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[ 二次/星矢 ]

「メロドラマ」3

 ちょっと疲れてます…のでデスアフロばかりで興味のない方はすみません!というかデスアフロに興味のある人はむしろ少ないとは思う!

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 女はあふれる涙にも頓着せず、男を睨み続けている。女の化粧については詳しくないが、涙にもにじまないなんて、最近のメイクは随分発達したものだ。濃い睫毛からこぼれる涙も、ゆがめられた眉も女の美しさをそこなうことはなく、一種気高ささえ感じる。「俺を信じられないのかい?」「当たり前でしょ!」とったままの腕を引き寄せようとした男は女の激しい抵抗に対して、弱ったとでもいうような色っぽい笑みをうかべた。「なあ、おい……」「もうあんたのことなんて、信じられないわよ! 信じられるわけないじゃない!」
 女の悲痛な声に、ついこちらの胸まできりりと痛む。俯いて嗚咽しはじめた女の様子に、男も流石にばつが悪そうに黙り込んだ。広くもない店内に、女のすすり泣く声だけが響く。最早客もカメリエーレも食事や給仕どころではなくなって、けれど席を立つこともできずに、固唾を飲んで男女を見守っている。俯いたまま肩を震わせ続ける女をしばらく眺め、やがて男はやれやれ、といった様子でため息をついた。あ、とアフロディーテは思う。おそらく、これで終わりだろう。絶対的なカタストロフの予感があった。
 なぜなら、自分にも身に覚えがあったから。今日で終わりなのだ。

 ティラミスを食べながら、ちらちらとそちらを伺っているアフロディーテや周囲の客とは対照的に、男はのんきにドルチェに集中していた。ふと顔を上げて、落ち着きのないアフロディーテの様子に首をかしげている。
「口にあわないか?」
「いや、そんなことはない。とてもおいしい」
 アフロディーテはにっこり微笑んで、残りのティラミスを口にはこぶ。ティラミスは濃厚で香りたかく、おいしかった。
「デス」
「ん?」
 エスプレッソの砂糖をかきまぜながら、アフロディーテは改まって口を開いた。
「今日はありがとう」
 このエスプレッソを飲み終わったら、デスマスクに別れを告げるのだ。

(つづく)

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