恋は桃色
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10000ヒット御礼リクエスト特集→みお様のリクエスト:2年生・3年生どちらでも、やむなく一人で下界に出かけた託生くんが同級生のボウリング合コンに断れず参加してCP優勝してしまう。悔しかったギイもチャレンジするけど計算しすぎて上手くいかず最下位、託生は章三とのCPでも優勝しちゃう。
!オリキャラ有です!












「純情無鉄砲ハニー☆」











「あっれー、ギイに赤池じゃん」
 土曜の午後のボウリング場はそこそこ賑わっており、順番待ちの状況だった。手持ちぶさたにダーツでもしようかと話していた二人がすっとんきょうな声に振り返ると、クラスメイトの河本がコークの缶を手にして立っていた。
「二人で来てんの?」
「ああ、予定が変わって暇になっちゃってさ。たまにはボウリングでもするかーって思って、でも順番待ちでさ、ついてないよな」
「そうなんだ、随分混んで来たもんなー。あ、ヒマならこっち顔出してく?」
「クラスの奴らと来てるのか?」
「うん、そう。葉山も居るしー」
「……………………は?」
 何気ない調子でさらりと告げられた名前に、ギイと章三は顔を見合わせた。
「葉山が文化祭実行委員の反省会が入ったとかで、今日の映画は延期にしたんじゃなかったか? ギイ」
「オレに怒るなよ、知らないぞ」
 章三をなだめるギイであったがしかし、すぐにそれどころではなくなった。
「え、あれ……うっそ、マジ!?」
「ギイくん!? マジでー!?」
「えー、あれって崎さん!? ホンモノ!?」
「やだ、ちょーカッコイイ~!!!」
 河本について向かった先には数人のクラスメートと、彼等と同人数の女子高生らしき集団が集っており、目ざとい女の子の歓声が鶴の一声となって、辺り一帯は騒然となってしまった。
 そんな騒ぎの中から託生がひょいと顔を覗かせ、暢気な声を出した。
「あれ、ギイ、赤池くん」
 ギイは黙って手招きをすると、託生を呼び寄せた。
「どういうことだ、これは?」
 開口一番の詰問口調に託生は少し気まずそうな顔をした後、ごめんね、と素直に謝った。
「反省会ね、延期になっちゃったんだよ。で、日用品がいろいろ切れてたの思いだして、一人で下山したんだけど、途中で河本くんたちに会ってね」
「そうそう。俺らは文化祭で知り合った女の子たちとさ、ボウリング大会しよーって言ってたんだけど、米沢がバスの中で体調悪くなっちゃって、Uターンしちゃってさあ」
 横合いから河本が口を挟み、託生もそれにうんうん、と頷いた。
「人数足りないけどしゃーないよなあって言ってたんだけど、丁度待ち合わせの近くで葉山見つけてさ、超ラッキー、みたいな?」
「河本くーん、順番来てるよお」
 のんきにぺらぺらと解説していた河本は、かわいらしく自分を呼ぶ声のする方向に、謝りながらすっとんで行った。どうやら男女でのペアルールが行われているらしい。
 後に残されたギイは、内心の怒りを押さえ込みつつ、託生に向き直った。
「で?」
「うん、そんなわけでね、無理矢理引っ張って来られちゃって」
 肩をすくめてみせた託生に、ギイは怒りを爆発させた。
「来られちゃったってお前、合コンじゃないか!」
「違うよ! ……そんなこと河本くん言ってなかったもん」
「言ってなかったって、じゃあなんでペアルールなんだ!」
「知らないよ、もう、ちょっと黙ってて。次ぼくの番だから。勝ったらディズニーランドのパスポートがもらえるんだよ」
 呆気にとられているギイを置いて、託生は自分のレーンに戻っていった。慣れた手つきで指に風をうけ、ためらいなくボールを取り上げる。
「ペアチケットが景品なのか。豪勢な合コンだなあ……」
 きわどいラインどりをしてダブルスパートナーが残した大量のピンをすべてなぎ倒し、あっさりとスペアをとった託生の投球を見ながら、章三はぼんやりと呟いた。
「そんなことはどうでもいい! なんであいつはあんな真剣にやってるんだ、章三!」
「それこそ知らないよ、僕に聞くな」
 またスペアね、なんて潤んだ瞳で託生を見あげている隣りのレーンの女の子に、ギイはポーカーフェイスの裏からガンガン呪いを送る。
 章三は傍らの相棒を呆れた顔でちらりと見て、また視線を目前のレーンに戻した。
「それにしても、葉山、上手いんだなあ。運動苦手なくせに」
 章三が独りごちていると、託生のパートナーの女の子が、託生の顔を覗きこむようにしてにっこりと微笑んだ。
「ねーねー葉山くん、さっきからすっごくうまいよねー。ボウリング好きなんだ?」
 なんてタイミングのよい(悪い?)質問だろう。ギイは更にイライラをつのらせつつ、ついつい耳を峙てる。
「ううん、ぼくは別に好きじゃないんだけど、両親が好きでさ。昔からよく連れて行かれてたんだけど、会話が続かないから、ずっと投げ続けてたんだ」
「ふうん、じゃあ年季入ってるんだー。ね、アベレージってどのくらい?」
「うーん……最近やってないからわからないけど、夏にやった時は240くらいだったかな、確か」
「え、すっごぉーい! 葉山くん、プロになれるんじゃないー?」
 そんなこんなでひたすらスコアを伸ばし続ける託生とそれをなんとなく見学しているギイに章三、託生の腕前にきゃあきゃあ騒ぐ女子、はたまたギイに熱い視線を送る女子に囲まれて、本来の合コン参加者であるクラスメート達は、がっくりと肩を落としていた。
「葉山はプロ級の腕前だし、ギイには会っちゃうし……」
「何かこう、ひたすらついてないな、俺ら……」



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 三ゲームを終え、結局託生のペアは圧倒的な強さで優勝を果たした。あきらめ顔のクラスメートと女の子達に賞賛されている託生は照れた顔ながらもやはりうれしそうであったが、勿論それを笑って祝福できるギイではなかった。
 合コンの幹事だったらしい河本が託生に商品を手渡したところでゆらりと立ち上がったギイは、託生にびしっと人差し指をつきつけた。
「託生! そのペアチケットを掛けてオレと勝負しろ!」
「ええ~!? ぼくはいいけど……」
 託生はやや困惑顔で、パートナーの女の子を振り返った。
「え、えっと、あたしも別に構わないけど……でもあたしが組んだら、葉山くんの足、引っ張っちゃいそう」
「折角チケットがもらえるんだもんね」
 託生は軽く頷くと、ギイの隣りでこの展開に唖然としたままの章三に声をかけた。
「赤池くん、彼女の代わりにぼくと組んでくれない?」
「僕が? ……別に、構わないけど。ギイは?」
 相棒を気にする章三に、河本が手をあげて声をかけた。
「あ、じゃあさ、俺がギイと組もうか」
「よし河本、託生をやっつけるぞ!」
 ギイは協力を申し出た河本に片手を差し出し、二人はがっちりと握手をした。
「ルールはさっきと同じ、スカッチダブルスでいいか? じゃ、河本から投げろよ」
「赤池くん、アベレージはどれくらい? そう、ぼく先でもいい?」
 かくしてはじまった第二回戦に、クラスメートたちは傍観を楽しむことに決めたらしく、無関係な客までが集まり始め、二本のレーンの周りにはちょっとした人だかりができていた。
 なんだか変なことになっちゃったなあ。託生の第一投に上がった周囲の歓声を聴きながら、章三はため息をついた。これでは、素直にボウリングを楽しめそうもないではないか。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「……なんで……負けたんだ? 途中までは、いい勝負だったのに……」
「なー、葉山の先行がよかったのかなー……」
 悄然とするギイの横で、共にこてんぱんにされた河本もため息をついた。
「珍しくお前の作戦負けだな、ギイ」
 ぽんぽんと後ろから肩を叩いてねぎらった章三を、ギイは恨めしそうに振り返った。
「章三も……手加減なしにやってくれたもんだな」
「してほしかったのか? ギイともあろうものが……ま、僕もここまで差がつくとは思わなかったけど。まったく、葉山も時々底知れない奴だよなあ」
 クラスメートや女の子に囲まれて賞賛を受けている託生を眺めやり、三人は改めてため息をついた。人の輪を抜けてこちらへ歩み寄ってくる託生は、気のせいかいつもよりも堂々として見える……気がする。
「赤池くん、お疲れ様。組んでくれて、ありがとう」
「いや。楽しかったよ」
 久々にギイに勝てたし、とは言わずにおく。
 託生はちょっと困ったような顔で、章三の顔を覗き込んだ。
「あのね、チケットなんだけど。ペアだった子にあげてもいい?」
「ああ、勿論……構わないけど……葉山、そんなにデートしたいのか?」
「うん? 何が? だって巻き込んじゃ、申し訳ないだろう?」
 託生はそう問い返しながら商品の封筒を開くとパスポートチケットを取り出し、一枚を後ろについてきていた女の子に差し出した。
「はい、どうぞ、これ。君の分」
「あ、どうも、……?」
「それじゃ、ね。ギイ、帰ろう」
 状況がいまひとつ飲み込めていない彼女ににっこりと微笑むと、状況がいまひとつ飲み込めていない恋人を促し、託生は返事も待たずにすたすたと歩き出した。
 後には呆然とするクラスメートたちと、騒然となった女の子達が残された。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「はい、ギイにあげる」
 気を利かせた章三とは別行動で帰る途中、託生は先ほどもらったばかりのパスポートチケットを、ギイの目の前に差し出した。
「……は?」
 ギイは鳩が豆鉄砲をくらったような気分で、つくづくと託生の顔とチケットを見比べる。
「一緒に行こうよ。ぼくの分のパスポートはワリカンしてね」
「………………どういうことだ?」
「ギイ、東京のディズニーランドは行ったことないって言ってただろう。ぼく、一度ギイと二人で行ってみたいと思ってたんだ」
「………………ああ、そう…………ですか」
 いや、確かにそんな話をした覚えはある。で、何だって? 託生とオレで? ディズニーランド? それで、このパスポート………………?
 行くとしたら冬休みかなあ、でも混んでるかなあ、なんてのんびりと算段している託生の顔を再びつくづくと見つめ、ギイは盛大にためいきをついた。
「あーあ、しょーがないよな、全く」
「なにが?」
「だって託生なんだもんなあ。心臓がいくつあっても足りない気がするけど、頑張るとしますか」
「……そんなに恐いアトラクションなんかあったっけ?」
「違うって。チケットありがとう。お前の分のパスポートも昼飯も夜もおごるよ、ポップコーンもつける」
「え、いいってば、そんな」
 無茶ばかりして、こうと決めたら誰が何と言おうと引こうとはせず、いつもオレを心配させて。
 でもそんな託生だから、好きなのだ。
「あー託生と遊園地デートか、楽しみだなあ」
 夕間暮れの街を歩きながら、ギイは先ほどまでの不機嫌などさらりとどこかに流した顔で、心からうれしそうにそうつぶやいた。












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 リクエストをくださったみお様、ありがとうございました!託生のニュアンスなど、ちょっとリクとは違うかなと心配な部分もある(わたし二年生の頃の、結構無茶出来ちゃう託生が好きなんです…)のですが、楽しんで頂けましたら幸いです。

 ボウリングはあまり得意ではないというか、むしろむちゃくちゃ苦手なので(嫌いではないんです、すごく下手なだけで…)アベレージなど細かい部分や作戦についてはスルーの方向でお願いします…。あと、どーでもいいんですが、ギイたちが予約キャンセル→その分託生たちのゲームを延長、という手続きをどこかの面倒見のよいクラスメートがしてくれたのでしょう…(笑。
 TDL、大概の優待パスポートはシーでも使えるはずですが、彼等はどっちに行くんでしょう(笑、というかシーは彼等の世界にあるのでしょうか…。

 タイトルは、いつか絶対使おう!と、前からとってあった案の中から。

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せりふ Like
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