恋は桃色
恋は桃色:トップページへ





!!!注意!!!
キャラクターがかなり壊れている上、やや下品な&局所的な話題が含まれています。
どうか以上のことをご了承の上、ご覧ください。







   「ビバノンノン」






「何かがおかしいとずっと思っていたんだ僕は」
 いつになく怖いくらいに真剣な表情でぼく達の部屋に入ってきた章三に、ぼくはやり掛けの課題の手を止め、ギイも読みかけの雑誌を脇に置いて向き合った。
「何がおかしいって? 章三」
 三人分のコーヒーをつくりながらギイが問うと、ギイの椅子をぶんどった章三は咬み付くように言った。
「男子寮なんだぞ、ここは」
「ああ、だから?」
「男子寮ってのは、もっと殺伐としているべきだと思わないか?」
 章三の意図が全くわからない。ぼくとギイは顔を見かわした。「吉野家コピペ、かな」
「男子寮、ね。部屋がめっちゃ汚いとか、チャンネル争いでケガ人が出るとか、エロ雑誌の奪い合いとか、そういう状況があるべき姿だとでも?」
「エロ雑誌!」
 ぼくの鸚鵡返しはきれいに素通りされ、章三は重々しく頷いて言葉を繋げた。
「まぁそこまで低俗にならなくともいいんだが、要するにそういうことだ。この寮はおかしい。ぼくはいろいろな専門書を読んでみたんだが、一つ気づいたことがあるんだ」
 ふと気づくと、章三の手には数冊の少女漫画があった。
「あ、赤池くん、それなんだい?」
「これか。これは専門書だ」
「なになに、『摩利と真吾』、『ここはグリーンウッド』、『ブレックファーストクラブ』、…『月光庭園』(これ、なにかに似てるね…)???」
 ぼくとギイは再び目くばせしあって、それだけでは飽き足らずにひそひそと小声をかわした。
「専門書ていうか、漫画だよなあれ…?」
「しかも少女漫画みたい…赤池くん、どうしちゃったんだろう?」
 章三はぼく達の様子には構わず、ビシリとぼくに人差し指を向け、言った。
「葉山、この寮には重要なものが足りないんだ。いや、逆に言えば数が多すぎるんだ」
 ぼくは仕方なく先を促した。
「そ、それは、なに?」
「共同風呂だ」
「はぁ?」
 今度こそ、ぼくとギイは声を合わせておおっぴらに疑義を示した。
「同じ少女漫画でも、『花ざかりの君たちへ』の男子寮は個室風呂だったぞ?」
「……何でそんなこと知っているんだい、ギイ」
「絵利子に頼まれて買った漫画を、念のため検閲したんだ」
「……つまり、少女漫画、読んだんだ」
「これも兄としてのつとめだ、託生」
 さっぱりわからない。ギイはぼくを無視して章三に向き直った。
「それはそうと章三、共同風呂がないから、この寮はおかしいって言いたいのか?」
「まぁそれだけではないんだが、それも大きな要因だ」
「何を言い出すかと思えば、そんなもん祠堂にあってたまるか、だ。風呂が共同だったら、託生の素っ裸が全校生徒に晒されることになるんだぞ!?」
 そういう問題じゃないだろうギイ、とぼくが突っ込みを入れる間もなく超高速で章三の鉄拳が命中し、カンマ一秒後にはギイは自分のベッドに沈んでいた。
 唖然とするぼくに向き直ると、真剣なまなざしで章三は続ける。
「な? 共同浴場がないからこういうおかしいヤツが出てくるんだ。寮生達が毎日一緒に風呂に入る生活だったら、男同士で肌を見せ合うことなんぞどうってことないことだと、それこそ肌で理解できるはずなんだ! 『裸の付き合い』はッ! 日本の伝統文化だッ!」
「……ジョジョになってるよ、赤池くん」
「ジョジョはやっぱり第四部だよな…と、違う違う、兎に角、だ。共同浴場のない状況が、今のようにみだれ、ただれた、忌々しい祠堂寮をつくりだしているのだと僕は思うんだよ、葉山」
 みだれ、ただれた、いまいましい祠堂寮――くらくらしてきた。
「赤池くん、冷静になってよ。確かに君の言うとおり、お風呂が共同だったら、もしかしたら今みたいな状況にはならなかったのかもしれない。でも既にこの状態で一年以上暮らしているんだから、今更お風呂を共同にするなんて無理だよ。だって考えても見てよ、山下くんと高林くんと吉沢くんが、よりにもよってお風呂で顔を合わせちゃったりするんだよ? 奈良先輩と野沢くんと駒沢もだよ?」
 ぼくは自分で言いながらゾーっとした。流石に章三もその状況の恐ろしさに気づいたらしく、少し顔が青ざめたようだ。あらぬ方向を見遣り、だが言葉を継ぐ。
「まぁ、確かに葉山の言うことにも一理あるな。だがな、そういった状況も、世間ではあり得るはずなんだ。どんな相手であれ男は男、それが当たり前の常識なんじゃあないのか? 僕はこの祠堂寮に、世間並みの常識をはぐくみたい。だから…」
 章三は言葉を切り、ちらりと僕の顔を見た。
「だから?」
「だからまず、そーいう極端な奴らやギイのようなわからずやはさておいて、なんとかなりそうなところから手をつけるべきだと思う」
「なんとかなりそうなところ、っていうと…?」
 恐る恐る聴いたぼくの肩にがっしりと両手を置いて、章三は重々しく頷いた。
「とりあえず葉山、今日は僕と一緒に風呂に入ろう」
「はぁ!?」
 もう、ついていけない。ぼくは丁重に断ろうとしたけれど、章三はぼくの肩をつかんで離してくれそうにない。
「たまにはギイを抜きにして『裸の付き合い』をしようじゃないか!」
「嫌だよ、赤池くん」
「何が嫌なんだ! 葉山だって銭湯とか温泉とか行くだろう? それと一緒だ!」
「い、一緒じゃないよ! 赤池くんと二人で寮の部屋風呂に入ったなんて、もし誰かに知られたら絶対ヘンな勘違いされるよ!」
「男同士で何が勘違いだ! そもそもそういうおかしな発想がだな、」
「ギイ、ギイ起きて、助けて~!!」

 必死の叫びはついに届かず、ぼくは章三に連行された。
 その後のことは、ちょっと、もう、思い出したくない。












---
 わけのわからないものを書いてしまい、ほんとーにすみません…。それだけです…。
 あ。章三初書きがこれになってしまった…。

11

せりふ Like
!



恋は桃色
恋は桃色:トップページへ