音に目をやれば、丁度場面は白ワインが男の頭にぶち撒かれる瞬間になっていた。流線型のワイングラスから金色の滴が飛び散り、ほんの刹那の芸術をつくり出して消える。
 暗い色の髪はみじめに頭にはりつき、ワインの洗礼の直前うたれたのであろう頬はやや赤みを帯びて、こんな時でも男は伊達で美しかった。前髪を垂れる水滴を見つめふっと笑い、新たに頬にしたたるワインを右手ではじき、そのまま前髪をすき上げる。首をくっと反らせて振ると、髪の先からまた幾許かの滴が絨毯に降った。
 余裕の見られる男の仕草に、空になったグラスを持ったままの女は、肩をふるわせながら柳眉をさかだてている。ステムが折れるのではないかと思うくらいに強く握り締めるその手もまた、そんなに力を入れては壊れてしまうのではないかと思うくらい白くたおやかだ。赤く染めた爪の先まで繊細で、こんな情景に配されてしまうには少々痛々しくもある。
 男が口を開きかけたとき、カメリエーレが早足で歩み寄り、タオルを差し出しながら声をかけた。「お客様、いかがなさいましたか」「ちょっとした行き違いなんだ。ああ、悪いね」流暢なシチリア語で返し、タオルを手渡した青年ににっこり微笑みさえした男を、女はすさまじい形相で睨みつけている。のんきにもタオルで顔をぬぐい出した様子に、女は美しくルージュでいろどった唇をゆがめて英語で叫んだ。「このろくでなし! あんたみたいに最低な男、見たことない!」

「きのこ」
「え?」
「きのこ、平気だったか」
 アフロディーテは急いで振り返り、男の言葉を考えた。からになっている手元の皿を見下ろし、ああと思う。男が選んだセコンド・ピアットの白身魚には、他の野菜と一緒にポルチーニ茸のつけあわせが載っていた。
「ああ、おいしかった。わたしは何でも好きだ」
 今日のオーダーはすべて男に任せていた。アフロディーテはいくつか好みを伝えただけだ。イタリア語はまだ勉強中なので、特に外出先では男に頼り切りになってしまいがちだ。自分のために男があれこれ考えてくれるのが殊の外楽しい、ということに気づいてしまったからでもある。
「トマト味のパスタもよかったし、ワインもとてもおいしかった」
 素直なアフロディーテの言葉に、男は一瞬目をしばたたかせてから、にやりと自慢げに笑った。
「なにしろ、シチリアーノだからな」
 男はそううそぶいた。

(つづく)

2009年11月17日

「新世界」7

 …それくらいならおれにも可能だ。それに薔薇に接吻するってのは、ガーデナーの楽しみのひとつとして理解できる。
 おれは座ったままの薔薇にの上にかがみ込むと、軽いキスをおくった。
「これでいいのか」
「…そういうの、じゃなく」
 うっすらとひらいた唇から、吐息が催促する。おれは黙って深いキスをした。
 ゆっくりと顔を離すと、薔薇はまた息をついた。
「満足かよ?」
 おれの問いかけに、薔薇はまたゆるゆると俯いた。
「…私は自分で思っていたより、欲深い人間だったようだ」
「何だよ、他にしてほしいことがあるなら言ってみろよ」
 ため息まじりのおれの言葉に、薔薇はしばらく黙っていたが、やがて意を決したように顔をあげた。凛と涼やかなまなざしに、圧倒されそうだ。クソ。
「私は、君に…好かれたい」
「別に嫌ってねえよ」
「私を…愛してほしいのだ」
「愛して? おれと寝たいってことか?」
「そうではない…いや、それも含むのか?、かもしれないが」
「わかんねえよ。もっと具体的に言ってくれ、何をすればいいのかおれにはわからないから。おれがおまえを愛するように、おまえがおれに指示をするんだな」
 薔薇はわけがわからない、という顔でおれをまじまじと見た。
「それで、愛と言えるのだろうか」
「知らねえよ、愛ってなんだ? おれは知らない――わからない。でも、」
 おれは初めて、自分から薔薇の髪に触れた。さらさらと音をたてて指のあいだをすりぬけ、かすかな香りだけが残る。こんな、こんな薔薇を、美しい生き物を、おれが…なんだって? 何をするって?
 恐ろしい。途方もない。正直、逃げたい。
 だが――目の前の薔薇に、泣きそうな顔をさせとくわけにはいかないだろう。
「でも、お前は知ってるんだろう、『アフロディーテ』。…お前がおれに教えろよ」
 なにしろ、長年丹精してきた薔薇だ。
 冥界で、最後の時まで大事に抱いていた薔薇だ。
 おれのせいで、おれみたいなどうでもいい人間のせいで、薔薇が泣くなんてことがあっていいはずはない。

 そんなわけで、相変わらずのサンクチュアリで、おれは薔薇の世話を続けることにした。今度は言葉を話す薔薇の願いをかなえてやるという、一風かわったガーデニングだ。
 その世にも珍しい薔薇の名を、愛の女神と同じアフロディーテという。

---
 デスアフロ難しいな!
 自分でも末尾会話が飛びすぎだと思いますが、半分はあたしがグダったからで、半分はデスアフロどっちもいっぱいいっぱいだからなんだと思う。って、言い訳がましいですが。
 なんというか、あたしの中で、デスがアフロに惚れてるのは/そのうち惚れるのは当たり前なので(だってアフロは美人だしデスはアレだし)、むしろそれを前提として、アフロがデスにめろめろなとこが書きたい/読みたいみたいですね。そんで、デスはかわいそう攻めがいいのです(笑、新ジャンル。
 そんなわけで!読んでくださってありがとうございますv(読んでくださる方がいらしたかどうか…(汗

 原作面白れぇー。今双魚宮まで来た。

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