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2009年10月01日

「アリオーソ」5

 私は懐かしいサンクチュアリに立っていた。
 ふわりと乾いた風が頬をかすめる、懐かしい砂埃とかすかな緑のかおり。
 目の前には、サガと、そしてアイオリアによく似た男が立っていた。驚くべきことではあるが、おそらく彼は射手座の――
「お帰り、アフロディーテ。お前は甦ったのだ」
「…え?」
 サガが優しげに微笑んでいる。うまく声が出ずこほ、とちいさく咳をした私に、アイオロスが晴れやかな笑顔で言った。
「久しいな、ディーテ。元気だったか?」
「アイオロス、元気なわけがなかろう。彼は今の今まで死んでいたのだ」
「だがおれが死んで後は元気だったのだろう」
 サガとアイオロスの暢気なやりとりについて行けず、黙ったまま見守っていると、サガがこちらににっこり微笑んで口を開いた。
「アフロディーテ、聖戦は終わったのだ。そして、アテナは聖戦に貢献した聖闘士たちを、そのお慈悲で甦らせてくださった。まあ、冥界との取引などもあったようだが…とにかく、お前は再びピスケスのアフロディーテだ」
「…そんなことって」
 動揺のあまり声が震えるのが、自分でもわかった。
「いや…現世に戻らせていただくまではわかりますが、…ピスケスとして、というのは、しかし」
 私の言葉にまなざしをゆらがせたサガにかわって、アイオロスが朗らかに笑った。
「その理由も正当性もそのほかのことも、これからゆっくり悩めばいいさ。まだ随分、時間の猶予ができたようだから」
「…そうだな、アイオロスの言うとおりだ。アフロディーテ、とりあえず自分の宮で休みなさい。休んで、それからゆっくり話そう。後で皆と顔をあわせる時間をつくるつもりだよ」
 サガはそう言って私の後ろの双魚宮を示すと、そのまま教皇の間の方へと歩き出した。アイオロスはその後に続きながら、私に振り返るとまた笑った。
「お前で最後だ。私たち二人のほかは、下階の宮のものから甦らせたそうだから。待たせてしまって悪かったな」

 私はぼんやりと二人を見送り、それから双魚宮をしばらく見上げ、くるりと踵を返した、そのまま走り出す。身体は意のままに軽い。昨日の続きのように、しっくりと私の身体だ。十二宮をつなぐ階段を一段飛ばしで降りてゆく、スピードがどんどん早くなる。磨羯宮のあたりでシュラとすれ違ったような気がしたけれど、声をかけるいとまもない。
 一心に前だけを見つめ十二宮を駆け降りる私の背中に、明るい声が聞こえた。
「Ciao, bello! Sei belissima assai!」
「…あ!」

(つづく)

2009年10月02日

山中ヒコ『丸角屋の嫁とり』

4403662587丸角屋の嫁とり (ディアプラスコミックス)
新書館 2009-09-30

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 面白かったけど、ちょっと物足りなかった。

 表題作は、武家の側室の子が正室の嫉妬を恐れて姫として育てられ、なんか評判わるい商家に借金のかたに嫁によこせとか言われて父はほいほいと息子を嫁に出したのだけれど云々。
 女装受けはあまりすきではないのだけれど、この受けはかわいらしいながらもかっこよくてよかった、のでまげになってしまって…、や、それでもかわいいんですけど…(笑
 攻めが受けにめろめろのジェラスしまくりなのだが、話の構成上なんか攻めの受けラブはあんまし描かれないので、そこがちょっと物足りなかった。

 ヘタレリーマン後輩×メガネ先輩の前後編の方も、面白いけどちょっと物足りない感じだった。ふたりともそれぞれに心にあいた穴をかかえつつ、という重めの設定が、なんかあんまし活かしきれてはいないような…。

 いずれにしても、短編ではなくて三話以上の連載もののほうがこの作家さんは面白い気がしたのです。
 かわいそう設定が好きな作家さんなんだろうなという気がするし、そのかわいそうさの描写の仕方とかもあたし的にストライクな感じなので、なおさらがっちり連載ものな作品が読みたいなあと思うのです。

「アリオーソ」6

 急ブレーキをかけたために、私は前につんのめりそうになった。
「…あっぶねえなあ、ったく。そんなに急いでどこに行くってんだ? 生き返ったばっかりで、一体何をするつもりなんだよ?」
 私の腕をとって転ぶのをふせいでくれたのは、あの男だった。私は彼を睨んでやった。
「あぶなかったのは、君がいきなり声をかけて私を驚かせたからだ…君も甦っていたのだな」
「なんだよ」
「サガは聖戦に貢献した聖闘士が甦った、と言っていた。君もちゃんと甦っていたのだな。もしやだめかと心配してしまった」
 私の言葉を嫌味と受け取ったのか、男はいやな顔をしたが、反論はしなかった。自覚があるのだろう。
 私はきちんと彼に向かい合った。せっかく甦ったというのに、相変わらず昏い男だ。服装も相変わらず下品すれすれの派手な服で、そういえばアテナが私たちを甦らせてくださった時には、一体どのように服を選ばれたのだろう。私は簡単な白いシャツなのだが。
 …いや、服のことは今はどうでもよい。私はこほんと空咳をして、彼の目をまっすぐに見つめた。
「ところで、先ほどの言葉だが」
「あ?」
「イタリア語だろう。もしかして、最初に会ったときもあのように言っていたのか」
「…あー、よく覚えてたな」
 んな古いこと、とぼやく彼に、私は真面目な顔をつくろった。
「…デスマスク」
「なんだよ」
「ti amo」
 彼は驚いた顔で私を見返した。
「と、いうのだろう、確か。びっくりしたか? こう見えて私は、テレビの講座でイタリア語を勉強していたのだ。ずっと君にきいてもらいたかった。君はシチリア島出身だと聞いていたから」
 ti amo、愛しているという意のイタリア語だ。初級の講座のごく冒頭から登場していたこの言葉は、イタリアでは相当頻出の言葉なのだろう。軽薄なものだ。
 デスマスクは少し黙った後、ふいと横を向いて呟いた。
「…ti amu」
「え?」

(つづく)

2009年10月03日

「アリオーソ」7

「シチリアの方言だとti amu、になる」
「…そうなのか。ti amu、か」
 私は素直に頷いた。デスマスクは少し笑うと、やっと私の目を見た。
「ま、お前は標準語で充分だろ。なんだよ、恋人がイタリア人なのか?」
「そうなるといいと思っている。どう思う?」
 問い返す私に、彼はまたふっと笑った。相変わらずいやな笑い方をする男だ。
「テレビで覚えたにしちゃ悪くない発音だったぜ。愛を告げる時には、花でも一緒に渡してやりな。お前の得意な薔薇でもさ」
「薔薇か。薔薇は今ない。では、だめなのだろうか」
「は?」
 変な顔をしているデスマスクに、私はなおも言いつのった。
「返事をきかせてほしい」
「…は?」
「君にきいてもらいたかったと言っただろう。ti amu、君が好きだ。最初の死より前から、ずっと」
「……………は?」
 壊れた機械のように反応が鈍くなってしまったデスマスクの返事を、私は辛抱強く待った。アイオロスの言っていたとおり、時間はたっぷりあるのだ。

 彼が私を嫌いでも、からかっていても馬鹿にしていても、なんでもいい。でも、私の外見くらいには、興味をもってくれるだろうか。
 なにしろ私は自分の美貌にだけは多少の自信があるし、そして彼のくれた本当に数少ない言葉たちは、きちんとすべて覚えているのだ。まだほんの幼い頃の、初めて出会ったときの言葉さえも。

『Ciao, bello! Sei belissima assai!(よお、美人!マジでイカスな!)』

(おしまい)

---
 唐突に、ン年ごしの、そして初めての星矢二次、初めてのデスアフロ、です。
 星矢二次はともかくとして、まさかよもやデスアフロを書くことになろうとは…ン年前の自分には、というかほんの一年半前の自分にも、思いもよらなかったことでございます。萌えというのは、ほんとうにわからないものですね(笑

 まえがき(?)のとおり、あたしが最も敬愛している(現在形で)星矢サイトさま、お名前を出してしまいますが、BOOTSTRAPさまがいらっしゃらなくて、さびしくて仕方のないこの頃なのです(ご復活を心から願っております。そんなもんもんとした気持をここ一年くらいずっと持っていたのですが、とっても唐突に、発作的にこのような二次を書いてしまいました。校正もしていないのでへんなところも多いですし、また手を入れるかもしれません。あと(あえて)原作を読み返してないので、二次創作のイメージ先行ですがまあいいか。

 はずみがついてしまったので、もうちょっと書きたいですね、星矢二次。デスアフロもいいし、サガリアとかロスリアとかもいいな(笑

2009年10月06日

高井戸あけみ『男子、花園に出ずれば』

 疲れがたまっているのです。漫画読む時間もあんましない。一週間くらいなんもしないでやおい的なことだけ考えてみたい。

4832286358男子、花園に出ずれば (花音コミックス)
芳文社 2009-09-29

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 表紙を見てあれ、えー?BFC…じゃない?同じ学校が舞台で違うキャラ…???と、微妙な気持ちになったのですが、そしてまあ微妙な気持ちはなくならなかったけど、そこそこ面白くもあったというか。

 寮生×堅物生徒会長みたいな。寮の下着盗難事件をきっかけに、空手の腕がバレで空手部の生徒会長に手合わせ申し込まれるけど断ってたら、なんか会長が家の都合で入寮することに。

 同じ学校はいいとしてもまた生徒会長かーしかもまたクールビューティ系かー三木先輩とかぶるじゃないか、と思ったのだが新しい会長は三木とはやはり違っていてそこそこよかった。最初からゲイだし、結構かわいげあるし、けどやはり三木と比べてしまうのでちょっとキャラが物足りない。
 攻めもちょっとキャラが薄い。
 モブたちは一気に大勢出てきて覚えるので精一杯だった。
 というか全体的に、単体としてそこそこ面白いし、BFCパート2としてもそこそこ面白いのだけれど、旧BFCと比べてしまうとなんだかちょっと物足りないかも…?と、ついつい思ってしまう感じだった。

 ほかの短編も同じ学校の話だったというか、結局あとでつながってくる感じ。
 決して悪くないし、今後に更に期待してます。

2009年10月09日

笠井あゆみ『オトコの花道』

 今週も疲れたお…。

481247163Xオトコの花道 (バンブー・コミックス 麗人セレクション)
竹書房 2009-09-26

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 なんというか、カオスだった。
 笠井あゆみといえばひたすら耽美な印象だったのだが、なんか耽美書き込み過多ギャグ、というよくわからんジャンルの短篇集だった。美味しんぼやおいのあの世界まんまだったので、耽美よりもこっちが本職らしいというか、本職にしたいらしいことがやっと理解できた。しかしギャグはギャグなんだろうが、面白いのか面白くないのかもなんかよくわからん。とりあえず、あんまりBLではないのでその点はで残念。

 あと、昔の絵はそれは確かに相当耽美なのだが、最近の絵はそうでもないというか、適度に中和されてBLコミックらしい絵になっててなかなかよい感じ。以前のひたすら耽美な感じの絵も、この人にしか描けないだろうから貴重ではあったのだろうが…しかし漫画という観点でみるとやっぱり今の絵の方がいいように思う。

 表題作は4コマシリーズで、やっぱりあんましBLではないけれど、これが一番面白かった。無自覚フェロモン男子高校生に老若男女とわずメロメロな話。
 しかしP数が少なく、4コマということもあり、かなり物足りない。そして続編が竹書房の携帯サイトで連載中ということで、初めて携帯で漫画を購入してしまった。
 コミクス部分の続きでは、ママの尽力でピーちゃんの反抗期は終了し、武蔵とコウタも仲直り(?)H。お話は今後寅之助の武蔵→寅之助な勘違いとか、コウタのフェロモンの秘密?などの展開になりそうな感じ
 中々面白いし、続編のほうがBLっぽくなってきてるのでそれはよかったんだけれど、しかし携帯の漫画って高いな…。コミックス一冊が八百円とかか。高すぎる。

2009年10月11日

山田ユギ『人はなぜ働かなければならないのか』

4812471672人はなぜ働かなければならないのか (バンブー・コミックス 麗人セレクション)
竹書房 2009-10-07

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 なんとなくよしながふみみたいな表紙だなあと思った。マットだし。

 表題作のシリーズは、仕事のできないバツイチ40オヤジ上司←イケメン部下。オヤジ受けかと思ったらイケメンの襲い受けで、イケメンが泣き落としたり策略したりでのんきなオッサンがほだされたりだまされたりする話。コメディタッチで面白かった。

 高校時代からの先輩にずっと片思いしてたら、知らぬ間に先輩が彼女と別れてかわいい男の子とつきあってた話は、なんか後味悪かったなあ。先輩の元彼ちょっとかわいそう。先輩も自覚したてでいっぱいいっぱいだったという状況と、ドS元彼も浮気したりしてたようだが…何でつきあったんだろ?あ、先輩がドMだからか。メガネの髪長めのイケメン後輩攻めがカコイイ。

 ブラジルに配属されたよく覚えてない同期と電話で話す話は、攻めは電話だけでよく好きになったなと思うし、実際会ったのは二度目でくっつくとか、ちょっとファンタジックではあるが面白かった。メガネの髪長めのイケメン同期攻めがカコイイ。
 …メガネっていいよねえ。

 しかしあとがき見てて、あれ?ママに彼氏なんてできたんだっけ???と思い、既刊の麗人コミクスのあとがきみようとしてついつい読みふけってしまった…。

2009年10月13日

『OOPARTS』

B002JM5NH2OOPARTS【初回生産限定盤】
SAWAO YAMANAKA the pillows
avex trax 2009-10-14

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 アーゥイエー買ってきたぜ。
 タイトル、オーパーツはなんか時代遅れの遺物っぽいニュアンスでつけたらしいのだけれど、オーパーツって、あたしとしてはむしろ時代を超先取りした人工物ってイメージが強かったので、さわお強気だなーなんて思ってたんだけどなあ(笑。
 それ以外はなるべく情報入れず、試聴もせず我慢してきたので、とりあえず一周。一周40分だって。

#1「ダンスウィズゴッド」
 ヘンなイントロキター。でもなんかあんまピロウズっぽくない気がする。ちょっと長い。一曲めにしてはインパクトに欠けるような気もする。
#2「ユアオーダー」
 なんかまたあんまピロウズっぽくないなーけど拍ぐるぐるの曲は好き!
 あれだ、ピロウズっぽくないけどジャケ写っぽい。テキサスっぽい!
#3「メロディー」
 ライブで聴いてた曲だ!ピロウズらしいというかさわおっぽい歌詞の曲だよね…あ、犬と仲直りの曲か(笑、ライブで聴いたの結構前かも。パイドパイパー。
#4「レモンドロップス」
 オーバーアンプみたいなイントロ。心地よし。ん?サビの歌詞はもしかしてニルヴァーナ?(笑
#5「フォクシーズ」
 また変ないい曲!でもなんかあれだ、今回全体になんだろう、ニルヴァーナ?じゃないなあ、でも洋楽っぽい曲が多い気がする。さわおは何か新しいバンドを好きになったのだろうか。
#6「ビヨンドザムーン」
 インスト?…これライブでやるの淋しくないか、と思ったら違った。あーなんかまたあたしのあんまり得意でないピロウズらしい曲なのかな、そんな気が…。ちょっと古きよきJポップみたいな。
#7「ジョニーストロボ」
 なんかまた斬新なサビキター。
#8「雨上がりに見た幻」
 既になじんでいるイントロ(笑。しかしこうしてCDで聴くと、サビでのさわおの若者っぷりがハンパないな。アラフォーなのに!
#9「ライフサイズライフ」
 あっこれはあたしの好きそうな曲!英詩多いね!
#10「プライマービート」
 このタイトルでこのビート…ベタな!(笑。…あっとゆうまだったな!

 なんかほんとあっとゆーまで、あんまし印象が決まらないというかまだぜんぜんよくわかんない感じ。しばらく聴き込みますv

2009年10月15日

いつき朔夜『初心者マークの恋だから』

4403521983初心者マークの恋だから (新書館ディアプラス文庫)
いつき朔夜 夏目イサク
新書館 2009-09-09

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 あー。すみません、どうしてもダメでした。
 正直ショックです。好きで作家買いしてた作家さんだし、発行遅れて待ってた本だったのですが、どうしてもあたしには合わなかったのです。
 この話が面白いかよくできてるかどうか、ということではなくて、たぶんあたしに合わなかった…ということなのだとは思うのですが…。

 新任高校教師は、要領悪くて部活の仕事とか押しつけられがちなのですが、要領よく仕事断ったりしてるやな同期とのいざこざにからんんで他校の年上のせんせいと出会い、あらいい男。しかしチェリーでチキンな受けは逃げ出してしまい、後日弁論部の仕事で再会、攻めは怒っているぽいけれど、いっしょに仕事していくうちにいい感じになんだかんだ…。

 そもそも受けの名がケンキチで、生徒間でのあだながケンチキ?というのがどうしても肌がぞわぞわした。
 ちょっと年上のカコイイ攻めにくどかれて即ホテルの部屋へ、はまあいいとしても、鏡で貧相な自分の身体を見て自信喪失して攻めがシャワー使ってる間に逃げ出すあたりも誠意なくてオイイィィ!だった。
 再会した攻めは、やはり少し先輩で大人でカコイイ…らしいのだが、なんかオッサンくさいというかダサイ系のカッコつけを感じるというか、うまくいえないのだがとってもあたしの苦手な感じだった。ラップで暗記とか痛い…。

 なんかそんな感じで、全編にわたりなんかもうあたしの感覚にすごくあわなくて、とばし読みした。なんでだろうね…ここまでの拒否反応なんて久々だし、理由もいまいちはっきりしないのがきもちわるいし、しかもそれが好き作家の作品だったというのはショックですね…。

2009年10月16日

葛井美鳥『ラストマスター』

4537124970ラストマスター (ニチブンコミックス)
日本文芸社 2009-09-28

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 『レンタル・ラヴァー』と同じ世界の葛井美鳥のアンドロイドもの第二弾?

 アンドロイド会社社長の息子は、アンドロイドを利用する人間とかアンドロイドが主人のためになんでもしてしまうことに嫌悪を覚えるようになり、ボクシングで身を立てようとするも、実家の追手を恐れてアングラな賭ボクシングの選手をしてる。そこに護衛のためといって社のアンドロイドがやってきて云々。

 アンドロイドはいいね。アンドロイドは心をうるおしてくれる。リリンの生んだ萌えの極みだよ。

 護衛アンドロイドの気遣いはどうせプログラムなんだろ?という、ベタながらアンドロイド萌えの重要な要素がとってもよいですね。作者もアンドロイド萌えの人らしいので、きちんと萌えツボをわかってくれてる感じですね(笑。この作者にしては受けがショタっぽくないとこもいいですv
 かつて友だちだったアンドロイドが、主人公が思いやりを見せたために人間のいいように使われることが苦しくなって逆恨み、社と主人公の命をねらう組織をつくり云々、というあたりも萌えですね。こっちのアンドロイドはおんなのこですが(笑、ですがって何だ。
 あと、父社長の遺した秘書アンドロイドが、父への忠誠心で役目をおえたいというとことか、主人公にも結局なついて護衛アンドロイドと主人公をめぐり火花をちらす、とかいう展開もいいですね。
 敵組織とか秘書アンドロイドとか、この先の展開に期待なのです。

2009年10月17日

西田東『ラブストーリー』

4403662595ラブストーリー (ディアプラスコミックス)
新書館 2009-09-30

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 なんだか西田東読むの久々だなあ。
 表紙の中世設定に惹かれて読んでみた。

 表題作は、修道院で育てられ、同性愛者であることを苦にして巡礼中の青年が騎士に出会う話。そういうこと未満なので攻め受け不明。
 西田東らしい話だった。騎士がいろいろ事情もあってわりと嫌な奴で、けど隙だらけでかわいいので受けがグっとくるあたりとか、ラストの余韻とか、西田東らしかった。

 現代の遭難ものは、別部署の偉いさん×今時の若者でゲイ。出張の際に無人島で二人きり。これも西田東らしい話だった。

 …絵があまりうまくならないな(笑。それはさておき、なんかパターン化してるのかな、なんかいまいち物足りなかった。つまらないわけではないし、どんな話でも西田東らしさがあるという意味では安定感があるともいえるのかもしれないけれど…うーん、もうちょっと変わり種も読んでみたいのだが。とはいえ、最近では全作品を通して読んでるわけではないので、あまり大きな感想を言うのもよくないかもね。

2009年10月18日

海野幸『愛のカレー』

4576090895愛のカレー (二見シャレード文庫 う 3-4)
海野幸 上田規代
二見書房 2009-06-23

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 少し読んでちょっと合わなさそうだったので積んでいたのだが、一応読んでみてやっぱりあんまり合わなかった。

 地方の兄弟の多い家出身の受けは、理系でなんか科学っぽい比喩とかよく使い、恋愛とかに不慣れで天然純粋な感じ。兄弟多かったせいで一人暮らしなのにごはん大量につくっちゃうんだけど、おなかすかせた攻めに餌付けしてなつかれちゃう。攻めはお弁当屋の社長で、いくらたべても満たされない病気なので、受けの大量のご飯に引き寄せられるも、まだまだ足りない…。

 なんだろう、食欲と恋愛がかさなるありようが、すごく違和感があってなじめない…料理や食べ物がからむBLなんていっぱいあるのに、なぜかこの作品は違和感…。攻めの病気の理由とか解決方法はよかったのだが、なんか恋愛にしなくてもいいんじゃない?という印象で、むしろそんな関係になるとことか微妙な気持ちで読み飛ばした。受けの理系設定とかもふくめて、なんかわざとらしさを感じるというか、筋とかキャラ設定とかが先行してる印象もある。
 続編もなんだかいたたまれず、三本目は受けの先輩と社長秘書との話だったのでよかったのだが、なんか変わり者先輩がいきなり実は美形とか言われると、逆に萎える…。

オーパーツ。

 ダンスウィズゴッドはふつうにいいよね。一曲目には違和感あったけど、一曲目にしか入れられない曲かも知れない。パイドパイパー、ドードー、マイフット系の一曲目だよね。…ってことは、最近そういうの増えてるということなのか。しかしこれまでの三作はタイトルチューン的な曲だったけど、今回はどうなんだろう?歌詞カードまだ見てないからよくわからない。
 ユアオーダー、メロディはほんと最近のピロウズっぽい歌詞で、まあ普通に好きだ。
 レモンドロップス。いやー、タイトルだけみたときには、まさかこれがくるとは思わなかった…。歌詞カードみてないけど、サビはニルヴァーナパロだと思うのだけれど、たぶんHello, Hello, How Rock!かな、が、サイコー。気持ちいいね!
 フォクシーズはやっぱりAメロはスメルズライクぽい?サビもなんか元ネタありそう。サビ、ミスチルインディーズ時代のスケットメンだっけ?にちょっとだけ似てるような気もするので共通の元ネタがあったりして。
 ビヨンドザムーンはどうしても苦手だなあ…。君と僕とお月様ぽいけど、お月様のほうがすき…。でも、というのもあれだけど、これはライブでやるだろうな。
 ジョニーストロボ、なんだか一番すきかもしれない。すごくいい!星がきらきらしてる感じでなんだかかわいい…三分ないぞ!?(笑
 雨上がりの幻は、いいんだけどなんというか、ピロウズじゃなくてもよくない?という気もすこしする。あたしの中ではストカメ、スケアクロウとかと同じくくりだ。つまりすごくいい曲なんだけど、あまりにメジャーというか、さわお以外の人でも書きそうというか。…なんかもう、地味なピロウズしか受け付けないというのはダメなバスターズだなあ、という気もするが(笑
 ライフサイズライフはふつうにいい。ちょっとサビが古くさいけど。
 プライマービートはタイトルそのままな感じ。

 十曲で四十分はかなり短いとは思ったけれど、二分台の曲が三曲もあるのね。ライブどうすんだろう(笑。一時間半くらいで終わりそうだ(笑。

2009年10月19日

「新世界」1

※蟹魚です。




「新世界」
 ――或いは、死神聖闘士の園芸日記


 あれこれの紆余曲折をへて、おれはサンクチュアリに戻ってきた。
 久しぶりのサンクチュアリは案の定全く相変わらずで、おれをうんざりさせてくれた。
 おれとしては、陰気な上に死ぬほど退屈な巨蟹宮にまた閉じ込められるくらいなら、この世に戻って来られようが来られまいがどうでもよかった。だが、また冥界に行くのも本当に死ぬのも多少面倒だったし、アテナの恩着せがましい微笑みに反抗するのももう面倒くさかったから、殊勝に感謝するフリをしておいた。

 まあ折角だから、アテナの命令だのの仕事は適当にやり過ごしておいて、時々サンクチュアリを抜け出して。美味いワインでも飲んで、綺麗なお姉ちゃんと仲良くして――あと何年か、何十年か、そんな風に過ごしてまた死ぬだけだ。本当、どうでも構わない。
 何もかもどうでもいい、それは本当なんだがしかし、久々に戻ってきたサンクチュアリは全く相変わらずで、大いに変わっていた。おれが丹精した薔薇が、大いに狂い咲きをしていたのだ。


(つづく)

2009年10月20日

古街キッカ『悪魔でハニー』

4813052126悪魔でハニー (ミリオンコミックス Hertz Series) (ミリオンコミックス Hertz Series 66)
大洋図書 2009-10-01

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 表題作、正直ほとんど期待していなかったのだが、面白かった…!
 だって、ある日押しかけ悪魔がやってくるというのはまだしも、それがこの表紙みたいなピンクの髪のかわいい系とかだとちょっとどうなの…しかもその悪魔がオタクという設定もこのルックスでオタクとかかえって微妙…とか思ってた。

 オタク悪魔のマイペースぶりオタぶりとか、婚約者の悪魔のダメっぷりとか、なんかとても面白かった。後半になるに従ってどんどん展開がなめらかになり、もう各コマ一カ所は笑いどころがあるくらいだった。
 ていうか、むしろこれBLじゃないほうがいい気がした(笑。BL分は、王子の婚約者のドジっ子美形メガネが一手にになってほしい(笑。主人公と悪魔はCPはないほうがいい。ていうか、ドジっ子の契約者彼氏とか、一こまくらいしか出てこないのに、裏表紙にまで出張ってるし(笑。
 しかし悪魔のオタネタは半分もわからなかった…。あとで調べてみようかな。

 クラスの優等生が、チャラ男先輩にもてあそばれてんのを見て、チャラ男ラブな優等生に興味を持つ話は、最後の展開がうおおーって感じで、すごく面白く、且つ物足りなかった…!これメインCPだけでもうちょっと読みたい…!ていうか、初出雑誌確認してあああ成る程…って感じだった…。

『悪魔でハニー』オタク悪魔の元ネタ探し。

 というわけで、『悪魔でハニー』のオタクネタ、まずは自力で想像ついたものを書き出してみた。
---
グレーの髪の転校生=?…あっ。もしかしてカヲルくん!?
正真正銘の魔界人、団長も気に入ってくれるだろう=ハルヒ
宇宙人が襲ってきたら歌か水=マクロスとなにかか?
光るオッドアイ=ローゼンメイデンですかね
「だよねーくさいよねー」=?
男子校にいる男装の女子=花ざかりの君たちへ
机の中で何か飼ってるルームメイトにメガネに小悪魔にな男子寮妄想=?
先輩の弟になりたいアンジ=?
スール=マリみて
バルサミコスう~=?なんかよく聞くけど
一万二千年前から引きこもりで八千年過ぎた辺りから平面に入れ込んでる姉=アクエリオン
鳥が三羽ならんだら愛してるのサイン=?
兄の右腕は弟の魂の対価となる=鋼の錬金術師
ローゼン王子=ローゼンメイデンなんですかね
セミが鳴く斧=ひぐらしとかいうあれですか
ドリルを持ってる悪魔=?
手乗りの虎はツンデレだったな=?
執事になって成功した悪魔=?なんか聞いたことはある気が
ある文献によるとホモの嫌いな女性はいないらしい=げんしけん
---
 …これしかわからない。ハテナなネタは検索してみようかな。
 それに、これ以外にもネタがあるのかもしれない。
 なんにせよ、情報、お待ちしてます!(笑

2009年10月21日

「新世界」2

「オリーブ、パルミジャーノに、キャンティクラシコね、まー悪くないね、悪くないよ」
「ああ、こんなもんだろう。碌でもないイタリアワインしかないのはしゃくだが、今日は我慢しといてやる」
「ま、シチリアワインには劣るけどよ、悪くないぜ。殊にここの農園のは悪くない」
 くるくるとソムリエナイフをまわすおれに、シュラはきれいに磨き上げたグラスをテーブルの上にふたつならべながら苦笑している。
「随分ご機嫌だな」
「そりゃな、久々だからな。ほら、とれよ」
 赤い液体を勢いよくそそぎ、シュラが手にしたグラスに、自分のグラスをぶつけて行儀のわるい音をたててやった。
「サルーテ!」
「サルー!」
 二カ国語で唱和して、一気にあおる。
「悪かないだろ?」
「…悪くないな」
 久々だからな、とおれの言葉を繰り返して、シュラはめずらしく歯を見せて笑った。
 何しろ生き返ってから一杯目のワインだ、うまくない訳がないのだ。
 同い年ということもあって、山羊座のシュラとは死ぬ前からそこそこ親しい付き合いがあった。同い年で黄金聖闘士、それになによりスペイン出身のやつとシチリア出身のおれは、アンチフランスワインの同士なのだ。
 生き返ってから今日で三日、さまざまな用事はまだほとんど片付いていないのだが、シュラとおれは示し合わせて昼食を一緒にとっていた。昼食というか、メインはむしろ酒という感じだが。
 オーブンにはおれの手製のカネロニを入れてあるし、シュラの倉庫に死ぬ前から入ってたオリーブのびんは賞味期限に間に合ったし、ワインはうまいし、風は気持ちいいし。気のおけない友人とのくだらない会話も心地いい――まあ、ここに帰ってきたのもそう悪いことでもなかったか。おれは気分良く杯をかさねて、たぶんそこそこ酔っぱらっていた。


(つづく)

2009年10月23日

古街キッカ『鉢植えの住人』

4813052134鉢植えの住人 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 32) (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 32)
大洋図書 2009-10-01

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 表題作は、やっぱ二人とも女とつきあうべきだと思うし~とかゆわれてふられた受けのもとに、ガジュマルの木に住む赤い髪の妖精キジムナーがやってくる話。最後がちょっと淋しい…やはり三角関係というか、当て馬がかわいそうな話は淋しい…。

 のんびりゲイカップルの話は、のんびりで結構重くもあってよかった。友だちの結婚できない女の子とか受け?の妊娠中の姉とかのキャラもよかった。

 こたつの高校生CP→大学に進学の話は、いじわる攻めが意外と…なオチで、かわいい。黒髪メガネの攻めの外見もかわいい。

 最後のふった元彼が結婚して、別の友人と云々な話は、受けは勝手過ぎで攻めもこの受けではいろいろ仕方ないんだがあーあという感じ。
 でも、わがまま少年をずっと友人のまま好きだったという攻めはとてもいい。

2009年10月24日

松本いなき『巨漢ハンター』

4775514083巨漢ハンター (アクアコミックス)
オークラ出版 2009-08-12

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 怪盗×警備員。盗品の代わりに尻をよこせとガチムチ警備員にせまる美形怪盗。

 この作家は最初の縄師の話のころは絵も話も好みだったのだが…。
 なんだか、キャラ設定とかキャラ描写とかがあまいのか、キャラがよくわからずどうにもこうにも。美形怪盗×ガチムチという設定はいいと思うのだが、なんか消化し切れてない感じ。
 お話もいまいち。まあ、お題ありのガチムチアンソロの連載みたいだし、仕方がない面もあるのだろうけれど。
 あと、絵は巧いと思っていたのだけれど、なんか実はデッサン微妙なのかなあと。もしかしてガチムチ歴が浅いのか、それとも逆に書きぐせでずれちゃったのか、なんか肉体の書き方がときどき微妙。

J.GARDENに参加します。

 というわけで明日は【J.GARDEN】 創作JUNE系同人誌即売会に参加します。

 サークル名:マヨイガ
 スペースナンバー:B05a

 新刊はありませんが、前回タクミくんスペースでこっそり置いてた「パランプセスト」を歴史(歴史なのか??)スペースで頒布します。
 オリジナルBLでのサークル参加は初めてなので、どきどきしています…。全然見ていただけなかったらどうしよう…。
 でもまあ、のんびり参加したいと思います。参加される方がいらっしゃいましたら、お声をお掛けいただけるとうれしいです。

2009年10月25日

夜光花『忘れないでいてくれ』

 庭いちきました~朝は雨だったし、疲れた…!あと、オリジナルはやはり厳しいですね…(笑
 スペースにお立ち寄りくださった方、ありがとうございましたv

4344817605忘れないでいてくれ (リンクスロマンス)
朝南 かつみ
幻冬舎コミックス 2009-09

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 人の記憶を見てそれを消せる受けは、無免で診療クリニックみたいなの開いてる。ある日警官の攻めがやってきて、貴重な目撃者の記憶消しやがったなとか言われて口論してるうちに、受けは攻めのトラウマをかいまみる。それをつついて逆上させ、あげくゲイの攻めに犯されてしまう。
 その件で謝罪に来た攻めが、受けに惚れてあれこれかかわってくるうちに、受けの能力が目覚めるきっかけともなった過去の事件が浮上し、受けと攻めが意見が対立したり協力したりしながら事件の真相に近づいてゆく。

 まず、人の記憶を消すっていうのは、受けの能力ではなくて暗示をかけるだけだったのがちょっと拍子抜けだった…(笑。
 受けは結構激しい性格で、まあ普通。事件にふりまわされるような部分もあるので、その意味ではちょっとキャラが物足りなく感じられてしまった気もした。
 警官が、最初のあたりの印象からは拍子抜けなくらい結構まっすぐな性格で、ゲイなので、かわいげがある。
 受けのことを能力だけではなく気に入ってるらしい資産持ちの男が、占い師の彼女もあわせて不思議キャラだった。

 ミステリというかサスペンスの筋とか、まっすぐな攻めとまっすぐなだけでは居られない犯罪被害者の受けとの対立と愛情とか、面白かったんだがなんかもう一息たりない気がするのはなんでかなあ。いろんな面白い要素があるし、読んでてちゃんと面白かったのに、なんか足りない。
 なんかこう、上記のようにあらすじをまとめてても、まとめられた気がしないというか、いろんな要素があって思いだそうにもうまく再構成しきれない感じで、そのせいで物足りなさがあるのかなあという気がする。
 攻めのまっすぐな受けラブとか、受けの過去の事件との奮闘とか、事件の顛末とか、脇キャラとか、それぞれ面白かったけどちょっと詰め込みすぎなのかなあ。
 だから、もっと分量あってもよかったのかなあという感じ。かなりの意欲作的な印象はある。いずれ整理しつつ読み返してみたい。

 表題にもある記憶にまつわるモチーフは、ちょっと説明不足なのかなあという気もした。仕方がないんだけど、後半、あんまり受けの能力は活きてないかなあという気もしたし、タイトルのニュアンスもいまいち本編からは読み取れなかった。

 続編はありそうだけれど、しかし受けの能力的には続編というのは難しいのかな。あるといいなあ。

2009年10月26日

「新世界」3

「どう思うよ」
「どうって、何がだ」
「アレだよ」
「アレ?」
 シュラは眉根を寄せて首をかしげ、首をかしげるのも当たり前だと思うのだが、おれはだだっ子みたいに口をとがらせた。
「ほら、アレだよ、わかんだろ」
「アレか」
 シュラは深々と頷いた…ほんとにわかってんのかこいつ。
「そう、アレ。何なんだよ、あいつ。生き返って、どうかしちまったんじゃねえのか」
 ああ、と頷き直した…やっぱりわかってなかったんじゃねえか。
「まあ、おかしいのは確かだな…前から変わったところのあるやつだったが」
「そりゃわかってるけどよ、生き返ってからはちょっと常軌を逸脱してるだろ」
「お前、そこまで言うか」
 シュラは三本目のワインを最後の一滴まで自分のグラスに注いでしまうと、おれに振り返った。
「おい、もうないぞ」
「おれはお前の嫁か…もうここいらでよしとけよ。夕方からまたミーティングだろ」
「何だデスマスク、お前らしくもない…あ」
「あっ」
 獅子宮からの階段を降りてきた妙にきらきらした人影は、テラスで飲んだくれているおれたち…いや、おれを見つけると、いや自意識過剰ではなくてまさにおれだけに、にっこり微笑んだ。
「デス」
 本当、薔薇が咲きほころぶみたいに笑いやがる。クソったれ。
「アフロディーテ、昼飯は食べたのか、まだなら一緒にどうだ。デスマスクのつくったイタリア料理のナントカという焼き物があるぞ」
「本当か、私がいただいてもいいのだろうか」
 おれの口の端がひくりと痙攣した。シュラのやつ、一体何を言い出す気だ。こいつがおかしいって同意していたクセに…思えば、シュラは昔からこいつに甘い気がするぞ。
 このおかしな、おかしくなってしまった魚座とわざわざ同席しようだなんて冗談じゃあない。そんな内心のおれの苛立ちは届かなかったらしく、シュラはのんきな顔でおれに問うた。
「構わんだろう、なあデスマスク」
「…別に、好きにしろよ」
「そうか、ではありがたくいただくことにする」
 …畜生、魚座はまた花のように美しく微笑んだ。


(つづく)

2009年10月27日

若杉公徳『デトロイト・メタル・シティ』8

4592143582デトロイト・メタル・シティ 8 (ジェッツコミックス)
白泉社 2009-09-29

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 DMCは、最初の頃はどこまで続けられるのか…とか思ったけれど、最近はデスメタルギャグ漫画として落着いてきた気がする。

 根岸が「我殺し」して長期休暇に入り、クラウザーさんが死んだと騒ぐファン、クラウザーを待ち続ける忠ブタの話は面白かった。根岸がエコにハマるのもそれっぽい(笑

 影武者メキシコ人や、影ジャギ・カミュも意外に面白かった。影武者はSATUGAIパロ以外はいまいちな気がしてたし、ジャギとカミュの影も最初はどうかと思ったんだけど、結構笑えた。

 あとジャギのキャラ立ちが最近いい感じ。社長への気遣いっぷりとか、その空回りぶりがすごいジャギっぽい。あと一人で各地イベントをまわって、どこでも空回りしてばかりで火を吹いた時だけ大ウケする気の毒さがいい(笑。ご当地トークとか、ジャギウィズエメラルドファイアとか、和田くんメタラーというかアーティストとしてはすごい普通すぎるというか、和田くんも素のキャラでは売れないというとこは、ちょっと根岸の境遇と似てるのかも。

2009年10月29日

ゆうきゆう・ソウ 『おとなの1ページ心理学』

4785931981おとなの1ページ心理学 (ヤングキングコミックス)
ソウ
少年画報社 2009-07-21

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 「マンガで分かる心療内科・精神科・カウンセリング」で有名な、ゆうメンタルクリニックのゆうきゆうさんのコミクスが出てたなんて知りませんでしたよ~。

 内容は…ええと、ドSなマヤ先生、女たらしのリオ先生、思い込みの激しい若手ユウ先生がくりひろげる精神科ギャグ漫画?

 面白かったんだけど、サイトの漫画のほうがもっと面白かった気がする。コミクスは心理テストっぽいネタとか、吊り橋効果とかハロー効果とか有名な話が多かったんだけど、サイトの方は病状の紹介とかがあったり結構勉強になりつつ、アンバランスなきっついギャグが織り込まれてたから、いろいろとインパクトがあった気がする。

 絵は、漫画絵としてすごく魅力的というわけではないけれど、きちんと整ってて綺麗で、そういう絵で不条理ギャグとか書かれると南国ばななや立花晶っぽくて、そしてそういうのあたしは結構好きなのです。

2009年10月30日

架神恭介・辰巳一世『よいこの君主論』

4480425993よいこの君主論 (ちくま文庫)
筑摩書房 2009-05-11

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 また同じような書き出しになるけれど、「完全パンクマニュアル「はじめてのセックス・ピストルズ」」の架神さん辰巳さんがこんな本を出していらしたとは知りませんでした。
 というかお二人がご活躍されているということも、架神さんが一文のご出身ということも、辰巳さんはなんとなく女性かなーとか思っていたのが勘違いだったということも、知りませんでした。

 それはさておき、この『よいこの君主論』もとっても面白かったです。
 内容はタイトルどおりなんですが、クラスに君主として君臨するために、小学生がマキャベリ『君主論』を勉強する…という。
 …すごい(笑。このネタを思いつくとこがすごい。

 構成としては、君主をめざすたろうくんとはなこちゃんが、ふくろう先生といっしょに、目立小学校五年三組の一年間を見て勉強していく、というかたち。
 五年三組では、主人公のひろしくんをはじめ、君主をめざす子どもたちが、友達という名の配下をもちそれぞれ小君主グループを形成している。彼らはクラスを統一して覇道をしくために、さまざまな計略をめぐらせていく。遠足や運動会も、小君主たちにとっては、他の小君主を陥れたり、他グループを吸収合併するための絶好の機会なのだ。

 …ね、面白そうでしょう。
 ちょっと例がいまいちかな、というとこも少しだけあったけれど、総じてよく出来た本だと思います。君主論もちょっとわかった気になるし、オススメです。

2009年10月31日

「新世界」4

 花は咲かせて愛でるものであって、手折るものじゃあない。
 水をやって毛虫をとって、陽をあてたり肥料をやったりしていても、そんなのは人間が勝手にやっていることで、花は感謝などする義務はない。おれがキツい任務をこっそり肩代わりしてやったり、不埒な雑兵を追い払ってやったりしていたからって、そんなのあいつは知る必要すらないことだ。
 薔薇なんだから、ただきれいに咲いていればそれでいい。薔薇なんだから、そもそも意思の疎通が出来るような相手じゃあない。
 おれはずっとそう思っていたし、今でもそう思ってる。
 だから薔薇が突然人間の言葉をしゃべり出したときは、おれはあまりのことに暫く呆然としてしまった。あんまり驚いたものだから、うまく返事も出来やしなかったくらいだ。
「君が好きだ。最初の死より前から、ずっと」
「はあ? 何言ってんだ、おまえ」
 最悪だった。告白をふるにしても受けとるにしても最低最悪な返事だと、我ながら流石に思う。
 薔薇も随分青ざめた顔をして、黙り込んでいた。おれは自分の失言に動揺して、何のフォローもせずにその場を立ち去ってしまい、あとで巨蟹宮の自室のベッドの上でのたうちまわって後悔した。おれの心ない言葉に薔薇は傷ついただろうと悔やみ、せっかく丹精して育てた薔薇に自分で疵をつけてしまったことに随分がっかりした。
 だが、薔薇は流石にそれほど弱い生き物ではなかったらしい。まあ、何しろあれでも黄金聖闘士だ。翌日には何事もなかったような顔で双魚宮の薔薇園で水まきをして、教皇の間へ向かうおれを見つけるとにっこり微笑んで言ったものだ。
「おはよう、デス。今日もいい天気だ」
 おれはまたしても情報処理が追いつかなかった。
 前日の薔薇の言葉の真意はおいとくにしても、あんな扱いをされていくらなんでもおれに愛想をつかしたことだろうと思っていたのに、まったく平気な顔で―― 少なくとも表面的にはおれの暴言を気にしてなんかいないように、きれいに微笑んでいるのだ。おれは気まずくまた少々恐ろしくなり、おうとかああとか適当な返事をして、そそくさと薔薇の前から逃げ出したのだった。


(つづく)

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