恋は桃色
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 150000hit御礼企画として、アンケートの結果で展開を決めました(アンケートは終了しました)






い糸」




 朝目が覚めると、左手の薬指に赤い糸が結んであった。
「…何、これ」
 眠い目を瞬かせつつ、ぼくはぼんやりと自分の左手を見つめた。
 糸はちょうど指輪のように、薬指の第二関節の下に二重に巻きついて、ちょうちょ結びになっている。結び目の一端からは、長く長く伸びた糸が、ベッドの下にまで伸びている。ベッドの下を覗きこむと、糸の先はまだまだ続いているらしく、床に落ちた糸はまっすぐドアへと向かっていた。
 ぼくはちょっと首を傾げ、糸をこちらに引っ張ってみた。糸は素直にたわんで、離すと床にだらんとたれて落ちた。どこまで伸びているのかはわからないけれど、糸の長さにはまだ随分、余裕があるらしい。
 一体これは、何なのだろう?
「誰かの、いたずら、とか?」
 それが一番、ありうる気がする。
 でも、誰が?
「ギイ…ってことは、ないよね」
 今日は、日曜日。一番あやしい、つまり、こういういたずらを最も仕掛けてきそうなギイは、昨日の午後から泊まりの予定で出かけているのだ。
 昨夜、眠る前には、こんな糸はなかったのだから、不在のギイの仕業では、ありえない。
 だとすれば、一体誰が?


 三洲は既に、部屋にはいなかった。昨夜、生徒会の仕事があると言っていたから、もう生徒会室に行ってしまったのかもしれない――三洲は、ぼくの指から生えているこの妙な糸を見て、何も思わなかったのだろうか。
 そんなことをぼんやり考えながら、とりあえず着替えて部屋を出てみて、ぼくはあ然とした。
 廊下には、無数の赤い糸がちらばっていたのだ。
 糸は各部屋から出たり入ったり、あるいは廊下のずっと先まで伸びたりと、思い思いの方向に向かっている。
 ぼくは自分の左手を見やって、ほっと息をついた。
「ぼくだけじゃ、なかったんだ」
 こんな状況におちいっているのは、どうやらぼくだけではないとわかったのはよかったけれど――けれど、だとしたら、手の混みすぎたいたずらだ、ということになるのかもしれない。それはちょっと、正直コワイものがある。
 廊下の先の方には、ぼくと同じように廊下に出て、驚いた声をあげている人々がみえた。数人の生徒が、何か話しながら、糸をひっぱったりたぐったりしている。
 どうしようか、とぼくはため息をついた。ぼくも誰かと、相談したいけれど…。たよりのギイは、いないし。
 やっぱりここは、親友の利久、かな? ふたり一緒に悩むことになる気もするけど。
 それとも、頼りになりそうな――頼らせてくれるかは不明として、同室者兼生徒会長さま? でも、仕事中かもしれない…三洲ならば、この異常事態にも動じなかった可能性がある、気がする。
「あ」
 しまった。朝食、まだだった。
 こんな非常時にどうかとも思うけれど、でも今日の朝食は、ぼくがひそかに楽しみにしている、厚焼き玉子のはずなのだ。食堂に行きがてら、相談できる相手を探すというのも、アリかも。
 うーん、どうしよう?




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