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2005年11月01日

猫田リコ『花というよりもキス』

 なんだかなぁ…これまでで一番不満が残ったコミックスだった。
 よかった!と思える作品がひとつもなかった。
 猫田リコは『少年地獄』の辺りから既にあぶなっかしかったけど、その中にあっても「二人は罪に沈む途中」なんかはまだまだあぁやっぱ猫田リコだ!と思える作品だったんだけど。担当さんの舵取りがよろしくないのではなかろうかという気がするなあ最近。というか単純に仕事が増えたことの弊害なのか。むむむ。不安なり。でも今後も読むと思う。すっぱり切り捨ててしまうにはあまりに鮮烈な個性を持っていると思うのだ猫田リコ。たとえそれが過去形になってしまうとしても諦めきれぬ。

2005年11月02日

ひぐちアサ『おおきく振りかぶって』1~4

 Mさんに貸していただいた。既刊分まとめて読んだ(しあわせ~。
 すっごい面白かったよ~。『世間様』がナゼこうも大騒ぎになってんのかやっとわかったよ~。

 というか、
 すっごい精神的にヤオイだったよ~(笑。

 なんだろうね、精神論ぽい話が多いせいかね。超直球に阿部三橋でしょうね(なにが「でしょうね」なんだ。

 うん、いや、別にそういう視点でなくとも面白いとは思うんだ。
 気を持ち直して。
 第一話のわかりづらさがいかにもアフタだなぁという印象だった。よくもわるくも自己完結している印象。『ディスコミ』とか『ブラム』とか『ヨコハマ買出し紀行』とかの一巻辺りの排他性を思い出せば何のことはなくって、掲載誌がアフタヌーンだから、で理由付け終了で。その中にハマっちゃえば心地よくなるってわかってたので、安心して読み飛ばした(んで、後から読み返すの。
 しかしキャラが把握しきれないのはわたしの読解力不足なんだろうか。誰が誰なのかよくわからない。西浦の人々をやっとこ把握しかけたところで他校の人々がもりもり出てきた時には気を失いかけた。なんだろうなぁ。描き分けは結構されてる気もするけど。
 (なので、阿部三橋近辺はまだわかるんだがその他のCPでモエモエしている方々の気持ちはイマイチわからんかった。

 やはりうじうじ主人公モノ(というジャンルがあるとして)は割と好きで、いや勿論うじうじしつつ魅力的に描かれていることが絶対条件なんだけど、三橋の場合わがままなとことかいいなあと思う。

 野球漫画はあんまり数読んでないので語りづらいんだけど、ちょっと『メイプル戦記』を思い出した。もっと各キャラの魅力をもりもり出してくれたらどハマりしてしまうかも。

2005年11月03日

映画『チャーリーとチョコレート工場』

 というかもう、結局わたしはこれを見に行かないんじゃないだろうかと大いに心配していたところのチョコレート工場の秘密を、今更ながらやっっと見に行きました。『飛ぶ教室』も見損なったし~とか、早く見ないと今年度ゆずり的期待度&期待はずされそう度ナンバー1のアレが始まってしまう~とか(結局始まってしまったね)思いながらも、なかなかモチベーションがあがらず。半ば無理矢理映画館へ。

 で、やっぱり面白かった!よかった!
 ウォンカさんは最高潮時のブチャラティにちょっと似ていると思った。

 というかもう、ウォンカさんは超絶にかわゆかった!!!!!!

 彼のあまりのかわいさに他の感想が全然出てこない。
 ポスターとかも見ていて思ったけど、こうしてきちんとメイクすればすごくいい感じじゃないか。それに、くるくる表情が変わるジョニーデップが超ステキ。にこにこ笑ったり、びっくりしたり、わたしはこんな↓むっとしてる表情が大好きだ。

 ということで、一年前の心配は杞憂に終わった(この写真はやっぱり今見てもどうなのかと思う。

 非常にばかな感想ですが、…うーん、ばかでいいや(笑。
 あと、やっぱりティム・バートンのつくる町並みっていいよね。わざとらしくて好き。

2005年11月07日

山本小鉄子『晴れてボクたちは』

 絵はかわいいと思うのだがいまいち萌えない、どころかあまり面白くない、ことが多い。のに何度も買ってしまう山本小鉄子。
 幼馴染がカッコよくなってかえってきましたもので一冊、なのだがいまいち展開がたるたる。関係もキスまで。いやそれは別に構わないというかむしろ歓迎というか、この作家のそういうところは好きなんだが…いや、この知名度(いやわたしが思うほど知名度の低い作家ではないだろうけどそれでもまだまだだろう)でエロなしを赦されてるってのはある意味すごい好待遇なんではないかとも思うし。…ん?あれ?キスすらあったっけ?
 …いやそれはともかく。一番よくわかんないのはなんで主人公がなびいたのかということで。

 独占欲を恋愛感情と履き違えることは現実にもあることだろーけれど、そんなん漫画で読みたくないし。幼馴染ものってだからあぶないんだけど、そこを乗り越えるための説得力ある心理描写をしてほしいよね。特にこんな長い連載ものなら、心理描写にも紙幅をさかなきゃならないのはあたりまえだし、だからなおさら「友情ではなく恋愛である必然性」が必要だと思う。

2005年11月08日

山本小鉄子『恋と罠』

 晴れて云々と一緒に買った。
 裏表紙が腹が立つぐらい(程度の比喩ではない)恥ずかしい。

 表題作とか家出少年ものとか、あまりオーソドックスではない、おとなしい少年の話でちょっと不思議系展開というか日常を半歩逸脱というかそんなかんじでやまがたさとみ的ないやらしさ(えっちなわけではない)がありイライラする。何にイライラするのかというと、特に表題作でそうなんだけど、自意識を守ろうとする若者が無自覚に他者を傷つけ、それが物語中の論理では肯定されてしまう、ゴールデンタイムのドラマにありがちなDQN肯定展開が悪びれずに開陳されているからで。表題作のいじめられっことヤクザの息子の話とかはもうちょっと面白くできそうな設定なだけにもったいない。
 ラストの花屋さんのお話とかは、山本小鉄子らしくてまだ読めるかと。

 いや、なんか悪く書きすぎたな。
 すみません。わたしが未熟なせいです。

2005年11月10日

今月のセックスピストルズ。

「あなたには夢があります」というタイトルの出会い系迷惑メールを受け取り、わたしはジョルノジョバァーナかよ!とちょっと喜んでしまいました。

 今月のセックスピストルズ@BE×BOYは、なんだか読んだら妙にむしょうに冷めてしまったのでスルーしようかと思いましたが、萎えの原因は主に話がよくわからなくなってしまったせいだと思うので、ちょっと整理してみましょう(こんな入れ込みっぷりはリカの第二部以来ですよ。いつも以上にネタバレ色が濃いので気をつけてね。


セスが若葉に語った話。
 …翼主(=天使=天狗)のセスにとって、仲間であっても翼手の蝙蝠は軽種でイヤなのだが他に翼主が残ってないので仕方ない
 …蝙蝠には何人か会ったけど男ばかりだった
 …しかし若葉はアンドロジーナスだったので丁度良かった
 …若葉が妊娠したので実家に連れて帰った
(…ん?男でも懐蟲つかえばよかったんでは?
(ということもあるし、単純に以上のセスの説明はほとんどウソで、セスが若葉に惚れているだけなのだ、とも考えられるが…

セスの実家について。
 …翼主の血筋でセスは久々に出た翼主(鷹)
 …翼主の血は発現しづらく蛇の目ばかり出る
 …一統のなかでも西家の叔父は権力者
 …セスは西家の娘(もちろん蛇)と結婚することになっている
 …父親が外国人だと蔑視されるらしい
(よってセスは翼主で正統な後継者だけれど微妙な立場?
 …なので、次の誕生日まで実家に戻るつもりはなかった
(誕生日になったら、きちんと後継者になれるんだっけ?結婚するんだっけ?若葉に誕生日を一緒に過ごして欲しいと言っていたことと関連があるのでは?

 …ちなみに、セスになびかない斑類はいない

セスの思惑について。
 …若葉は犬(軽種)ということにしておきたい
(翼主×翼手の子どもだとバレると叔父が何をするかわからないってところだろうか?誕生日のこともあるし、若葉を対外的には愛人として認識させておきたいのかも?
(というか、なんで若葉を実家に連れ帰ったんだ?お家騒動的にはかなり不利になるのでは?やはりこれも単に、若葉がセスと離れたいと切り出したがための闇雲な強硬措置なのか?
 …若葉は長持のことが好きだと思ってる


 おお、なんか書き出してみたら分かってきた気がするぞ。セスの誕生日ってのがどういう意味を持つのかが分れば、もうちょっとすっきりするかも。ワクワク。

 しかしまあ、一月分のページ数でこれだけの設定をぜんぶ読み取らせようってのはやっぱくどいですよ…。うう。

2005年11月12日

やまねあやの『ファインダーの隻翼』

 前巻の『檻(ケージ)』よりは格段に面白かった。アレの後の麻見の笑いとか、飛龍の嫉妬ブチ切れとかの場面がベタでよい。あと、偶然その回に本誌を読んだ時から思ってたんだけど、秋仁が麻見に「あんたを売ったのはオレだよ」と言うシーンがかなりいい。わざわざ麻見に伝えにいく秋仁も、それを聞いた麻見の表情とか反応もいいと思う。しかし麻見は全体的にはデッサンが崩れて来ているような…麻見がきちんとカッコよくないとなんかいまいち盛り上がりに欠けるなぁ。

 香港行きの前までってことで本編が短くて残念なのだけど、しかし同時収録の「ベイクド・スイート・メガネ」というわけのわからないタイトルの短編がすごく好きになってしまった。エリートっぽいお堅いメガネリーマンとそれに営業かけてる天然ぽい肌着屋の元気営業で、超ベタベタ展開で大変よろしい。今まで読んだやまねあやのの中で一番好きだ。ページ数が少なくていろんな小道具が使い切れてないのが残念。ラストなんかも駆け足でもったいなかった…。あと「まんぷく堂」という名のケーキ店(しかも店名が筆書き)がかわいかった。
 そのほか、代議士の親父たちの書き下ろしもあってひじょうに充実した印象(笑。

 すごく好きとかファンというわけではないのだけれど、なんだかんだ言ってやまねあやのもやめられない。ここまで売れてる理由は正直よくわからないけど、やはりある種のよい漫画家さんなのだとは思う。

2005年11月13日

麻薬子『Get you 召しませ怪盗』

 ペンネームがわけもわからずにすごいのでとりあえず引いた(あさ・くすこさんと読むんだそうですよ。
 そしてタイトルのセンスのなさにも引いた。
 しかし派手目な表紙絵と怪盗ものということにひかれてついつい手に。
 …結論として、もうショコラコミックスのジャケ買いはしないぞッ!(涙…と思った。いつもそう思うんだけどね。

 なんだろう。何が・どこがいけない、というか、何もかもだ。
 主人公の刑事がよくわからん性格な上に行動原理もよくわからん。それに怪盗にもらった薔薇で押し花とかキモいです!(いや押し花はいいんだけど、なんだかあの押し花はよろしくない)怪盗もいまいちどんなキャラなのかよくわからん。それに怪盗の仲間とかなんで居るのかわかんない(この仲間は担当の指示で入れたらしいけど、うまく使いこなせてないのは作者の責任だと思う)し、とにかく全体的にキャラが立ってない。刑事の上司とか富豪とかは色モノキャラにしようとがんばっているのは判るんだけど、あまりにそのがんばりが見えすぎでわざとらしくなっちゃってる。展開や怪盗がやってるナゾ解きもショボくていまいち。あと怪盗のコスチュームがダサイ。狙ってダサいのは構わないけど、それならそれでもうちょっとなんないのか。
 併録の短編もなんだかキャラがしっかり描けてないし面白くなかった。生徒会長の性格がわかんない。

 絵が大和名瀬の絵になんとなく似ている。アシさんとかなのかなあ。なので絵についてのアベレージはかなり高いので、お話作りをなんとか頑張っていい作家さんになってほしいものだと思う。

2005年11月15日

コミックランキング更新。

 『おおきく振りかぶって』…すごく面白い。しかしやっぱ少女漫画なのかもしれないと思う。ところで三橋のあのキャラは漫画だからいいのであって、文字になると正直キモい。そんなわけで二次創作は漫画のサイトさんばかりまわってます(スゴイんだよ!漫画でCP限定してもぼうだいな数のサイトさんが!超大手ジャンルだ!)しかし文字で割り切ってキモ三橋をつらぬいてる(のかどうか知らないけど)非801(なのかどうか略)サイトさんを発見、それはまたすごく面白かった。
 『ファインダーの隻翼』…ハード展開な上に麻見や飛龍の本音が見え隠れし大変オイシイ展開。ネイキッドトゥルースの続きはそろそろですか?楽しみです。
 『セックスピストルズ』…貴種カップルにワクワクです。
 『魔法使いの娘』…しかしこれからどうなるんだろう?
 『絶対可憐チルドレン』…椎名高志ファンですから。
 『願い叶えたまえ』…西田東はまだまだこれから!と信じてる。今も十分面白いけど。
 『ジョジョの奇妙な冒険』…正直いまだに月刊のペースに慣れない。というか作者もペースとれてない感じがいなめない。
 『僕と彼女の×××』…連載ペースが遅いので全然進まない…千本木話がまだ続いてるけど、期待していいのだろうか。なんとか進展して欲しい。
 『彩おとこ』…赤鬼少尉が大好き!なので、丁子なんてキライだ!(笑
 『LOVELESS』…新刊が出る来月の方が盛り上がる気もするけど。草灯がちゃんと絵を描いていてうれしい(笑。

2005年11月17日

葛井美鳥『Cat&Dogs!』

 主人公絵がまたあまりに幼いのでやめておこうと思ってたんだけど、読むものがなくて購入。
 最初のあたりは主人公もきちんと大学生に見えてたんだけど、どんどんいつものようにありえない子どもっぽさになってきてガックリ。性格も子どもっぽいし。そろそろきちんと大人同士のお話とか読んでみたいぞ。
 あと登場人物の苗字がどれもしっくりこなくて、なぜだろう…と思っていたらそういうことだったのね、とあとがきを見てやっと判った…。秋田くんに柴くん、ね。ふう。
 柏木は前半と後半でキャラが違いすぎてなんだかなと思った。いい子ちゃんを演じている、という部分が後半ではきちんと書かれてなかったからだと思う。

2005年11月21日

それでは文学、文学…

 今取り掛かっている月末締め切りの仕事が結構面白いのです。時間があればもっとたくさん担当したのになあ。しかしわたしの一応専門としているこの作家は、ほんとに基礎研究が進んでいるので、いろんなことがラクチンだ。
 ああしかし、漫画が描きたくなってきた(脈絡がないようだけど、あるんですよ。この冬はばりばり描くぞ!

 ところで鏡花は勿論(?)好きですが、全然数を読んでいません(師匠すみません。しかし、というか、そして、というか「きみの星は! 年は?」「年は狐……星は狼。……」なにこれ!やっぱスゴイよなあの人!鏡花の言葉とか文体はすごくて当然だし、わたしとしてはそっちがメインだと思うんだけど、科白でキてしまうこともまた多々あり。「ピストルの使い方」というタイトルもすごいセンスだな。モダンだな。

 ところで鏡花ってちょっと蝸牛こと飯嶋伶っぽいイメージがあるよね(逆だってば。
 で、全然関係ないけど蝸牛といって思い出すのは柳田の『蝸牛考』だけど、このかっちょいいタイトル(この感覚はわたしだけなのか?)にあの柳田の妙に洒脱な文体(この感覚も共有できるか心配だが)で内容もアレなので、『蝸牛考』はなんだか可笑しい。こういう柳田のエクリチュールの独特なかわいさとかってやはり好きなんだよな。仕事のために世相篇を借りたら、同じ巻に入っているので思い出したので。

2005年11月22日

山岸凉子『舞姫(テレプシコーラ)』8

 兎に角読んでいない人は是非読みなさい。
 でも出来ればテレプシの前に『アラベスク』一部二部と『黒鳥(ブラックスワン)』は読んだ方がいいかもです。

 あー。いい漫画を読むのはいい気分だぞっと。

 千花ちゃんがかわいそうでならない…足治るとよいね…山岸凉子が非情っぷりを発揮しないことを祈るばかりなり(笑。そして六花は最近わがままぶりというか子どもぶりが目に付くなあ。精神的にどかっと成長してくれたらいいなあ。
 富樫先生は六花大好きだね。ドロッセルマイヤーの衣装で六花を諭している富樫先生は、銀河鉄道の夜初期稿の、黒い帽子の大人ことブルカニロ博士のようだった。冨樫先生は『怒らない』ユーリ・ミロノフだ。どちらも忍耐深く、彼女の才能を愛している。これが少女マンガだったら、富樫先生は六花のパートナーになるかもしれないんだろうけれど…(笑。それはエグい。いや富樫先生カッコいいと思うけど。むしろミロノフ先生役は五嶋先生か(笑。あの人も面白いキャラだ。六花のこと嫌いなんだろうな。

 ところでわたし、六花ちゃんの中国の踊りのクララを見て、ずっとトレパークの曲を思い出してたよ。違うじゃないの。

 それにしても改めて思うに、千花ちゃんも六花ちゃんも、決して天才ではないんだよね。ノンナ・ペトロワのような努力型の天才ともちょっと違う(千花はちょっとそのケはあるけど。そいえば、空美ちゃんはどうなったんだ…もしか、千花六花が留学している間に出てくる予定かな?…先が長そうだ!

2005年11月23日

『The third eye』

 いやしくも文学研究者たろうと思ったり思わなかったりするわたし、が、こんなことを書いていていいのか。知らないね。むしろ、ピロウズの言葉をきちんと受け取ろうともしないのに(雑誌はもとよりハイブリ通信すら読んでない)ピロウズに印象批評してしまうことのほうが問題があるような。
 ま、なんにせよ、これは勿論批評ではない。


 妙に統一感のあるシングルですねアゥイエ。

#1「サード アイ」
 ここ数日のうちに、試聴を自分の中で美化しすぎてしまっていたようで、あらためて聴いたらちょっと拍子抜けしてしまった(笑。

 この曲の中でさわおは「シーラカンス」という言葉をつかっている。これはやはりたびたび使われる「深海魚」の仲間だと考えていいのだろうと思う。そして、「深海魚」「シーラカンス」という語彙の系譜はたぶんどうしても、どう考えても、さわおの友人桜井和寿/Mr. Childrenのアルバム『深海』における「深海」「シーラカンス」といった語彙を、踏襲か、少なくとも共有しているのだろうと思う。ちょっとくやしいけど(笑、でも個人的な関係性まではわからないけれど、さわおにとって表象としてのミスチル(ポップスターとしての)というあり方が、ある種の因縁じみた呪縛というかなんというかであるんだろうとは思う。0916でも、記念日にAXでライブするピロウズに、普通にツアーでドーム級の会場を使うミスチルを引き合いに出していたし。まあ、気にしないわけはないだろうとも思うし。

 じゃ、ミスチルにおける「深海」「シーラカンス」って何さ。『深海』(1996)のタイトルチューン「深海」は「僕の心の奥深く深海で君の影揺れる(中略)シーラカンス、これから君は何処へ進化むんだい、シーラカンス、これから君は何処へ向かうんだい」にはじまり、「今じゃ死にゆくことにさえ憧れるのさ」「連れてってくれないか」となる、まあ単純にある種の閉じた内省性の表徴みたいなもんであったと思うんだ。同アルバムの「シーラカンス」に「とはいえ君が、この現代に渦巻くメガやビットの海を泳いでいたとしてもだ、それがなんだって言うのか?何の意味も何の価値もないさ」とあるように、シーラカンスという言葉は、実在の生物の古代性を意識して使われてるわけで、そしてそれは「僕の心の中に君が確かに住んでいたような気さえもする」「ときたま僕は僕の愛する人の中に君を探したりしてる、君を見つけ出せたりする」というふうに自分に帰っていくように思う。つまりミスチルにおける「シーラカンス」は「あり得たかも知れない自己」「可能体としての自己」に重なるので、他者である「シーラカンス」とは自己内部のもう一人の他者みたいな存在だと思えるし、ミスチル/桜井和寿にとって、「深海」とか「シーラカンス」という語彙はイロニックな自己として考えていいのではないかと思う。

 ピロウズではどうか。「nowhere」(『リトルバスターズ』、1998)に「沈み続けて深海魚のように潰れていたいんだ、ねぇどうしてなんだろう、何にも欲しくない」とあったように、ピロウズでは「深海」という場そのものに重点が置かれてる。そしてまた「Rosy Head」(『グッドドリームス』、2004)の「深海魚の愛は理想像、たぶんね。キレイな世界だぜ」と、「深海」という場で諦めていたかのような「nowhere」から、その後は自分の世界をいかにつくっていくか、って方向に向かってたように思う。バスターズとつくる、「キレイな世界」。また、「シーラカンス」という言葉はこれまでにはなかったし、これまでのピロウズの「深海魚」は明らかに自己そのものの象徴みたいなものなのだと思う。ミスチルとかさねあわせると随分かなしいことになってしまうのでこれ以上は書かないけど、そんなふうに、読めなくもない、切ない。

 で、「Rosy Head」で「たぶんね」と言っていた矢先に、「サードアイ」で「平凡なシーラカンス楽しんだけど、満ち足りてるって言えなくなった」と、言ってしまうのださわおは(アメリカツアーぶち上げといて平凡と言ってしまうですか!という気も、若干(笑。
 「眩しい世界の扉が開いた、もう一度何かを始められそうなんだ」
 さわおは何処へ行くっていうんだろう。いずれにしても、そのさわおにバスターズが「連れてってくれないか」と言挙げるとしたら、それはミスチル『深海』のそれとは、全く違った意味となるだろう。だって勿論、何処だってついていくのだ。「メガやビットの海」だって、どこだってなんだって。

 えー。
 どうみても深読みです。本当にありがとうございました。
 (ミスチルもピロウズもこの言葉をつかってる曲はまだあった気がするんだけど。思い出したら追記する。
 (ちなみに「モンスター」の系譜の話もあるんだが、もう面倒なのでやめておく。

 や、単純にもう、カッコいい、いい曲ですよ。大好きです。

#2「Slow Down」
 そうすると、この「スロウダウン」とか「ノンフィクション」におけるそれこそ「遅延」というモチーフも、無関係ではないのかもしんない。
 レトロチックだ。

#3「ワカレノウタ」
 なんだかあんまりピロウズっぽくない曲かな?という気もする。どこが、とは上手く言えないんだけど…後奏とかのせいかなあ。キライなわけではないです。

 追記:「平凡なシーラカンス」について、イコールミスチルと捉える人が結構多いみたいで…さわおがどこかでそういう発言しているのかなあ。どうもそうは思えないのだが。

2005年11月24日

木々『ラヴミーテンダー』3

サードアイ!
 サードアイかっこよすぎ!
 ずっっっと聴いてるよ!

 なんか段々よくわからなくなてきたというか作者もよくわかってないんじゃないか?とか。
 結局、直行はなんで一成さんに女装癖を隠したかったんだっけ?と、まあ、ナオと母の行動原理が一番わかんないんだけど、まあそれはそういうキャラ設定だから、というせいもあるんだろう。けどなんだか全体的にみんななに考えてんだかわかんなくなってきちゃった。雰囲気マンガなのか?それでいいのか?でも、そうなのかもしれないなあ…うーん。

2005年11月26日

高口里純『世の中は僕らに甘い』4

 今の紬の微妙なモテモテぶりは面白いが、以前も書いたようにグダグダなまま終わったら淋しいので、なんとか前に進んでほしい。今グダグダなのはいい。面白いし、そういう話だと思うから。でも最終的には、なんとか決着をつけてほしい。
 というか、この巻収録分のあと、紬は結構動いているので期待していいんだと思うけど…なんとか誰かを捕まえて、落ち着いてほしいよ(笑、これも以前書いたように、椿とくっついてくれだなんてワガママ言わないよ、この際誰でもいいから(笑。

穂波ゆきね・桜木知沙子『てのひらの星座』

 穂波さんはがんばってると思う。原作が遺憾と思う。
 主人公の悩みだけが延々と描かれてる印象があり、漫画である必然性が感じられない。穂波さんの少女漫画チックなエクリチュールでなんとかやっと漫画として成り立たせているというか、それでごまかせてる感じ。瑞穂の描写ばっかりなせいで、円ちゃんの性格とか、なんで瑞穂が円ちゃんに惹かれたのかとかもよくわからん。星とか天文学関係のモチーフも全然活きてないし、タイトルも含めてとってつけたよーな印象。
 しかしあれだ、わたしは穂波さんの漫画はやはり好きらしい。いい原作に出会ってほしいなあ。

2005年11月29日

おおや和美・ごとうしのぶ『jealousy』

 つうか折込チラシのフジミの新刊予告の中に盗撮という単語があり非常に脱力。
 …何処へ行ってしまうんだフジミ!

 ななな何ですかこの恥ずかしい表紙は。

 恥ずかしい?恥ずかしいのかなあ。いや、わたしがそう感じるだけかも…うん、そうかも。なんかさあ、このメガネギイは個人的にはすごく好みではあるんだけど…ギイだと思うとめっちゃ違和感。だから恥ずかしいというか、うわっ!て感じなのかもしれない。しかし…こうなってみると、やはり二年生の時のちょっとかわいいギイのほうがよかったなあ…(涙。

 まあ、内容は数百倍恥ずかしかったですけど!
 特に、美貌のディテイルの最終話最終ページとか、ねえ…(笑。いやはや、好きですけどね(笑。
 書き下ろしのバレンタイン話はごとうさんのリクらしいので、どうやら作者は本格的に利久政史ペアにハマっているらしい、と理解した。理解はしたが納得はできない…いや、やはり未成熟なペアのほうが面白いってのは充分よくわかるんだけど…、ほかにいっぱいカップルいるじゃないか(涙、って、正直思うよ…。
 でもあのセリフとかって、たぶんおおやさんのオリジではないと思うのよ。だっていかにもーなごとうしのぶのエクリチュールだったし。だから、きちんとプロット自分で書いたんだろな。わたしはやはりあの文体好きかもしれない…や、夏からこっち、利久政史しか読ませてもらえてない鬱憤が、妙な愛情に昇華してしまったのかしらん(笑。

 あと、表紙のデザインがこれまでのと違う。装丁のデザイナー変わったの?シリーズでデザイン統一されないのって、個人的にはいや~んな感じ。

 追記。読み返してみたら、バレンタインルーレットはほぼ原作どおりだった…アレ?最初読んだ時は、原作とはちょっと違うという気がしたんだけど。気のせいか。

2005年11月30日

秋月こお『センシティブな暴君の愛し方』(その1)

 「盗撮事件」という言葉だけ見たときにはおいおいおいおいと思ったものだけれど、まあ別にどうってことはなかったよ。

 なんか、全体的に前巻『弟子達』でふりまいた伏線を回収しつつ、それぞれを更に先へ延ばしてる感じ。これでは『弟子達』が薄かったのも仕方がないかな、と思えてしまった。『弟子達』と『暴君』を一冊でまとめてもよかった気がするけど…それでは濃すぎるか。

 なので、全体に散漫な気もしたけど、それが瑕疵とは感じなかったな。それぞれに面白かった。むしろ、薄くてもいろんな話が楽しめた感じ。飯田さんと話してて昔のバイオリンのこと思い出すところとかね。

 先に進めるっていう点では、飯田さんとのデュオとか、なんてオイシイ展開なんだ…!(笑。超楽しみ。圭は弟子を是非とってほしい。薫子と高嶺の共演というか邂逅も是非。ていうか、そろそろ高嶺は来日すればいいのに。弟子たちのほうも、数馬がそのうち一家ごと悠季にベタ懐きするんだろーな~と勝手に想像し、すっごく楽しみ(笑。杏奈くんの方も気になるけれどね。とりあえず、このあたりは是非回収して欲しい伏線だな…だって、どれもこれも楽しみなので。

 あと、作者があとがきでちょっと触れてたけど、わたしは「センシティブな暴君」は圭だと思っていた。なので、桐ノ院のベベっぽさがまた発揮されるのか~、とタイトルの時点で正直ちょっとうんざりしてたんだけど(笑、でも結局恐れていたような桐ノ院ご乱心展開はなくって、安心した。出来ればこれ以上桐ノ院にガッカリしたくないもの。
 ちなみに、でも実は雪中ご乱心はアリ派です。ティレニア海横断ご乱心はナシ派です。…我ながらなんでだ?音楽上の問題なら、別に構わないのかな。

 ところで、西王路さんに連絡をしなかったことで、ああやっちまったよ、って思ってるところとか、ああまたこういうこと別に書かなくてもいいのにい…と思った。別に、単純にそろそろ会いに行こうか~でいいじゃん。現実社会ではすべきことだったとしても、別に物語の中ではスルーしといていいじゃん。特に今回はそれほど非常識なことだとも思われなかったので、余計にそう思うのかも(あんまし非常識な主人公は、それはそれでいやだし。わたしのニガテな秋月こおの身もふたもなさって、こういうとこなんですよ。こういうのなんていうのか思い出した。言わぬが花って言うんだ。

 まあそんなことも若干ありつつ(上記の文句はほぼ言わぬが花と言いたかっただけだ、全体的に不満はほとんどなくって、楽しかった。面白かった。誤植、あった?わたしは気づかなかったよ…。
 あと、挿絵がいっこもなかったね。うわーん。これは不満というか不安。後藤さんの産休の影響なのか、作者の締め切り破りの影響なのか。

 とりあえず、初読の感想はそんなところで。たぶんまた追記します。

 あっそうだ、あの比喩はどうかと思ったよ!あはははは。

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