恋は桃色
恋は桃色:トップページへ





!!!!!パラレルというか、ダブルパロディです。
!!!!!元ネタは『真夜中猫王子』です。
!!!!!なので、ギイがネコです。







「で、魔法を解いて人間に戻るには、どうすればいいんだい?」
「それが判れば苦労はしない!」
 と、ネコ、もとい、ギイ王子は胸を張った。
「威張って言うことじゃないだろう…」
「とりあえず、自由に動ける夜のうちに、手がかりを捜そうと思うんだ」
 そんなもの、そう簡単に見付かるのだろうか、と思ったけれど、水をさすのも悪いので、託生は黙って頷いた。
「よし、そうと決まれば早速探索に行こう。ところで、ここは何処なんだ?」
「ここは、祠堂学院っていう学校の、寮の中だよ。あそこに寝てるのが、ルームメイトの利久。一度寝たら、朝まで起きないんだ」
「ふうん」
 ギイは利久のベッドに身軽に飛び乗ると、ネコ手で頬をぺちぺちと叩いた。
「ほんとに起きないな」
「利久には、明日紹介するよ。じゃ、外に行こうか」
 託生はギイを抱き上げて床におろし、ネコフードを被せてやった。ネコフードをかぶると、一見ほんもののネコそっくりに見えるのだ。にゃあ、とないてみせたギイににっこり微笑みかかけ、自分はシャツをフリースの上着にかえて、ギイをおなかに押し込んだ。
「ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢して静かにしていてくれよ。寮、ペット禁止なんだ」
 ギイは文句の代わりに、暢気に欠伸を返した。
「託生のおなか、あったかいなー。オレ、眠くなりそう」
「寝るなよ……」







 階下に降りて、談話室を覗いてみると、見知った顔の中に赤池章三がいた。昼間のお礼を言おうかと迷っていると、後ろから声をかけられる。
「珍しいな、葉山。こんなところに来るなんて」
「み、三洲くん。こんばんは」
 振り返ると声の主はクラスメイトの生徒会長だった。託生は一歩下がったものの、なんとか挨拶を返す。三洲は気にしない素振りで、にっこりと微笑んだ。
「どうした? 何か用事?」
「な、なんでも」
「暇なんだったら、一緒にテレビ見てく?」
 ふと顔を近づけた三洲に、託生はまた一歩を引き、ふるふると首をふる。
「ごめん、……やっぱり、行くとこあるから」
 くるりと踵を返し、託生はそこから逃げ出した。
 ロビーを抜けて、人気のない玄関で息を整えていると、お腹の中のギイが声を掛けてきた。
「託生、どうした急に? あいつ、いじめっこか?」
「ちが……違う、よ」
 心配そうに見あげるギイに、託生は淋しく微笑んだ。
「ごめんね、急に。ぼく、接触嫌悪症なんだ。人に触られたり近寄られたりするの、ダメなんだよ」
 フリースの中で首をかしげたギイは、肉球のついた手でぽんぽんと託生のお腹をたたいた。
「なに?」
「オレは触ってても、平気なのか?」
「平気みたいだね……ネコだからかな?」
 オレはネコじゃないぞ! と騒ぐギイをなだめながら、託生はふと微笑んだ。
「ほんと、どうしてだろうね。利久だって家族だって、触れなかったのに」
「ふうん。ま、いいか。それより、さっきまん中のあたりに座ってた奴、誰かわかるか?」
「誰って、どんな人?」
「こう、中肉中背で、青いシャツの…あ、あいつ!」
 ギイがネコ手で指し示した方向を見ると、赤池章三がこちらに歩いてくるところだった。







 託生は急いでギイをしまいこみ、そっと章三の様子をうかがった。章三もこちらに気付いたようで、意外そうに声をかけてきた。
「葉山、何してんだ、こんなとこで」
「赤池くん……わ!」
 もぞもぞと動いたお腹を見れば、ギイがフリースから顔を出してしまっていた。
「こら、ギイ、出てきちゃダメじゃないか!」
「大丈夫だよ託生、こいつだって……」
「ちょ、しかも、ネコなのに人間語、しゃべっちゃうし! あ、赤池くん、あの、これは…!」
 託生がどう弁解したものかとあたふたしていると、章三は少し驚いた顔をしたものの、黙って自分のシャツの前をひらいた。
 そこには、きれいな黒いネコが丸まっていた。
「奇遇だな、葉山」
「ネコだ」
 託生が驚いてそう言うと、黒ネコは耳をぴんと立てて突然口を開いた。
「あ、かわいい!」
「!」
 またしても言葉を発するネコが登場し、託生が仰天していると、黒ネコはフードをはずしてきれいな黒髪をさらりとなびかせた。
「君、かわいいね。葉山くんって言うの?」







 ギイもフードをとると、怒りの表情で黒ネコにくってかかった。
「やっぱりお前か、佐智! こいつからお前の気配がするから、おかしいと思ったんだ!」
「やあ王子、久しぶりだね」
「久しぶりだね、じゃない! この妙な魔法、お前が掛けたんだろ!」
「ちょ、ちょっとギイ、声が大きいよ」
 託生が周囲の耳目を気にしてなだめても、ギイはきかずに黒ネコに飛び掛からんばかりの勢いで怒っているし、黒ネコも平気な顔で笑っていて、人間の声などまったく聞こえていないのだ。章三も自分の黒ネコをなだめながら、声をひそめて託生に言った。
「葉山、人に見られたらマズい。一旦外に出よう」
「う、うん。ほら、ギイ、一旦隠れて」
 託生はなんとかギイを上着におさめて、章三の後について、あたふたと寮の外へと向かった。




その3へつづく





9

せりふ Like
!



恋は桃色
恋は桃色:トップページへ