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[ 読書/一般コミック ]

尚村透『失楽園』1、2

 騎士(ナイト)になってお姫様を救いたい女子高生・ソラが、ある日突然超エリート学校への編入をゆるされたのですが、なんかその学校というのが超男尊女卑をむねとしてまして、女の子は男子の道具扱いなのです。具体的には、エグザクランというバーチャルリアリティな決闘ゲームがありまして、男子は所有物の女子から武器を取り出して戦い、負けると相手に武器=女子をとられてしまう、ということが行われてるのです。いちおう道具なので、男子は所有物の女子を「守ってやる」というのですが、ソラはそんなのちがーう!といって、なぜか送られてきた制服にまぎれていた手袋=エグザクランに参加するためのツールをつかって、女の子を本当の意味で守ろうと孤軍奮闘をはじめまして。

 いやー、うん、男尊女卑の世界を徹底的に戯画化して描くと男性蔑視になってしまうんだな、ということがよくわかる、その意味でとても興味深いテクストだなあと思った。
 徹底した男尊女卑の世界において、虐げられてる女を救うのも女で、男はすべからく女をモノ扱いしてなんとも思わないような悪人ばかりなんだもの(かよわいメガネ男子も一応いるにはけれど、今のところほとんど意味をなしてないみたいだし)。なんというか、道を間違えたフェミニズムが男性差別をするような、マイノリティの代弁をしようとして逆差別になってしまうような、そんな構図の戯画化に見えなくもない。
 でも多分作者は、行き過ぎたフェミであるだとか、逆にフェミ批判をしたい人なのだとか、そういうわけではないだろうと思うので、むしろそこにノイズが生まれて面白くなる可能性がある気がする。さっきあげたメガネ男子みたいなキャラが、うまくノイズになったら面白いだろうなあ。

 あと、女子をモノ扱いするというと、どう考えても性的搾取を連想してしまうし、実際この世界の中でもそういう側面もあるにはあるらしいのだけれど、そのあたりはごまかされてるような?気もしてちょっと不満も残る。でもモノ扱いという差別がイコールほんとにモノ、つまり武器である、というのは言葉遊びみたいで面白い。

 ところで、ソラが僕は騎士になりたい!とか言い出したあたりで、ああウテナかーと自然に思ったのだけれど、なんかウテナのパクリだという批判もあるみたいで。あたしとしては、ウテナを連想するのは当たり前な気がしてたし、設定にはオリジナリティというかウテナとの差異があるように感じられたので、パクリというよりもインスパイアだと思っていたんだけれど、でも冷静になってみるとウテナも既に相当古い作品で、誰もが知っているってわけでもないんだよな~(笑。

 あ、内容は普通にそこそこかなあという印象。ところどころ話運びがいまひとつな印象はあるし、たとえば親友のツキの所有者についてソラが気にしようとしないのはなんで?とか。キャラは…ソラが上述のように全く感情移入できない、アンドロイド的記号的なキャラなので、まあ気色はあんましよくないけど、個人的にはこれも上述のようにエクリチュールに焦点をおいて読みたい感じだったので、そんなに気にならなかった。あと時々頭身がすごく大きくなるけれど、でもまあそんなには気にならない。

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