一義再聴第三弾。
『金字塔』については今更何か語ることはあるのだろうかという気持ちと、いや語るとしたらものすごく長くなってしまうんではという気持ちと両方ある。でもマヨイガで『金字塔』について書いたことはないし、普段どおり今のどうでもいい言葉で書いてしまおう。
「どう?」「犬と猫」についてはデビューシングルとして、またはじめてナカカズを知ったきっかけの曲として勿論思い出深いんだけど、でも後述するように実はナカカズを主体的に聴こうとした契機ではないのである。ピロウズの場合と同じように、中村貴子のMスクのOPになってた一ヶ月ほぼ毎日聴いてて、ああいい曲だねとは思ったものの、あたしはあまり歌詞で聴かない方なのでその時はそれ以上には考えてなかった。だからシングルを購入して歌詞カードを見て、こんな歌詞だったのかと吃驚仰天した時にやっと、この曲がすごく特別になったという気がしている。「町を背に僕は行く。今じゃワイワイ出来ないんだ。奴落す、もう。さぁ行こう!探そぜ、奴等…ねぇ」勿論これがあのメロディにのるからこそスゴイので。
「街の灯」は江戸川をはさんで向こうの人だ、ということを再認させてくれる曲である。
「天才とは」は最初に聴いた時にはあまりいいと思わなかったんだけれど、やっぱり歌詞を見てからすごく好きになった。「世紀も末なのに、まだバスに頼ろうとしてるようなもんだが、いいんだ。僕らは年中その先見てるし、夜は月が照るんだ。心配は、もう無用だ」とかもうほんと、大好き。だが実は「ウッソー!? イヤ? そうなら…いいなぁ」がすごく大事である。「犬と猫」でもそうなんだけれど、奇矯な歌詞が・素晴らしいメロディに・うまくのる、ってことの力をあたしに知らしめてくれたのだ。
などとくだくだしく書いたものの、実は「ここにいる」を聴かなければあたしは中村一義のCDを買わなかったかもしれないのである。この曲もやっぱり歌詞よりもメロディが先に来たのだが、もう一瞬で、イントロで既にとりこになってしまったんである。だからこの曲を聴きたいがために、某大学の合格発表の帰りにその足でファーストシングル『犬と猫』を買いに行ったのだ(結局その大学には行かなかったが。でもこれは歌詞もわりとダイレクトで(中村一義にしては)わかりやすいので、歌詞も初聴きからかなりキテた気もする。「トンネルを抜けると、今日は、解放記念日だ」そんな経緯もあって、特別な曲はいっぱいあるのだがこの曲もやっぱり特別なのだ。
「謎」はすごく好きだ。「落雷の音で、みんなのバスと擦れ違うのも、夢中にさ、歩いてたんで、気付かなかった」のところのこの歌詞とメロディとか、好きだー。「「だって、なんか、そういうのって、いいね」「解ってくれるか」」わはは。
特に『金字塔』には「天才とは」に曰く「有能な天才」の四人たるthe Beatlesの影響は色濃いのだが、この曲は「Polythene Pam」に似ているなと最近思った。
「いつか」では「いつか、ああなろうと思ったものから、かけ離れて」とかはナカカズらしくもない気もするのだが、まあそういうこともあるよね。ナカカズの「神」という語彙についてはタナソウ事件のこともあってかうまく把捉できない気がするよ。でも「困ったなぁ~。毛嫌いは、どういう理由?好きなものは多いほどいいのにぃ」とかやっぱりすごく大事。
「永遠なるもの」はメロディから詩から冒頭のお遊びから末尾の(あえて言えば)自己満足的なおまけまで、あまりにわかりやすく中村一義で、しかしそうとわかってはいてもやっぱりとても大事な曲である。ナカカズらしい中に「愛が、全ての人達に、分けられてますように」とか「全ては、みこころのままに」とかものすごい勢いでわかりやすい言葉や概念が入ってきて、不思議だけれどでもそれがナカカズなんだよなあという気もするのだ。そして、そうした中にやっぱり「あぁ、全てが人並みに、うまく行きますように」という中村一義的な、あまりに中村一義的な言葉が入ってくるのだ。「あぁ、部屋のドアに続く、長く果てない道…。平行線の二本だが、手を振るくらいは…」という冒頭がすごく好きだ。
「おまけ」にかんしてはやはりどう考えても、「超ダルな時を撃った日から」である。歌詞はここにある。
「最果てにて」 は勿論随分あとになって聴いたのだけれど、「花の銃を撃て!撃て!撃って咲かせてやんだっっ!」というものすごい勢いと、それでいてのんびりとした演奏の妙がよい。ひとりで演奏しているせいもあってか、すごく初期中村一義的であり大好きだ。歌詞はここ。
(余談だけれどあたしはどうもショボい音が好きみたいだ。ピロウズもそんな感じでシンセをつかわれるとガッカリしてしまったりする。
ついでに、シングルバージョンの「始まりとは」すなわち「金字塔」は、やっぱりアルバム『金字塔』に(「始まりとは」のかわりに)入れればよかったのになあと思う。
「全てが解って、何も解らないで…」ものすごく初期中村一義的な言葉とメロディ(というのは勿論シングルバージョンのほうのメロディのこと)で、だからこのタイトルなのだ(「最果て」もそんな感じなんだけどね。「曲がりくねる直線にある点の上でね、」とかすごく印象深い。