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2005年03月01日

本仁戻『ポイズン・チェリー・ドライブ』

 わけがわからんけれど、こうしてまとめて読んでみると結構面白い。今は青猫よりこっち読みたいなぁ…(いや単純に鶯に妬いてるだけなんだけれどね…。
 美形リーマンや運動家の高校生などは一話ですてちゃうには惜しいキャラで、もう出てこないのかと思うとなんだか淋しい。その意味では一話完結がうまいんだかうまくないんだかよくわからない。あと、アラブの石油王?の話はもっと説明がほしかった。ちょっと分かりづらい。それに分量も少なくて物足りない(いやこういう風に思うのも単にわたしの最近の御曹司ブームのせいかもしれないけれど。
 しかしあまりに2ちゃんネタというかそれっぽい言葉遣いや用語、話題が多いのが気になる。また数字板の人々が喜ぶのだろうか。それともそろそろその逆になっているのだろうか(見ていないので分からない。
 しかしほんと改めてみるとすごい恥ずかしいタイトルだなぁ…。というか芳文社、オビにあんな言葉を書くのはやめてよ…小さい文字でもだ…。

 ついでに、犬のほうは最初のほう読み逃してたせいかよくわからなくなってきた…。四月の一巻を楽しみにしようかと思う。絵がちょっとテツリカの頃みたい。あの絵はニガテなのだけれど何がニガテなのかな、と思うに線の本数が多く見えるのがニガテであるような気がしてきた。

2005年03月02日

西田東『影あるところに』

 L祭りのことを忘れていましたすみません。L、お疲れ様でした…。

 正直最近ちょっと粗製濫造ぎみかなぁと思う。どこがどう、とうまく言えないのだけれど、なんとなく人物描写に奥行きを感じない気がする。折角これだけの描写力のある人なので、じっくり描いて欲しいなぁ。…いやしかし、この絵でここまで人間ドラマを描けるなんて、ほんとに力があるとしか言いようがないよね(だからわたしは漫画というメディアが大好きなのだけれど。いつも絵のことをちゃかして悪いとは思うけれど、でも本当にそう思う。
 しかしあとがきはいつも大笑いしてしまう。きっと作者はいい人に違いない。

2005年03月03日

宮本佳野『彼の庭に咲く花』

 桜花寮トリロジーのつづきだとキャラ紹介を開くまで気づかなかったよ…。

 前作のほうが面白かったかなと思う。表題作がやや暗く、『MOONY』ラストの話と若干かぶるかなという気がする。「FROST」はやや謎解きっぽくてポーの詩をからめるなど、ちょっと今までの宮本佳野とは違う感じがして面白かったけれど、諏訪が当事者でありながら傍観者のままだった気がして若干淋しい。というか、諏訪のもとにかよっていたあのカワイイ子はどうなってしまったんだと…(笑、そのあたり前作との関連がうすくて淋しいんだよね。表題作の終わり方や「FROST」などのちょっとフシギなフンイキは「桜花寮」らしいなぁとも思ったんだけれどね。

 どうも最近、宮本佳野って、なんというか桜花寮とかルールズとかなんでも屋ブンとかみたいなシリーズものでないと光らない人なのかなぁと思っていて、というのもビブロスの『PLEASE』がすごくつまらなかったからそう思うようになったんだけど、今回所収の作品は短編もそこそこ面白かった。「ふたりがここにいる理由」など割り合い好き。というか他のコミックスの短編だってふつうに楽しんでたわけだし。というかね、こないだのゴールドの連載(今月で終わりの)もイマイチだったし、要するにビブロスと宮本佳野の相性が悪いってことなんですかね…。

2005年03月04日

深井結己『砂の下の水脈』

 あとがきにある「今回はハッピーエンドばかりです、当社比だけど」というのがまさにそのまんまな1冊だった。この作者、初めて読んだのが『君が居る場所』だったので、わりと明るい作風を期待して他の作品も読んでみたらすごく欝になったんだよなぁ。でも『俺はあなたの犬だから』とか最高に欝だけれど割と好きだ。
 それはさておき、今回も欝~、な作品が多く、かろうじてなんとなくハッピーエンドなので助かった、という感じだった、表題作はちょっとわかりづらかったなぁ。「BITER」という高校生が出てくる話が面白かった。高校生がちょっといままでこの作者になかったタイプのキャラで。

2005年03月05日

ククールさん。

 ドラクエ、順調に楽しんでます。錬金釜とかしちめんどくさいなぁとか、言いたいことはいっぱいありますが、やはり7よりオーソドックスな展開で、安心して進められる感じです…、…?、…???

 …何事ですかこの萌えキャラは。

 もうゼシカさんのぱふぱふとかゆってる場合じゃない(そもそもぱふぱふはドラクエの伝統だ。
 いやはや『千と千尋の神隠し』のハク以上の衝撃でした。ハクの場合、これって宮崎絵じゃないじゃん、というさめた対応が可能だったのですが、もう、ククールは、なんというか、鳥山絵で萌えキャラだなんて、なんだかすごくうしろめたい気分になります…!(ヘンタイですかわたしは。原画はそうでもないんですけどね。動くともうダメですね。外見はトランクス系統のキャラだなぁ、というくらいの印象なのですが、それが動く、喋る、暗い影しょってる、ともうダメですね。モエモエですね。あー何がどうなっているんだドラクエよ(どうなっているんだはむしろゆずりの方という気もしますが。

2005年03月11日

みなみ遥『花色バージンソイル』

 もう、なんというかね、この原因不明なのにどうしてこうもヘンな力があるのだろうかという疑問がふつふつと沸き起こるタイトルは、なんなんだ。もっとハッキリいうならば、どこがどういけないとハッキリ言えないのに、なんとなーくいやらしいタイトルだと思う。いやキャラの今の連載よりかはマシだけれど。でもほんと最近、みなみさんはタイトル見るだけでギョっとすることが多いよ。いや最近だけじゃないかもしれないけれど。
 でもほんと何がいけないんだろう。「花色」…まぁ華道が出てくるし。「バージンソイル」…処女地?土壌?(笑。うん、組み合わせがいけないんだね。

 というわけで、本誌かなにかで題名だけ見た時に既にすごーく脱力していたので買うまいと思っていたのだけれど、出来心で購入。内容に関してはいつもどおりというか。こないだの『最果ての君へ』を読んでから、もっとシリアス方面描いてほしいなぁと思っていたんだけれど、今回はいつも通りのライトであまり理由もなく(とくに攻はそうだよね)ハッピーでアレな話ばかりだった。ライトのりでは南かずか名義の『仔羊捕獲…』とか面白かったなぁと思うんだけど、あれも二巻ものだったし、やはりある程度の長さのお話でないとあんまり過程が見えない感じになってしまうのかもしれないなぁと思った。

杉本亜未『独裁者グラナダ』

 これはBLではないような気もするけどキャラだし併録のは若干そうなので一応BL扱いで。
 なんというか、表題作も併録のもスピリッツの読みきりみたいなお話だなぁと思った(最近のスピリッツを読んでいないからこの表現が適切かどうかはわからない。どちらも病気を持っているキャラの落ち着きつつエキセントリックなところとか、視点人物の淡々とした語り方とか、なんとなくスピリッツな印象。正直この雰囲気はあまり好きではないかな。

2005年03月14日

黒川あづさ『覚醒志願者』

 別に面白かったけど、近代麻雀の作品まで収録するのはどうなのか…でも一応BLなんだね…。本来の読者はどう思ったんだろう(笑。
 地味だけれど絵が結構好みだ。お話はつまらなくもないが特に心に残るものはなかったかな。表題作以外はBL一直線ではないかんじだし。余談にあった「ノンケだけが取り得の男」という言葉が面白かった。

CJMichalski『壊れかけのオモチャ』

 何か、あれだ、表紙見た時から思っていたんだけれど、CJさんの絵がうまくなって来た気がする…!ちょっと感慨が…すごいなぁ。いや、前からそんなにすごいヘタな人というわけではなかったけれど(基礎力の面ではね。これだけ長い間変らなかったのに、変われるのはスゴイと思うのだ。
 あとがきによるとどの作品もかなり自由に描いた、とのことだけれど、今回はいままでにない系統の顔のキャラが多くて面白かった。天パ黒髪とかね。大人同士とかね(笑。不満だったのはどの作品も展開がいまひとつ物足りないことで、CJさんのベタベタさがいまひとつつきぬけてない感じ。短編ばかりだからかもしれないけど、以前の短編よりも物足りなさが濃い気がするなぁ。特に表題作はもっと読みたい。

2005年03月15日

神崎貴至『純愛成長期』

 この作者は二冊ど読んであまり好みでなかったので以降読んでいなかったのだけれど、今回は裏表紙の作品紹介を読んで、恋人と引き離されて全寮制の学校に入れられて、貞操があぶないったって、…どうやって回避しようというんだ(BLという世界で)?と疑念を感じて購入。…なんというか、ブッとんでた。わたしは結構無茶設定やぶっ飛び展開はキライではないのだけれど、それにしたって…君たち、おかしいと思わないのか?と説教したくなった。

『花音』四月号

 今市子も本仁戻も載っていないというのに100号記念小冊子に応募したいがために購入(涙。これでまた一作家ひとけたページの冊子だったら泣きますよ?(でもたぶんそうなんだろな…せめてハチPであってほしい…。

 CJさん、その山中で記憶喪失ネタ、前もなかったか?
 樹要、もしやまた乙女攻め?じゃないといいなぁ…。でもいずれにしても結構面白くなりそうだ。
 花婿さんはもういいや。
 あと今まで名前しか知らなかったあてね、ちーらん、よしきあや(何故か変換出来ない)を読めてよかったというか、まぁ今まで単行本買ってみたりしないでよかったというか…。ちーらんは双子プラス主人公がみんな同じ髪色で同じ顔をしていて何かの罰ゲームのようだった。

 という感じで、あまり読むものがなかった。
 良かったのはいつもどおりなアベレージのプリンスチャーミングと樹要くらい。プリンスチャーミングは、加賀見がうかつにも本気を出してしまい朝比奈にメロメロになってしまったりしたらかなりツボなんだけれど、これまでの展開を見るにそれはなさそうだね。でも、そうなら…いいなぁ。
 あと自分でもよくわからないが、もしかしたら次回新刊の南野ましろの天使のじかん一巻を買ってしまうのではないかという危惧がある…。
 本仁戻、来月のは「うぐいす」というタイトルなんだね。まんまだなぁ。番外編扱いというか別タイトル扱いなのかなぁ。いずれにしても、どうやら猫さんは出てこなさそうなので読むかもしんない。それでも妬くかもしんないけど(笑、もう、馬鹿だ。鶯は単体ではフツウにメチャ粋な女衒、と思えるんだけれど、どうにも青猫と絡むとムってしまって仕方がない…。

2005年03月17日

高河ゆん『LOVELESS』5

 こんなに時間が経っているがとうぜん既に初回限定版で購入してた(だって限定版には同人誌がついていたのだからしょうがない。というか…限定版の同人誌、そろそろ力尽きてやめるんではないかと思ってたんだけど…、頑張るなぁ。その頑張りの意味は本編を読んでみて理解したのだけれど。



 ということで、まず本編から。いや、こんなに読まないで放置していたのは、本誌を立ち読みしてた折に毎号10Pとかしか載せてなかったひどい時代の辺りが収録されてる巻だと思っていたためで(それは4巻だったみたい?若干絵が荒れてた)もうそういう部分は抜け出ていて(いや書き足しもあったみたいだけれど)とにかくすっごいおもしろかった!
 というか清明、清明とそれにまつわる人々が、すごい…(笑。とくに草灯。いや草灯はいつもすごいというか、とにかく最低なんだけど(耳ないし、笑)今回はほんとにつくづくこいつ最低だなぁ~と思った。例えば

「だけど一ミリも揺らがない信頼なんてそれだけで狂気だ」

てあなた、それあんなに必死に清明とそしてあなたを信じようとしている立夏のことじゃあないか。そして更にメンヘラーな立夏母に対するドギツイ批判、しかも投げつける相手は母にすがってしか生きられない立夏という…。草灯は確かに立夏に対してなんらかの気持ちを抱いているんだろうけれど、草灯の愛情表現だって十分狂的だ。だって立夏が一番イタい思いをしてる。さんざん立夏に服従を誓いつつ何にもしてくれない、どころか立夏を一番傷つけるって、わりと斬新だ。SMで主導権を握るのはM、というのとも若干違うのだけれど、でもそんな絶対君主というか蝶ド級にワガママな草灯がしかしわたしは好きなのだ。
 ともあれ、ラブレスの売りはとにかく吾妻草灯がサイテーだということだと思うので(笑「でも草灯は立夏のことラブだからついああいうこと言っちゃうんだよ!」とは絶対思いたくない)草灯にはこれからも頑張って最低ロードをつきすすんでもらって、そんでいつかは立夏と幸せになってほしいですね。
 ちなみに清明もどうやら生きていて、どうやら意外と最低そうなキャラなのでまた面白くなりそうだな~(笑。あと、立夏にもきちんと戦闘機が居るようで、それも楽しみだ。

 いやしかし話を戻すと、連載のアレっぷりを見ていて「あ、ラブレスももうダメかな…」と正直かなり不安に思っていたので、今巻を見てすごいイキイキとしているので安心したというか持ち直したことにビックリした。わたしは高河ゆんを読み始めたのはつい最近のことで、ラブレス以前はほとんど連載を追っかけたことがなかったから、今回初めてイタイ目を見るのかと思っていたけれど(まだ)大丈夫みたいだ。しかも連載が持ち直したのってもしかして初めてだろうか。その意味でもラブレスはやはり今までの作品となにかが違うような気がする。アニメも始まるそうだし(多分見ないけど。でも今回でかなり絵がかわったなぁと思った。若返り続けるなぁ高河ゆん。

 そんなわけで、そういう勢いが限定版同人誌にも波及したようで、今回は同人誌もすごかった。漫画の分量が多い。そして、その内容もなんというか誠意あふれる感じ(笑。読んでしまえばわりあいありがちなネタかもしれないけれど(コロンブスの卵だ)ラブレスにすごく合っていたし、魅せ方もよかった。
 立夏の誕生日ネタというのが個人的にいろいろ感慨というかなんというかがあった。自分などと比べてしまうのは非常におこがましいのだが、丁度裏ジョジョで誕生日ネタを準備したところだったので、似たようなネタがこんなふうに料理されているのを見てただもう参りましたと言うより他にない。

 というわけで、ラブレス、若い子さん達によるコスやキャラ萌えも勿論結構なのだけれど、お話もきちんと面白いので(や、戦闘シーンとか笑ってまうけれど)古きよき高河ゆんファンにも読んでほしいなぁと思うのだ。

2005年03月22日

伊藤悠・佐藤大輔『皇国の守護者』1

 丁度新刊が目に付き、しかもウルジャンのコミックスだったので、こうてみた。これから毎月ウルジャンを買うのだからして、すこしいろいろ読んで見ようかと思っているところだったので丁度よいと。

 タイトルと表紙の虎!からパラレル日本で戦争ifのトンデモものを期待したのだけれど、もっとファンタジックだった。
 最初の方は読みづらかった。軍国モノにありがちなセリフの読みづらさはジャンルの問題でもあるので慣れればなんとかなりそうだけれど、状況説明の仕方が分かりやすいんだか分かりにくいんだか分からない。あと絵が、割と好みの絵柄なんだけれど、そしてちゃんと描き分けられているのに、なぜか誰が誰だが判らない。たぶん原因は登場人物の名前がよくわからないまま進んでいくせいだろう。なんだろう。一巻から登場人物紹介が載っているからヘンだなとは思ったんだけど、第一話も唐突だったし、第一巻なのに長いお話の途中から読ませられているような印象で、分かりづらい上に一歩引いて読んでしまう。戦術とかトラ類の使い方の半端さも若干気になる。うーん。これらの多くは原作に起因する問題だと思うので、言ってもしょーがない面もあるけど。
 いずれにしても、コミックスで読む分にはいいけど、雑誌で読むのはしんどそうだなぁ…。

2005年03月25日

九条キヨ『ZONE-00』

 おばさんはこのテンションについていけそうにないよ…。
 うまいのかうまくないのかよくわからん絵とハイテンションな展開ですごく疲れた。設定にもかかわることだけれど、知識が深いんだか半端なんだか浅いんだかよくわからん。泣いた赤鬼と舞の鬼面を同列に語っていいのか。いや本人がいいならいいんだが。全体としてどこまでが狙ってやっている部分なのかよくわからん。というか一体どういう読者をターゲットにしているんだか疑問。
 でもまぁ逆に言えば勢いがあるし、不確定な要素は多いけれど自分世界をつくりあげようとしている点には好感が持てるかも。

2005年03月26日

香坂透・篠崎一夜『お金がないっ』4

 なんかなぁ。薄かった。前巻から引き続きの大学編はほとんど解決編のみで、あとは番外編やら同人誌再録ばかりで、あまり読んだ気がしなかった。本編も解決編といったって、犯人なんかとっくにバレバレだったわけだし、狩納のちいさな幸せ(笑)も予定調和的というか前巻ラストで綾瀬が反省(笑)してた頃には予測済みだったわけだし(まぁそれでも描かれなくてはならない部分なんだけれど)つまりあんまし内容がないわけで。つまらなくはないけれどものたりなかったということで。
 それはさておき、リンクスの漫画雑誌創刊でこの漫画もこれからどうなるのか。いや内容ではなく連載ペースとか。ペースが上がることを期待。

2005年03月28日

海老原由里『ALLURE ―蠱惑―』

 絵はわりと好きなのだけれど。
 患者の元彼女の描写がなぁ。女性性を武器にエゴは丸出しに人情をタテに、医者から患者を奪回しようとするという救えない性格といえばまあそうなんだけれど、患者に十年以上つくしてきたという過去はあまりに軽く扱われており、どうにも気の毒なキャラだ。BL的にはつくしてもらったこととか女性であることとかさえ超えてしまう二人のラブ、とか女性であってもあの性格はムリでしょ、とかそういう結論でいいのかもしれんけど、それはあまりにBLの中の女性、というものを軽んじすぎだし、それが結局読者である女性にとっても不快なのは当然といえば当然かもしれない。
 しかしBLの中の女性という表象は、むしろ男性ジェンダーを踏みにじっている(かもしれない)BLの中で面白いジェンダー論的素材になるかもしれない。

 話がずれた。とにかくまぁ、そのモトカノのあまりな性格とあまりな扱われ方以外は、あまり印象に残らなかったな…。開眼手術とか雪の女王とかノルウェーとかの話題が微妙にうまくかみ合ってなかったかんじがした。

2005年03月30日

後藤星・秋月こお『寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ』

「責任はとります。結婚してもいいです」

 遂にフジミか…。

 憶測やシエルで見かけた折の印象から想定していたよりかずっと面白かった。
 シエルで「コンサートはお好き?」のラストだけ見て、バイオリンをぶんなげて破壊するバイオリニストにはついていけそうもないかも…、と思っていたんだけれど、こうして同作の第一話から読んでみて、桐ノ院いわく繊細でピュアな悠季にあってはそんな激情もしかたがないかな、と思えてしまった。悪いのは悠季ではなくあのヘンな指揮者だよ、って(笑。まぁそれもこれも、桐ノ院や悠季のキャラ立てがなかなかいいかんじに面白いからだと思う。
 後藤星のコミカライズもたぶんうまくいっているんだろう。原作は未読だけれど、この内容は秋月こおの文体だとわたしにはキツイかもしれないと思った(でも読むかもだけど。上記のキャラ立て云々に関しても、繊細やピュアなどというある意味エグい単語や、ナントカと紙一重な指揮者のナントカっぷりも、この絵やコミカルなコマに助けられて嫌味がなくてよいかんじ。

山岸凉子『舞姫(テレプシコーラ)』7

 いやー、あんまり面白いからどうしようかと思ったくらい面白かった。
 テレプシ、最初の頃の空美(クミ)ちゃんが出張ってたころもそれはそれで面白かったんだけど、空美千花(チカ)の天才対決を見守る六花(ユキ)、という構図から、ここ二三冊で六花中心のお話になってみたらすっごく面白くなってきてる。学校だけでも坂口系統の話とダンス部の話があり、研究所の方でも発表会にくるみと盛りだくさんだ。千花ちゃんのケガも長引きそうで気になるけど、現在テレプシを描いている山岸凉子は日出処の天子は勿論のこととして負の暗示やら天人唐草やらをこなした後の山岸凉子なのだからして、千花ちゃんがこのまま復帰できないとかそういうオチになってしまったらどうしよう(でもアラベスクもけっこうむごい結果は多かったかも。
 続きが気になるよー。

2005年03月31日

『CIEL』五月号

 なんだか今月は薄かったなぁ。…いやしかし、BL雑誌の中でシエルだけは定期購読になってきてしまったなぁ…理由はもちろんタクミくんなんだけど…。そのタクミくんについてはコイモモの方で。

 麻生海、絵が結構好みだ。お話はいまいちまだよくわからない。テンポがあまりよくない。
 桃季さえ、前回を読んで主人公CPが気持ち悪いのでかなり引いてしまったのだけれど、今回の展開や表紙のCPを見ているとあの二人が主人公ではなかったのだろうか。そうならいいなぁ。
 コイ茶はどうもやはり青春している部分で目がすべるのでほとんど流し読み。
 三島一彦を初めて面白いと思った。が、イタい。主人公の性格も職業もイタいツボ。でもだからこそ面白かった。読みきりじゃなくも少し長いお話で読みたかった。
 佐倉ハイジ、なんかやはり最近お話が乱雑。雰囲気が好きだから読めるけど。
 王様ゲーム(考えてみればすごいタイトルだ、絵のせいか眼鏡が見えづらいのがどうか。眼鏡をかけている理由もどうか。
 次回の純情はまたテロリストですか…。他のCPがいいなぁ。

小野塚カホリ・団鬼六『美少年』

 どうにも展開や物語が古臭く、あまり面白みもない。女言葉、女形などの、かつての直球ボール(なのか?)で現在では一ジャンルに縮小してしまったその形式が、いっそ昔なつかしい、と感じられるならばまだ面白みがあるんだけれど、どうにも斬新でもない感じ。そういう部分が古い、という印象につながるんかなぁと思いつつつらつら考えていて思いだした。

 これは以前も引用したことがあるのだけれど、浅田彰は福島次郎の『三島由紀夫 剣と寒紅』に関して「それは同性愛がタブーであったときにのみ辛うじて意味をもつ時代錯誤的な書物に過ぎないのである」(浅田彰【同性愛はいまだにタブーか】より)と述べている。浅田はこの部分の後に福島の「バスタオル」という同性愛を扱っている作品に関して、「私の見るかぎり、ここにあるのは社会の同性愛嫌悪(ホモフォビア)によって貧困化された性の、悲惨なまでに薄汚れた表現でしかない」と評してもいる(ちなみに「バスタオル」は芥川賞の候補になっている。

 BL読者の諸氏はお気づきかもしれないけれど、この福島次郎の「バスタオル」は鳥人ヒロミがそのタイトルのみからインスピレーションを得て「バスタオル」というBL漫画を描いたという例の小説である。そのような背景もあって、わたしは先に触れた浅田の福島への批判をついついBL作品との関連で考えてしまうのだが、そうすることで浅田の批判する福島の同性愛を扱った文芸作品とBL作品との違いが見えてくるように思う。もう少し具体的に言うと、浅田の評言は、では「同性愛がタブー」ではなくなった後に、その作品に何が残るのか?というテクストの強度への問いかけだとわたしは解釈しているのだけれど、その視点でBLというジャンルを見てみたい。

 さて、BLというのは、一応定義するならば同性愛を大前提としたエンタメの一ジャンルである。勿論そのエンタメとは少女漫画やある種のファンタジー、また勿論ポルノなど、様々な細分が可能なんだけど、ここで問題にしたいのはそこでなされる同性愛の描き方だ。私見では、BLというジャンルにおいては「同性愛」は大前提であってそれ以上でもそれ以下でもない(無論例外は沢山ある。ややBLに都合のよい言い方をすれば、BLは同性愛そのものを問題化していくのではなくて(時にはそれを問題化しつつも)その先で物語ろうとするジャンルなのである。同性愛が描かれているというだけでは最早BLの「物語」としては成立できない、と言えば明らかに言いすぎだろうが、少なくとも「それ」だけで泳ぎきれるほど浅く穏やかな海ではないはずだ。

 と、ややBLを持ち上げてみたところで、そこに持ち込まれた「美少年」についてふたたび考えてみた時に、やはりこれは同性愛そのものが描かれた、それだけの作品、として批判できるように思える(というか、作品レベルで考えた時には実は同性愛以前というか、「オカマ」との物語、しか描かれていないんだが…なので物語内容からも批判が可能だろうけれど、めんどいので今回はパス。だから、BLとして読むには古い、物足りない。

 漫画作品としての「美少年」について。よかったのはやはり小説が原作にあるためにか、ある程度の緻密さでの描写がなされていることだろうか。絵が小野塚カホリのあまりクセがない現代の普通の漫画絵であることに関しては、一長一短だな。この原作はもっと個性のキツい作家であればもっと昇華できたんではと思うと同時に、でもやっぱあまり料理しようもないかなとも思うから。あまり好きな絵ではないんだけど綺麗だと思うし。

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