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2007年11月01日

小林典雅『老舗旅館に嫁に来い!』

 引きぎみのタイトルで挿絵もニガテな漫画家だったのでスルーしていたのですが、「そういう」作風の作家らしいので興味を持ち買ってみた、のだが…うーん、結論(?)から言うと、後半は飛ばし読みした。

 老舗旅館のあととりの旅行代理店勤務×日本文学を学ぶ留学生。
 実家で不幸があり、旅館に戻って働いてたら受けが心配してやってくる。攻めが父に結婚して跡をつげとか言われたところに、受けがわりこんで女将修行をすることに。日本文化大好きだけどやっぱりアメリカンな受けは、偏屈な攻め父、攻めの婚約者と言われている女将志望の幼馴染などとの攻防の生活に。

 コメディ作家とコメディが得意な作家はイコールではないんだな、と思った。主に文化の違いからくる受けのリアクションは、なんだか古くさいステロタイプの〈外人〉(〈外人〉という呼称の差別性が一般に理解されておらず、外国人が日本のこういう部分に触れたら驚いたり喜んだりするもんだろうというバイアスが今よりもキツかったころのイメージとしての外国人を、ここでは〈外人〉と表記しています)という感じで、別に面白いと思えなかった。なんか古いラノベみたいなノリという印象。
 そのせいもあって受けのキャラ自体も、負けん気があって健気な頑張り屋さん、という感じだけであまり魅力が無い。一方の攻めも、受けが好きでちょっと嫉妬したりもする、というくらいしか印象に残っていなくてとくに面白みのない性格だなあと思ってしまう。あと攻め父とかも偏屈すぎ。
 そんなわけで、コメディ部分にもキャラクターにも惹かれず、また物語自体も修行してるだけなので、あんまり面白くなかった。というか、ギャグもキャラの心情の揺れも物語の展開も、予測の範囲を超えないなという印象。悪い意味でのベタさがあるというか。

2007年11月05日

岡田冴世『資料室の麗人』

 上司のセクハラをこばんだせいで資料室にとばされたら美人がいた表題作、など。
 短編集だけどなんかどの作品もライトで、正直あまり印象に残った話がなかったなあ。お話はよくある系で萌えもあまりなく、絵もあんまりうまくない…なんか見てて不安になる感じのバランスな絵だと思った。

石田育絵『徒競浮世花』

 なんか後輩といるところを見られたら、フラれた相手に怒られて他のやつにやるのはおしくなったとか言われました。で、そういう関係になったけどひどい扱いをされますがでもやはりのぼせてます。そんな受け…なのだが。

 この作家はこういう傲慢攻め書くのうまいと思うし、この作家らしいキャラと話だった気がするのだが、なんか消化不良。受けのがタチ悪いってのがあかされるという展開は別にいいけど、なんか唐突だったというか、前半との整合性がとれてない気が…特に攻めの受けに対する感情とかは、最後の説明はそれまでの行動とは整合性ない感じでなんだか適当っぽいし。あとがきを見ても、やはりこのオチはとってつけた感じなのではと思ってしまった。
 あと、なぜ時系列ではこのシリーズの前の話になるはずの読みきりがあとに掲載されているのか。掲載誌が違うというのと、だからシリーズの最初のほうで読みきりの話をくわしく書き込んであるから、冗長にならないように後ろに掲載したのかな。でもやっぱりなんだか違和感がある。

2007年11月06日

ぐるぐるぐる。

 やっとひと段落ついたがすごく疲れた。身体も疲れたけど精神もかなり疲れたので、なんかもうここ数日いろんなものが交互にぐるぐるまわってる。しかしこれこのカテゴリでいいのか?

 実はそれについてはあんまり理想とかイメージとかなかったからか、殿下がほんとにいるとしたら素敵かもしれないわね、くらいにしか思ってなかったので、なんかそんな乏しい認識を簡単に覆されてしまってこまってしまう。なんてカワイイんでしょう。そしてもはや、逆説的にカワイイがカッコイイにつながってしまうのもなんかもういいや。回路が逆だったら個人的にはミザリーなかんじだけど(カッコイイがカワイイにつながるのは年齢のせいだろうから)でもこれもまあ最早どっちでもいいか。更に痛い人になってしまいそうだけどもう既にかなり痛いし。まあどっちみちもう逆らえそうにないです。

 忙しい合間に楓の名のつくセンパイカッコワライ、と、歌を歌ったり歌を歌ったりして遊んでました。そして歌曲って器楽曲とつくりからして違うんだな、ということをやっと体感した。音符の組み合わせ方とかかなり違うね。だから器楽曲に歌詞をつけるとなんかすごく違和感があるんじゃないかなあとか思った。昔からインストに歌詞つけたくなる気持ちはよくわからないから。でも、歌いたくなる気持ちはなんとなくわかるんだけど(あ、だからかピロウズのインストは好きなんです。

 フジミのひとらはコンチェルトといったらバイオリンソロだから略称はメンコンとかチャイコンとかだけで済んでしまうんだね。バイコン(大蛇の仲間)とかピアコン(タンゴを演奏する人の仲間)とかフルコン(フルメタルジャケットとかモータルコンバットとかの仲間の軍隊用語)とかトロコン(どこいつモデルのプレステコントローラー)とかトラコン(なんかファッション用語)とかいわないんだね。コンはコンプレックスでもコンダクターでもないんだ。

 少し戻るがそれと言えば西本智実はなんか存在自体が不安定なイメージが前からあるけどほんとのとこはどうなんだというか、どうなんだって何がどうなんだよ、と問い返さなければならないようなそんな状況って誰のせいなんだ?と、大和証券の宣伝見てまた思いだした。しかし彼女の件は考慮にいれなくてもあの宣伝すごいカワイイ。
 あと、さざなみCDはもうちょっと聞いてからなんか書く。

2007年11月07日

高井戸あけみ『月のマダム』

 ゲイリーマン×内部調査課の美メガネ。
 不正調査とリーマンの無理めの恋と。という感じ。なんか薄めでものたりなかったのと、受けの心情がいまいちわからなかったのとで印象が薄いが、受けが美メガネなのでよかった。

 通学電車でカコイイ他校生と知り合う話はなんかファンタジックにすぎて非現実的だった。

2007年11月08日

山田ユギ『ありえない二人』

 麗人コミックスだけどほとんどシャレード掲載作なので、いつもの麗人コミックスと全然雰囲気が違っている。
 表題作は麗人掲載で、これが一番面白かった…無表情朴訥な鞄職人×ウェブデザイナー。やはり山田ユギのこういう不器用系人間は攻めでも受けでもすごくよい。
 一番分量の多い、お酒ののめない年下わんこ系スポーツジムのインストラクター×年上美人系マスターは、なんかいまいちだった。シャレードは短いページで漫画連載する枠があるんだろうと思うが、そしてその枠で連載していたのだろうが、なんか物足りなかった…。
 他の短編はそこそこという感じ。
 おまけ漫画が三部作らしい…ドアの新装版と連作!?おまけ漫画のためだけに新装版は買えないなあ…。

2007年11月10日

剛しいら『新宿探偵』

 先週あたりに読んで、すごい気に入ったので感想はしっかり書こうと思ってねかせてた。なんか裏表紙の梗概がいまひとつだったし、展開的に普段ニガテにしていた要素があったので、こういう作品が面白いとギャップで余計萌えてしまいます。

 二連作プラスおまけみたいな三連作。
 元警官の探偵×美貌のヤクザ医者。
 探偵はある秘密をかかえて警察をやめて、新宿で流行らない探偵をやっている。ある失踪人を捜して、古ぼけた通称黒猫病院を訪れた探偵は、美メガネの医者に出会う。守秘義務をたてにつれなくされて、夜中に忍び込むも見付かり、両者ひかずにレイプ。
 と、この辺りで、それまで仕事のことばかり考えて行動してたのに、実は仕事よりもムラムラがまさってた攻めとか、つれない態度なのに、実は結構その気だったんじゃあって感じの受けとか、なんか心理面が唐突でついていけなくなりかねない感じで、わたしはそういうのがニガテなんだけれど、しかしどちらも後で丁寧にフォローされていくので、面白かった。

 特に医者の心情にかんしては、二作目で医者視点の描写もあり、なぜ探偵にひかれたのかとか単純だけど面白かった。
 美貌と才能をもってうまれついた医者が、しかし家族や色々な男に不幸にされてきた過程とかも、冗長にならないように且つ丁寧に描かれている。しっかり描かれてる教授との事情と、ぼやかして書かれてる家族環境とが、よい濃淡になっていて余韻があって、書かれている部分以外でもいろいろあったんだろう医者の過去を想像させてくれる。そんな後に探偵に猫缶をねだるとことかすごくいい。
 そんな二作目があるから、三作目の探偵の秘密解決編では、医者視点がないのにそれでも医者の心情もしっかりつたわってきて、とってもよい。

 探偵は探偵で、常に医者にめろめろでなんかもうすごくダメ。結構イケメン設定なのにもうものすごいヘタレ。一作目で看護士のナギに負けちゃうとことか、二作目で盗聴うちきるとことか、三作目で医者のもとにいとまごいにいくとことか、花受け取ってもらえないとことか、結構みっともない(笑)とこも多い。それでもかわいげがあるって結構スゴイ。「浮気してんじゃねえよっ、この淫乱がっ」は、ここでこのひとがこのセリフは、いかにもダメ男みたいでとてもよい(笑。「ヤクザみたいな男」と評してたし、教授にはさぞかしダメ彼氏に見えたことだろう(笑。くだらないジョークもかわいくていい。
 しかし…探偵の名前が、「蘭展明(あららぎ・てんめい)」…蘭もちょっとアレだが、展明はどうしても花京院や写真家を思い出してしまう…。

 そんなわけで内容自体すごく面白かったし、キャラも魅力的な上、三部構成もきれいにまとまっていてよかった。少しものたりなさもあるのだが、これも冗長にはしないための配慮のような気もする(とか言いつつ、でも続きがあったらいいなあ…笑。セリフに句点が多いのも、作者のというよりはこの作品の色…かな?ちょっと自信ないけど、でもいろいろな面で、この作品らしさがきちんと考えられているなあという印象だった。

 初出を見ると、一作目は2002年のビブロスの雑誌なんですな。あとがきによると、挿絵が本仁戻だったらしい…!それはすごく見たい!しかし入手は難しそう…国会図書館かな…。

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 どうでもいいのだが、これ久々のヒット…という印象だったんだけど、はたして本当に久々なのだろうか。たしか読んだのは一週間くらい前のことだったんだけど、その前のヒットって、小説だと英田サキ『さよならを言う気はない』が内野安打って感じで前月25日、松岡なつき『アンダルスの獅子』が20日。コミックだと田亀源五郎『ウィルトゥース』が19日。あれか、開いた時間ではなく間に読んだ冊数の問題なのかも。

2007年11月11日

剛しいら『新宿探偵』その2

 そういえば、『シャレード』の高遠琉加の「愛と混乱のレストラン」前後編はとてもよかった。

 で、書き忘れたこと。
 剛しいら『新宿探偵』は、視点のうつりかわりがちょっとわかりづらい。

「嘘をつくにはな。嘘の中に本当を少し混ぜるんだ。そうすると容易く騙せる。嘘でもいいよ。言ってみな。俺に抱いて欲しかったんだろ」
 二人は初めて出会った時のように見つめ合った。
 展明は滅多に見せないひどく真面目な顔をする。笑顔はセクシーだが、こんな顔をするといい面が表れる。優しそうないい男に見えた。
「展明が……欲しい」
 今度先に口を開いたのは凛だ。その語尾は震えていた。
(65P)

 終始展明視点でつづられる「新宿探偵」のこの部分では、「優しそうないい男に見えた」というのは展明視点なのか(自意識過剰な展明になってしまうけど)、語り手視点なのか、それとも凛視点なのか。その後すぐに凛のセリフにつながるので、凛視点ととってもいい気がするけど、それにしてはそのあとの「今度~」以降があまりに第三者視点ぽくて、直前の凛のセリフもその前と断絶してるような印象に感じる。全体を通して語り手はかなり饒舌だし、語り手という気もする。

 声が高くなった。
 残念なことに手術室は防音してあるので、この素晴らしい嬌声が嘉島教授に聞こえることはない。
 凛が新たに迎え入れた男が、どれだけ凛を喜ばせているか知ったら、嘉島教授も諦めるしかないだろうに。
(188P)

「黒猫病院」における凛視点のこの部分はどうか。「残念」と評価しているのは凛か、語り手か。前の一センテンスが第三者視点ぽいので、「残念」と評しているのも語り手かなあという気がする。
 でも、ここは凛の方が萌えるよね…多分。
 作者の意図はどっちなのか。というか、こういう視点のわかりづらさには何か意図があるのか。
 テクストの意図はもうちょっと詳しく視点の分析すれば抽出できるだろうかという気もするけど、ちょっとめんどくさい。

2007年11月13日

『LOSTMAN GO TO YESTERDAY』

 アホみたいに高いシングルコレクションだがバスターくんメールブロックがどうしても欲しくて買ってしまったよ。

 タワレコは商売巧いな…。

 しかし結構持ってない曲入ってるんだよね。DVDはもちろんだけどパトリシアシングルバージョンとか入ってるディスク1は初めて聴く曲も多い。ウィハブアテーマソングとかも英詩バージョンなのかな…とはいえ残りの4枚のディスクはほぼ持ってる曲ばかり。まあなんにせよ、まだ聴いてないというか開封してないんだけどね…(笑

2007年11月14日

藤沢キュピオ『お殿様ご乱行』

 タイトルからアレな作品というのは時々あるが、作者のPNまでもこんなにワケがわからないのは久しぶりかもしれない。
 しかし、締め切りにおわれて疲れ果て、もう何にも考えたくない、という時に読んだらそういう意味では大当たりでした。表題作は受け大好き殿×天然朴念仁忍のアホアホな短編シリーズで、あとは体の関係はないが同棲中の漫画家×漫画家と、漫画家の従弟→アシのアホアホな四コマシリーズ。絵もお話も正直そううまいわけではないけれど、それぞれにほぼ及第点ではあると思うし、ぼーっと読めてよかった。
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 リンクつくろうとして間違えてお殿様、でぐぐってしまい(グーグル検索窓とGtools検索窓が一緒なので)、お殿様ベッドという言葉を見つけてびっくりした。お姫様じゃないのか…?とクリックして、見てみて納得した。

2007年11月15日

江戸東京博物館特別展「文豪・夏目漱石―その心とまなざし―」

 評判がよいみたいだったので、ない時間を捻出していちきました。
 平日夕方だというのに、結構人が居ました。お年をめした方と若い方と研究者風の方と学生ぽい方、が多かったです。前半は、中間層とその上下がいなかったよーということです。まあ平日なので当然か。後半はまあそのまま。

 内容はすごくオーソドックスで…昨今流行の批評的な言説ですべて把捉できそうな…というかむしろ、そんなふうに批評されてしまいたい欲望でもあるのか…?という感じだった。
 作家の学生時代の成績表やら、細かなすごくどうでもいいメモ、書簡も結構面白いものもあればどうでもいいものもあり、やがてはデスマスクや遺品が並び、って感じで、作家表象のたちあげ方はすごくオーソドックスで、かつ既にある作家表象ともほぼイコールで、よくもわるくも健全な展示の仕方だなあという感じを受けた。
 よくもわるくもというのは、こういうふうに並べられると、たとえばわたしは「ああラファエル前派の影響を示したいのね」「『虞美人草』が大衆受けしてブームが起きたって話ね」とか、すごく単純化記号化して見てしまうわけですよ。まあわたしの感受性が乏しいせいかもしれませんが、でもやっぱり知識が先に出て記号で捉えてしまいたくなる展示の仕方であったというのも確かだろうと思う。
 でも、そういうのを全然知らない閲覧者層には、そういうオーソドックスな展示は面白いのかも、とも思う。もっとも、それならそれで、あまりに抽象的というかわかりづらいとこ、たとえばラファエル前派関連の展示など、となりにラファエル前派の影響受けて書かれたテクストとか添えればいいのに、とは思った。
 うーん、何だか上から目線ですかね。

 まあ初版本とか、特に最初の全集とかまとめて見られて良かったかなというのと、『明暗』発売日の岩波書店店頭の写真(前にもどこかで見たような気もしたが)とかなんだか面白かった。この『明暗』とか全集辺りのことはまさに作家表象研究的な意味で面白いよね。Lくんとか猫くんとかが好きそう(笑
 あと、三四郎池の写真がまさかと思ったらほんとに渡部芳紀の撮影だったので、ちょっと笑ってしまった。なんというか、流石だ。

2007年11月17日

放り投げ本。

 最近途中で読みさす本が増えてる気がします。

 嶋田二毛作『吸血鬼に愛される方法』
 鬼=吸血鬼対渡辺綱の子孫というわたしの大好物設定だったんだけどつまらなくて…。

 橘みれい『からくり仕掛けの蝶々』
 泉鏡花が出てくるということと絵が今市子なのでワクワクして読んだのだが文体があまりに馴染まなくて読めなかった。半分くらいしか読んでないけどお話自体もイマイチ。ていうか、この橘みれいって『花影の刻』の嶋田純子がPN変えただけだったのね。そうと知っていたら買わなかったのに…って、『花影の刻』も文体も内容もなじまなくてかなり苦労した。こっちは一応読んだけど。

 仙道はるか『夜空に輝く星のように』
 これも文体がなじまなくて読めなかった。橘みれいにもそう思ったが、なんか昔のラノベ(ラノベという言葉が出来る前のラノベ)文体だなあという印象だった。

 清水正『ケンジ・コードの神秘』
 どうせトンデモ本だろうとタカをくくって読み始めたら読めないほどのトンデモ本で困った。

 榎田尤利『人形の爪 眠る探偵 I』
 探偵がまったくもって推理もしないし、かといって立ち居振る舞いその他にきらめく魅力があるでもないし、なぜ皆に愛されまくってストーカーまでされているのか全くわからなくって、本編はかろうじて読み終えたが、後半の過去編と続きは読む気がしない。

2007年11月18日

井上佐藤『エンドルフィンマシーン』

 DMC実写化はともかく、クラウザーさんが松山ケンイチ…!(笑
 DBはどーでもいーと思ってたけど、監督がチャウシンチーらしいのでたぶん観にいく。
 4分間のピアニストを観ようかと思ったけど、やっぱりいいかな、と…。

 井上佐藤の初コミクスがやっと出て、配本が少ないようで中々買えなくて忘れかけてたとこでやっと買えて読んだ。結構面白いし好みでもあったのでよかった。

 表題作は不器用なイケメンフェロモン整体師×整体師のバイト。続編ふくめて、ちょっと筋がごたついてるけど受けが斜に構えた若者でカワイイ。
 総ホモアパートに越してきたノンケ製菓専門生の話は面白かった。冒頭で女の子が「敷金戻ってくんでしょうね?住人全員ホモだなんてどうかしてるわよ!」とかもめてるのがまず可笑しい。そして、なんか最悪なリーマンに飼われてるツンデレ長髪のお隣さんが…あの、某ジョジョキャラそっくりで…(笑。たいする主人公のパティシエの卵がキッラキラした若人で、しかも攻め、「年の差6歳、身長差21㎝」だそうなので、対でもうおかしくって…(笑。オチもいいよね(笑
 あとはオレ様予備校生×予備校講師とか、リーマン微妙に三角関係とか。それぞれそこそこ面白かった。

 この作家は、絵はヘタではないがなにか少し不安な感じがするところは、本間アキラと少し印象が似ている気がする。あとちょっと動きのある絵がイマイチというか、コマわりの仕方が動きに合わない感じがするとこが気になる。
 お話は、それぞれに萌えも面白みもあるのだが、なんとなくごたごたしているというか展開がこなれてない感じ。
 作者のあとがきを信じるなら経験の浅い漫画書きさんみたいなので、更なる今後の発展に期待できそう。

2007年11月20日

遠野春日『背徳は蜜のように』

 家具会社(だっけ?)の長男社長は、不況にあえぎながらも義母連れ子の義弟とふたりで、父がのこした会社の命運をかけてがんばってる。義弟のとりつけてきた融資話のために、銀行の担当者に会いに行ったら相手は高校の先輩で、昔から狙ってたとか言われて身体を要求される。義弟は知っていたっていうか、そもそもこれって義弟のワナでした。義弟は兄が手に入らないならいっそエリート先輩に汚して欲しいとか思いつめてまして、結局兄は義弟の目の前で銀行員のものに…!

 …すごいあらすじだなあ(笑
 さすがBL、そこにしびれあこがれたりもします(わりと冷静に、笑
 えげつない話ですが、初回(物語内の、ではなくテクスト上での)が公式CP(この話では弟×兄)ではないというのは、BLならではというか流石に少女漫画とかでは出来ないのではなかろうか。

 そんなわけで(?)義弟も兄も悩みまくりのすれ違いで、その意味では王道でしたね。面白かったです。
 難を言えば、兄の気持ちの気付きがやや唐突(それまでのフリがつながっていかない感じ)なのと、あて馬先輩がイケメンすぎるのが…(笑。義弟はなんというか、言葉遣いとかでがさつな印象になってしまってるので、余計落差がめだちます。

 この作家の新刊は最近よくはずれていたので、今回は面白かったと思っていたら、このお話は昔の作品の再刊文庫化なのね…。うーん、複雑な気分です。

2007年11月22日

しみず水都『夜伽家来販売員の性活』

 夜伽家来というセクサロイド×販売員。バイオロイドなんじゃないかと思うんですが、アンドロイドだそうです(わがままだとは思うんですが、SFトンデモ設定には正直同属嫌悪する部分もなくはないです…笑

 でもセクサロイドものって実は好きです。いや、別にポルノ的な好悪ではなく、面白い筋がつくれるジャンルだと思うからです。ただでさえロボットをつくる・つかう側の、あるいはロボット自身の倫理規範の問題とか、感情の問題とかいろいろあるのに、そこに性を持ち込むと問題系が一気に二倍になるので、お話を面白くできる工夫のしどころが満載だと思うんです。

 そんなわけで、これもちょっとトンデモすぎたけど、そして筋もベタであっさりしすぎてたけど、そこそこ楽しく読んだ。
 いや…うん、いろいろムチャクチャでしたけど。受けの名前が「シュニン」で、変な名前だなあ、と思ってたら、上司はセンムで、上司父はシャチョウだったりしたので、なんかもうSFどうこうとかではなくいろいろすごい。あ、あと、文章も結構すごい。ウェブ出身の作家さんなのかな…。

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 パール文庫は色物文庫なんですかね。それはいいんだけど、なんかめちゃくちゃ薄い(内容もだけど、とくに厚さが)のだけは気になる。もうちょっと安かったらいいんだけど。

2007年11月23日

木原音瀬『美しいこと(上)』

 わー!とか叫びたくなったよ!これまたすごい話ですな。
 上巻ってことは末尾が中途半端なんだろうなーと思いつつ、またアンハッピーな木原音瀬だったらどうしようと思いつつ、仕事も原稿もやらなきゃと思いつつ、つい手にとってしまったら止らなくって、もう一気に読んでしまいましたよ。

 出て行った彼女の私物をかたづけてて、仕事のストレスのせいもあってかついつい女装してみたらあまりに美しくてハマってしまったリーマン。ある日その姿で外出して困ってたところ、社内別部署の年上不器用さえないリーマンに助けてもらう。自分を女性だと信じ込んでる相手と、いろいろあってメル友になりつつ、ずっと性別をごまかしてるわけにも行かないので別れようと思いつつ、自分にめろめろで直球勝負なさえない相手にだんだんハマっていってしまう。

 という、女装美人と一途さえないリーマンの話は、ときどき笑っちゃいながら楽しく読んでたのだが、受けも気にしてたようにずっとそのまま続けられる関係でもないので。告白したところ、まあド修羅場というかとりつくしまもない、感じに云々。

 告白後の展開は流石木原音瀬だなあという感じだった。紆余曲折あっても受け入れられてハピーエンドに…ということに最終的にはなってほしいけど、今のところ全然そうはなりそうもなく、全くもって一筋縄ではいかないところが木原音瀬らしいし、面白い。さえない氏が女装美人に興味を持った理由とかも、この作者らしい気がしたけど、そういう人間の感情の痛いとこを良くも悪くも書いちゃうのがこの作家らしい気がする。いやまだ全作品を読んだわけではないのでこの印象が正しいかどうかわかりませんが。

 でもやっぱり痛ければいいというわけではないし、適材適所であってほしいとは思う…この作品の場合はそういう痛さがあっててとってもいいとおもった。なんというか、一筋縄では済まさない物語だと思うし、一筋縄でいかない作品が必ずしも良作だとは思わないけど、この作品はそういうぐるぐるしたとこが面白いと思うのだ。ふたりの痛みや身勝手さを引き受けて、それでも続いていく感情や関係性、が、メインの物語であり、その感情や関係の物語がちゃんと面白いのだ。あとがきにもあるように、恋愛一直線というか、感情オンリーの物語だなあと思う。
 (一筋縄では「済まさない」というのは作者の視点から見ての言葉だと思うのだが、この作家はなんかやっぱり作者の〈意図〉がテクストに露出しちゃうタイプである気がする。これまた、それがいい場合も悪い場合もあるだろうと思うけど)

 あと、下巻があるということは、このまますんなり受け入れてもらえてハピーエンドはないだろうし、どうなるんだろう…もしや女友達の紹介してくれたこが実は男だったりして、んで下巻はCP変更だったりしたらどうしよう…と鬼畜展開(ある意味)を心配しましたが、流石にそれは杞憂だったみたい…?(笑

 下巻は来年だそうですが、もう結末が気になって気になって、ネタばれ(もともと雑誌掲載作らしいので)捜してぐぐってしまいましたよ(笑。ということで、楽しみにしてていいのかな…?(笑

 日高ショーコの絵もインパクトはうすいけれどきれいでよかった。髪を切ったアゴヒゲメガネの受けがかわいい。

2007年11月24日

乙一『The Book―jojo’s bizarre adventure 4th another day』

 基本的にマヨイガでは読後に感想等を書くことにしていますが、これは読むのがもったいなくてしばらくかかりそう且つ、読む前段階の感想までも書きたいので、書いちゃいます。

 わ、わわわ!乙一四部!乙一四部だ!
 ジョジョファンとしてはダメダメなことに、発行されることを知らなかったので、書店で平積みされてるのを発見してものすごいビックリ&感動しました。
 スゴイな!装丁もスゴイ!発行がのびにのびたせいでだろうか、20周年記念ってことになってんのも偶然=必然って感じ!

 乙一はどう贔屓目にみても荒木より年下には見えないのが可笑しい。先にあとがき読んだら、なんかこれまでの仕事はすべてジョジョ四部を書くためのバイトでした、みたいな書き方してて可笑しい。いいのかそれで。発行がのびたせいで、乙一が昔とは比べ物にならないくらい知名度があがってんのもなんか運命っぽいのだけれど、そんな状態でこんなこと書いちゃうのが乙一らしい気もする(笑

 内容も、もったいなくってまだ最初の方しか読んでないんだけど、ジョジョ抜きにしてもかなり面白そうな上に、きちんとジョジョだし、そこここに小ワザがきいてるし、ジョジョファンにはたまらない一冊っぽい。杜王町をしっかり読み込んで我が物にしているのは基本として、語彙もしっかり荒木ワールドだったり、康一くんや露伴もしっかりキャラ把握されてて、ほんと作者はジョジョ好きなんだなあって感じ。あと露伴がイコール荒木として扱われてて(笑、作者コメントとかまんま荒木のものを引用しているのも最高(笑。なんというか、サスペンス作家としての乙一がしっかりそこに居るのに、その乙一は明らかなジョジョファンで、しかもそのファンとしての志向が一般的なジョジョファンとほとんど乖離してなくて、だからたんなる商業コラボではない一冊になっている気がする。

 わーなんか興奮してしまいました。一息ついたらゆっくり読みます(笑

2007年11月29日

若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』4

 SATSUGAIするぞ!とかリアルに言いたくなるときあるよねー。

 なんかまただんだんテンポよくなってきた気がする。フェスもラストのヘルヴェタとの対バンは結構面白かったし、引き抜きの話とかもちょっと薄かったけど新鮮味があってよかった。
 映画がちょっと楽しみ。カミュは誰がやるんだ…社長も気になるな…。

2007年11月30日

しみず水都『そんな上司に嵌められて』

 タイトルがすごいなあと思った。

 商社調査部ヤリ手上司×ハーフの部下。
 日本で無難な生活を送るにはハーフであることはハンデだとして、頑張ってるけど仕事ばっかで無愛想な受け。上司がなんか妙にいじめてくるけど終身雇用めざしてがんばる。
 上司は愛情=いじめっこでほとんどパワハラまがい、なんかへりくつゆって受けに謝らせたりすんのが余計にムカつく感じなのだが、でも受けはホレてしまうんだよね。
 作者は差別問題なんかもいろいろ書き込んでるのだが、強引いじわる攻めのパワハラは萌えどころとして書いてるんだろうな。なんかちぐはぐでどう受け取ったらいいのかよくわからない…。
 受けはちょっと単純すぎるけど、この攻めでは仕方がないのか。いじめられどおしでなんだかな、という気もする。あと、目次見てシリルって誰だよ…としばらく思った。
 全体にそこそこ面白かったけど、さらりと流れてしまって薄い印象でもあり、なんか違和感もちょっと残ったな、という感じ。

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