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[ 雑感/日常 ]

「月下の一群」2(小説)

 女子だった。スパイラルの落ちかけだろうふわふわ栗色のロングヘアは背中の半ばに達し白い顔、小さくそれでいて厚みはあるくちびるにグロス、短めの眉はオリーブカラーで入れてオレンジのチークは濃すぎず、要するにかわゆい女の子。マフラーをぐるぐる巻いて、この寒いのにひざ下丈のスカートでそれは小花柄で、要するにフェミニンな女の子。要するに、あたし好みの女の子。いつもだったら専門学校生のフリでもして写真の一枚でも撮らせてもらうところだがこのあたしが色気抜きでつい凝視してしまったくらい明らかに様子がおかしかった。
 更にも一つ気になるのは先ほど挙がったレジの奇矯な叫び声でありそちらも仕方なく見てみると、店員のうちの一名はアフロでありもう一人の店員と入り口の女子とをかわるがわるに見ようとしていた。そして見られる側のもう一名のほうは、ファミマのお仕着せを着ていることやあたしの眼が男子の細部の観察を放棄しがちだという事情を割り引いてもどうという特徴もない外見だった。そして、だったのは過去のこと。今は目を飛び出さんばかりにして口を開閉し続けるという見ているものを不安にさせる形態へと化していた。あたしは見苦しさにつと目を逸らした。
 残りの人々すなわちあたしを含めた男女取り混ぜ三名は、店員アフロと同様に女の子とレジとを交互に見やりながら止まっていた。膠着していた。能天気な音楽だけが辺りに充満していた。そして電気が消えた。音楽も途切れた。あたし達は無言のまま奪われた視界にも黙って耐えていた。言葉を発することを畏れていた。

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