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[ 二次/星矢 ]

「新世界」2

「オリーブ、パルミジャーノに、キャンティクラシコね、まー悪くないね、悪くないよ」
「ああ、こんなもんだろう。碌でもないイタリアワインしかないのはしゃくだが、今日は我慢しといてやる」
「ま、シチリアワインには劣るけどよ、悪くないぜ。殊にここの農園のは悪くない」
 くるくるとソムリエナイフをまわすおれに、シュラはきれいに磨き上げたグラスをテーブルの上にふたつならべながら苦笑している。
「随分ご機嫌だな」
「そりゃな、久々だからな。ほら、とれよ」
 赤い液体を勢いよくそそぎ、シュラが手にしたグラスに、自分のグラスをぶつけて行儀のわるい音をたててやった。
「サルーテ!」
「サルー!」
 二カ国語で唱和して、一気にあおる。
「悪かないだろ?」
「…悪くないな」
 久々だからな、とおれの言葉を繰り返して、シュラはめずらしく歯を見せて笑った。
 何しろ生き返ってから一杯目のワインだ、うまくない訳がないのだ。
 同い年ということもあって、山羊座のシュラとは死ぬ前からそこそこ親しい付き合いがあった。同い年で黄金聖闘士、それになによりスペイン出身のやつとシチリア出身のおれは、アンチフランスワインの同士なのだ。
 生き返ってから今日で三日、さまざまな用事はまだほとんど片付いていないのだが、シュラとおれは示し合わせて昼食を一緒にとっていた。昼食というか、メインはむしろ酒という感じだが。
 オーブンにはおれの手製のカネロニを入れてあるし、シュラの倉庫に死ぬ前から入ってたオリーブのびんは賞味期限に間に合ったし、ワインはうまいし、風は気持ちいいし。気のおけない友人とのくだらない会話も心地いい――まあ、ここに帰ってきたのもそう悪いことでもなかったか。おれは気分良く杯をかさねて、たぶんそこそこ酔っぱらっていた。


(つづく)

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