「眼鏡人伝」その8
いそがしすぎる。
めもからコピペ。あと一話なのですが。
その1へは↓のリンク中央からどうぞ。
マヨイガプレゼンツ、
おお振り×フジミ×医龍、そして中島敦。
「眼鏡人伝」その7
様々な噂が人々の口から口へと伝わる。
毎試合三~四回を過ぎる頃、花井の二度目の打順で必ず本塁打が出る。ステキメガネの内に宿るメガネが野球の試合中ににじみ出て、敵ピッチャーを魅惑するべく幻を見せるのだという。それでも四番=田島はゆるがないあたりが花井の花井たるゆえんである。
花井のクラスメイトの水谷がある日テレビを見ていると、花井が珍しくもメガネをかけて、やはりメガネの小池徹平とダニエルラドクリフと鼎談しているのを確かに見たと言い出した。その時三メガネの話した内容は雑誌におこされて『月刊ステキメガネ』が創刊されたと。しかしそんな番組も雑誌も誰も知らないので、水谷は今でもクソレフトの名をほしいままにしている。
花井とキャッチボールしようとしたところ、ボールを投げた途端に一本のメガネが花井の顔に見えたので、覚えず意識が動転したと白状した男子もある。爾来(じらい)キャッチボールをする者共は彼の正面は避けて投げようとし、部員共はバスケ部でもないのにフェイクがうまくなっていった。
雲と立ちこめる名声のただ中に、ステキメガネ花井は次第によいホームランバッターになっていく。既に早くメガネを離れた彼の心は、ますます野球に向かって行ったようである。高校生らしい顔は更にハツラツと球児らしくなり、予習するためにメガネをかけることすらも稀となり、ついには進級の可否さえ危ぶまれるに至った。「創部三年目で甲子園四強なんて、やっぱりモモカンはスゴかった」というのが、卒業間際のステキメガネのどうでもいい感想である。