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[ 音楽/ピロウズ ]

『The third eye』

 いやしくも文学研究者たろうと思ったり思わなかったりするわたし、が、こんなことを書いていていいのか。知らないね。むしろ、ピロウズの言葉をきちんと受け取ろうともしないのに(雑誌はもとよりハイブリ通信すら読んでない)ピロウズに印象批評してしまうことのほうが問題があるような。
 ま、なんにせよ、これは勿論批評ではない。


 妙に統一感のあるシングルですねアゥイエ。

#1「サード アイ」
 ここ数日のうちに、試聴を自分の中で美化しすぎてしまっていたようで、あらためて聴いたらちょっと拍子抜けしてしまった(笑。

 この曲の中でさわおは「シーラカンス」という言葉をつかっている。これはやはりたびたび使われる「深海魚」の仲間だと考えていいのだろうと思う。そして、「深海魚」「シーラカンス」という語彙の系譜はたぶんどうしても、どう考えても、さわおの友人桜井和寿/Mr. Childrenのアルバム『深海』における「深海」「シーラカンス」といった語彙を、踏襲か、少なくとも共有しているのだろうと思う。ちょっとくやしいけど(笑、でも個人的な関係性まではわからないけれど、さわおにとって表象としてのミスチル(ポップスターとしての)というあり方が、ある種の因縁じみた呪縛というかなんというかであるんだろうとは思う。0916でも、記念日にAXでライブするピロウズに、普通にツアーでドーム級の会場を使うミスチルを引き合いに出していたし。まあ、気にしないわけはないだろうとも思うし。

 じゃ、ミスチルにおける「深海」「シーラカンス」って何さ。『深海』(1996)のタイトルチューン「深海」は「僕の心の奥深く深海で君の影揺れる(中略)シーラカンス、これから君は何処へ進化むんだい、シーラカンス、これから君は何処へ向かうんだい」にはじまり、「今じゃ死にゆくことにさえ憧れるのさ」「連れてってくれないか」となる、まあ単純にある種の閉じた内省性の表徴みたいなもんであったと思うんだ。同アルバムの「シーラカンス」に「とはいえ君が、この現代に渦巻くメガやビットの海を泳いでいたとしてもだ、それがなんだって言うのか?何の意味も何の価値もないさ」とあるように、シーラカンスという言葉は、実在の生物の古代性を意識して使われてるわけで、そしてそれは「僕の心の中に君が確かに住んでいたような気さえもする」「ときたま僕は僕の愛する人の中に君を探したりしてる、君を見つけ出せたりする」というふうに自分に帰っていくように思う。つまりミスチルにおける「シーラカンス」は「あり得たかも知れない自己」「可能体としての自己」に重なるので、他者である「シーラカンス」とは自己内部のもう一人の他者みたいな存在だと思えるし、ミスチル/桜井和寿にとって、「深海」とか「シーラカンス」という語彙はイロニックな自己として考えていいのではないかと思う。

 ピロウズではどうか。「nowhere」(『リトルバスターズ』、1998)に「沈み続けて深海魚のように潰れていたいんだ、ねぇどうしてなんだろう、何にも欲しくない」とあったように、ピロウズでは「深海」という場そのものに重点が置かれてる。そしてまた「Rosy Head」(『グッドドリームス』、2004)の「深海魚の愛は理想像、たぶんね。キレイな世界だぜ」と、「深海」という場で諦めていたかのような「nowhere」から、その後は自分の世界をいかにつくっていくか、って方向に向かってたように思う。バスターズとつくる、「キレイな世界」。また、「シーラカンス」という言葉はこれまでにはなかったし、これまでのピロウズの「深海魚」は明らかに自己そのものの象徴みたいなものなのだと思う。ミスチルとかさねあわせると随分かなしいことになってしまうのでこれ以上は書かないけど、そんなふうに、読めなくもない、切ない。

 で、「Rosy Head」で「たぶんね」と言っていた矢先に、「サードアイ」で「平凡なシーラカンス楽しんだけど、満ち足りてるって言えなくなった」と、言ってしまうのださわおは(アメリカツアーぶち上げといて平凡と言ってしまうですか!という気も、若干(笑。
 「眩しい世界の扉が開いた、もう一度何かを始められそうなんだ」
 さわおは何処へ行くっていうんだろう。いずれにしても、そのさわおにバスターズが「連れてってくれないか」と言挙げるとしたら、それはミスチル『深海』のそれとは、全く違った意味となるだろう。だって勿論、何処だってついていくのだ。「メガやビットの海」だって、どこだってなんだって。

 えー。
 どうみても深読みです。本当にありがとうございました。
 (ミスチルもピロウズもこの言葉をつかってる曲はまだあった気がするんだけど。思い出したら追記する。
 (ちなみに「モンスター」の系譜の話もあるんだが、もう面倒なのでやめておく。

 や、単純にもう、カッコいい、いい曲ですよ。大好きです。

#2「Slow Down」
 そうすると、この「スロウダウン」とか「ノンフィクション」におけるそれこそ「遅延」というモチーフも、無関係ではないのかもしんない。
 レトロチックだ。

#3「ワカレノウタ」
 なんだかあんまりピロウズっぽくない曲かな?という気もする。どこが、とは上手く言えないんだけど…後奏とかのせいかなあ。キライなわけではないです。

 追記:「平凡なシーラカンス」について、イコールミスチルと捉える人が結構多いみたいで…さわおがどこかでそういう発言しているのかなあ。どうもそうは思えないのだが。

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