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10000ヒット御礼リクエスト特集→匿名様のリクエスト:章タク。
!!!「章タクはじめて物語」です。ひどい冗談だと思ってください本当にすみません…というかもしかしたらこれはギャグなのかもしれません…イメージを壊したくない方は、申訳ありませんがご遠慮下さい…。






 ああ、一体全体、僕はどうしたらいいんだろう?

「っていうか、まだしてなかったの? 同室になって、何ヶ月経つと思ってる? 何なのそれ、もしかして、何かそういうプレイなの?」
 軽口を叩いている顔を思うさまじろりと睨付けてやったが、当の三洲は何処吹く風と、にっこり笑みを返してきた。
「恐いよ、赤池」
「……お前に相談するんじゃなかったよ」
「嘘、冗談だって。それに俺も、そろそろ来る頃だと思ってたよ」
 そう言うと、三洲は僕の肩を気安くぽんぽんと叩いて、またにっこり微笑んだ。
 いつも通りの、三洲と二人の屋上でのコーヒータイム。
 予期していた以上の気まずさを抱えながらも、僕は後には引かない決心をしていた。
 先ほどはああ言ったものの、僕には他に相談できる相手がいないのだ、こんなこと――例え僕がリプレイヤーでなかったとしても、一体誰に相談すればいいって言うんだ?
「けど、ほんとに高校生の頃の赤池だったら、まかり間違っても俺に相談しようなんて、思わなかっただろうな。赤池の精神年齢が21歳の分別盛りで、葉山にはよかったんだろうな、きっと」
 まあ、そうなのかもしれない。
 三洲の前にこんな恥を晒けだしているのも、そしてそれと判っていながら半端にすます気がないのも、総ては――、葉山のためなのだ。僕は葉山の気持ちも身体も、傷つけたくない。その為には、男同士の行為が未経験の僕には、きっと準備すべきことがあるのだと思う、色々な面で。だからこそ、この男にこんな究極的に恥ずかしい質問をしているのだ、僕は。
 改めてそう思い返して、黙って軽口を受け止めていると、三洲は首を少し傾げてにっこり微笑んだ。
「っていうか、まずね、赤池タチのつもりなの?」
「タチ。とはつまり、男役のことか」
 少しは予習して来たんだ、と胸を張りかけた僕に、予期しない言葉が投げられた。
「そう。もしタチネコに拘らないんなら、折角葉山も崎から開放されたことだし、赤池が葉山に抱かれてやってもいいって、思わない?」
 …………それ、は。
 拘るわけではない(なぜなら、まだ右も左もわからない状態なのだ)が、流石にそれは絵的にどうなんだ!?
 僕は頭を抱えた。
「三洲……もう勘弁してくれ、頼むから! 僕にはお前しか相談相手がいないんだ!」
「わかってるよ。だからこうして、遠慮なくからかってるんだろ?」
 この状況に場違いなほどにさわやかな三洲の笑顔に、流石に頭痛が起こり始める。
「まあ、冗談は置いておいて。赤池はいいとして、葉山は何年ぶりかになるわけだろ?」
「だから!?」
「知らなくても、想像ぐらいは出来るだろう? 受け入れる方はいろいろと大変なんだよ、ブランクがあるなら尚更……それに、リプレイヤーってさ、身体の記憶は持ってないだろ?」
「ああ、そう言えばそうだな……うん、酒に弱くなったよなあって思った」
「そうそう、ウイスキーとか焼酎とかストレートじゃ飲めなくなったし。ワインなんかもあんまりおいしくなくなった」
「ってことはあれなんだな、味は頭じゃなくて、身体で味わってたんだなあ」
 しみじみとそう呟きながら、不思議なものだと思う。酒の旨さは知ったはずなのに、この高校生の肉体はそれを理解できない。してみると、旨味は身体で理解していたということになるのだろうが、これは受け入れにくい事実であった。
 しかし、そう言えば。
「三洲。今、彼氏いるのか?」
「何、急に。練習台はごめんだよ?」
「違う! …………そうじゃなくてだな、三洲はどうだったんだ? リプレイはじまって、その、……はじめての時。というか、そもそも三洲はいわゆるネコという方なのか?」
「………………赤池、本っ当に聴きたい? それ」
「わ、すまん、考えなし過ぎた。聴きたくない聴きたくない」
 僕は耳を塞いで大いに反省した。




 結局、三洲の話もあまり参考にはならなかった。まあ自学自習も含め、最低限の知識だけは身につけたつもりだけれど。それでも知識と経験の間には埋めがたい溝があるだろうことは、僕も重々理解している。
 ベッドの中で雑誌を閉じると、僕はため息をついた。
「章三、もう寝る? 電気消すよ?」
「……葉山」
「うん? まだ寝ないのかい」
 それには答えずに自分のベッドをたって、葉山のベッドの端に腰を掛けた。
 ヘッドボードを背に戸惑う表情の葉山の目をしばらく見詰め、それからゆっくりとキスをした。
「……ん」
 葉山の小さな声に、未だに緊張してしまう自分を再確認して少し臆し、そしてそれ以上に情欲を掻き立てられた。もう一度唇の端に小さくキスをして、そのまま首筋にそっと唇を這わせると、ひくりと葉山の身体が震える。
「ん……っ」
 勇気を出して片手を葉山の寝巻の下に忍び込ませると、葉山の身体が瞬時に緊張した。
「あっ……、あの、章三?」
「ん?」
「な、なにしてる……の?」
「何って、ナニだが」
 葉山は目をまんまるに見開いて僕を見上げ、僕は言葉につまり、妙な沈黙が生まれた。
 肌にそっと置いた手が手持ちぶさたで、引こうかどうしようかと考えたところで、葉山がおずおずと口を開いた。
「や……その、本気?」
 僕は出来るだけ平静な声を出すように努めながら、そろそろと葉山の胸を撫でた。
「本気だよ……嫌か? 葉山が嫌なら、やめる」
「や、だって、章三こそ、嫌じゃない?」
「何で」
「…………なんでって」
 葉山はふっと目線をずらした。
「……章三がぼくを好きだって言ってくれたことを疑うわけじゃないけど、でも君は筋金入りのヘテロだったはずだろう? ぼくを……そういう意味で欲してくれなくっても、不思議じゃないし。別に僕は今のままでも、全然不満はないし。……無理は、しないでよ」
「無理なんか」
 してない、と言いかけた僕に、葉山の声がかぶさった。
「あの、それにね、……ゲイでも、その……、……そこまでしない人も、多いらしいし」
「えっ!」
 思わず驚いてしまった僕を、葉山も驚いたような顔をして見あげている。
 あ、しまった、と思う。
 僕はなるべく平静に葉山の目を見詰め返した。
「その、他人のことは知らないけど、……でも、僕は……葉山と、したいよ。葉山は、したく……ないか?」
「え……」
 真面目に問い返すと、葉山は僕の顔を見上げたまま、次第に頬が赤く染まる。
「その」
 やがて俯いて、小さな声で、でもはっきりとした声で、告げた。
「し……したくなくは、ない、です」
 真っ赤になっている葉山はかわいい、と思いつつ、かわいいと言うのも失礼か、と思いなおす。
「あ」
 そうか。
「なに?」
「あのな、もし葉山の方が『したい』んなら、僕が抱かれてもいいぞ」
 三洲のからかいはさておき、葉山がそう望むなら、致し方ない。
「……それは、遠慮しておきます」
 僕の一大決心に、葉山は複雑そうな顔でそう呟くと、困り顔を苦笑にほどいて、僕の手にその手をかさねた。
「うん、ぼくも…………、章三と、したいよ」
 見詰めあい、もう一度、ゆっくりと顔を寄せ合う。
 薄く開いた唇に舌を滑りこませて、あたたかな舌をそっと愛撫する。
 キスだけで昂る身体に、確かにこれは高校生の肉体なのだとつい苦笑する。それとも、相手が葉山だからだろうか。心から願って欲して焦がれた、その葉山が今、僕の腕の中に居る。優しいキスが、身体も、その心をも僕に預けると、無言で僕に伝えてくれる。
 顔をあげ、解いていた上衣を肩からすべらせそっと胸元にキスを落とす。すべらかな(はだえ)は少し熱を持って、触れる度に緊張している。とまどうようなその反応を更にキスでなだめながら、ゆっくりと下衣を降ろして、それに触れる。
「……章三、……っ」
「ん……葉山、」
「や、章、三…………あっ……!」
 触れているだけで、葉山の吐息を耳元に感じるだけで、ひどく欲情してしまう自分に心のどこかで呆れながら、それ以上に性急な欲求が僕の身体を支配する。
 僕は葉山の耳朶にキスをして、乱れる呼吸のままに囁いた。
「……その、いいか? さわっても」
「え?……、さ、わ……うわっ!! な、ななな、なに!?」
 返答を待たずに後ろに手を伸ばした僕に、葉山はすっとんきょうな声をあげ、僕は一瞬動きをとめた。
「その……何か、変か?」
「へん、って、……いうかっ、あっ!」
 更に指を進めた僕の腕に取りすがって、葉山はとぎれとぎれに呟いた。
「いいって……ば、っ、ほんと、に……っ、そんなとこ……」
 やはり……何か、急ぎすぎてしまったのだろうか。
「えーと、何か……おかしい、か?」
「そ……じゃなく、て、…………気持ち悪、いだろ?」
「そんなことはないよ」
 違和感はすごくあるけど。
「や、……気持ち、悪いって、やっぱり」
「そんなことないって。それに、このままじゃ……その、出来ないんだろう?」
「いいから、だから……、…………その、………………自分で、準備するから」
 葉山はそう言うと、僕の腕を押しやった。
 また少し怯んで、葉山に従うべきなのかとも思ったけれど、僕と目をあわせようとしない葉山の顔が真っ赤に染まっているのを見て、やっと気づいた。
 葉山もまた、僕に臆している。
 僕が怯んでどうするんだ。不安なのは、葉山だって一緒なのだ。
「もっと気持ち悪いことを教えてやろうか」
「……なに?」
「僕のオカズは、もう三年以上前から葉山だよ」
「……!!」
 章三の馬鹿とか何とか言いかけた唇を唇で塞いで、身ぐるみ抱きしめる。枕の上に重なり合って、もう余計な思考も入り込めないほどに激しく、キスをする。
「だから……ずっと、こうしたかったよ」
「……章、三」
 肩から(せな)に、胸から腹へ、その先へ。しっかりとしているのにどこか柔げな身体を確かめるように大事に触れる度に、途切れては切なくつかれる葉山の吐息が聞こえ、万感の想いが胸をふさぐ。
 人のことはいい、もう他のことはいい。
 もうずっと僕は、ただ葉山との間にある距離を、なくしたかったんだ。
 そうだ……、隙間もないほど、葉山に触れたかったんだ、僕は。
 伝わるだろうか。
 葉山の一番奥深いところに触れる、そうして歓喜にうち震える、その心を。
 ――ああ、
「葉山、だ……」




 気怠い時間が心地よく、少しの気まずさを含んで過ぎていく。
 僕はヘッドボードによりかかって、凭れかかる葉山の頭を撫でていた。
 僕に体重を預けた葉山は心地よさそうに目を閉じて、黙ったまま僕の好きに髪を梳かせている。
「大丈夫だったか?」
「うん? 大丈夫だよ?」
 葉山は目を開けると僕を見上げて少し微笑み、僕も微笑み返す。
「……なら、よかった。…………その、」
「ん?」
 穏やかに僕の言葉を待つ葉山の顔を見て、僕は顔色を変えずにうろたえた。
 ……気まずいのは僕だけなのかもしれない。
 だって、何しろ。
 よかった? とか、聞けやしないではないか。まして、ギイとどっちが? なんて、絶対聞けない。というか、絶対聞いてはいけない。
 もし自分がそんなことを言われたら相手をぶん殴っていると思うし、というより男として、というかもう人間としてかなり最低な質問だという気がする。
 しかし、……気になる。正直、気になる。というか、多分僕はギイの
「章三」
 ふと呼ばれた声に我に返り、能う限り平静に微笑んで葉山の顔を覗き込む。
「何だ?」
「ええと、……ありがとう」
「……何、が」
 ほんのり染まった頬に触れたい気持ちを苦労して抑え先を促すと、葉山は照れたように笑い、けれどしっかりと言葉を継いだ。 
「なんか、ね。その……しなくても別にいいって思ってたのは、嘘じゃないんだよ? でも、何て言うか、章三がしてくれて、やっぱりうれしかっ」
 理解するより早く、言葉の続きは唇で受け止める。
 ぐるぐるとした思考はどこかへ吹き飛んで、堪え性のない欲求が瞬く間に復活する。
 思考も身体もそれだけになって、もう自分では止められない。

 ……ごめん、葉山。
 明日の葉山の欠席届は、風紀委員長が責任を持って届け出るから。











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 匿名様にいただいたのは、章タクのつづき、ということでした。リクエスト、ありがとうございました!
 しかしその時点では「リプレイ」が未了でしたので、きっとリプレイのつづき、ということだったのでしょうが……わたしが書きたかったので、「アフターリプレイ」しかも裏、とさせていただきました…すみません…!!!

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