恋は桃色
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『機械仕掛けのエア』前書




 パラレルです。SF設定です。色々といたい設定が多いと思いますが、パラレルということでご理解頂ければ幸いに思います。








Is this lo
ve?
This is lo
ve!







for the biggining;

 2006年、葉山尚人・託生の両親、自宅火災により死亡。
 2011年、葉山託生、事故により死亡。
       葉山尚人、帝都大学を辞職。S県に葉山工学研究所を設立。
 2012年、葉山託生、中学校に復帰。


 2013年、春。桜の並木の、満開の下。


「葉山託生、だよな?」
「え?」


 突然背後からその名前を呼ばれて、声のした方向に振り返ろうとした瞬間、突風が吹いた。
 ぼくはぎゅっと目をつむって、風をやり過ごす。ごうっという風の音やそれに揺らぐ桜の枝々の鳴る音、そこに混じる辺りからあがるちいさな悲鳴、ばさばさと自分の前髪がひたいに零れ落ちる音が通り抜けていった。
 収まったかな、とそろそろと目を開くと、乱れた前髪が視界を思い切り邪魔していた。頭を振って手で軽く整えていると、先ほどの声がまた聞こえてきた。
「託生? 大丈夫だったか?」
 俯いているぼくを覗きこむ相手の顔を何の気なく見返して、ぼくは思わず息をのんだ。
 すごく、きれいな人だったのだ。
 栗色の髪は春の陽を透かしてきらきらと光り、意思の強そうな目も同じ栗色。彫りの深めの顔立ちは、日本人ではないみたいだ。ひらひらと舞い降る桜の花弁が白い頬に落ちかかると、彼はそれを右手で軽く払い、にこっと笑った。そんなふうに微笑むと、整っている顔に表情が載って、まるでふわりとやわらかな筆で色を刷いたかのようで、ますますきれいなんだな、と、ぼくはぼんやり思った。
 無言で立ち尽くしているぼくから返事を得るのを諦めたらしく、彼は少し首を傾げて口をひらいた。
「全然、変わらないな」
 そのセリフに、彼はなぜか、その名を知っていたのだ、ということを思い出す。
 ぎくりと身をすくませると、彼はまた軽く微笑んだ。
「オレのこと、忘れちゃった?」
「えっと、……ごめん、わからない」
「仕方ないさ。オレは崎義一。親しい人はみんなギイって呼んでる」
「はあ……、」
 張り合いのないぼくの反応に、彼――ギイは、ひょいと眉を上げて先を続けた。
「昔、会ったことあるんだぜ? ほら、丁度ここのふもとの街で――」
「あ、あの、」
 ぼくはほとんど無意識に彼の言葉をさえぎっていた。
「ごめん、君のこと、全然覚えてない」
 目を合わせず、おざなりな謝罪を残して、ぼくは彼に背を向けて走り出した。
 はらはらと花弁を零す桜並木を、新入生の群れを避けながら全力で疾走する。何の感慨もなく正門を潜り抜け、人の居ない方へと駆ける足を向ける。
 そうして走って走って、ぼくはいつしか林の中に入り込んでいた。
 周囲に人気がなくなっているのを確認して、やっと足をとめた。入学式の初っ端から、もう、くたくただ。ぼくは肩に掛けていた鞄を放り出し、両膝に手を置いて肩で大きく息をした。何度も深呼吸を繰り返して、懸命に息を整える。荒い呼吸が収まり始めると、ぼくはもう一度、来た道を振り返った。
 胸がまだどきどきと躍っているのが、手をあてなくてもわかる。


 ――彼は、ギイは。
 『ぼく』を知っているのだ。

...to be continued





1、Another Morning

2、I Know You

3、(underconstraction)

6

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