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[ 読書/一般コミック ]

菅野文『オトメン(乙男)』1

 ちまたで話題のオトメンをやっと読んでみた。
 …あんまり面白くなかった…。

 菅野文はわたしがまだ花とゆめを買っていた頃デビューした作家で、その頃から絵はいいのだが話がどうにも面白くないなあともったいなく思っていた。しかしもう随分キャリアつんだだろうし、こんなおいしい設定だったら誰が描いてもある程度は面白いだろうし、と期待しつつ読んだのだけれど、あまりに難点が多すぎてハマれない。

 どうも主要人物のキャラが立ちきってない気がする。オトメンこと飛鳥は、乙女な内面とそれを隠そうとする外面という二本柱で、しかし柱しかないぞ?壁や屋根はどこだ?って感じ。なんというか、乙女っぷりが表面的というか、恋をすると裁縫がしたくなるとか、占いが気になるとか、乙女要素の羅列という感じで、いっこの人格としての飛鳥という人間が把捉できない感じというか。だからちっとも感情移入できない。
 不器用女子のりょうちゃんも冒頭みたいな正義感っぷりと後々出てくる天然ぶりはアンバランスで、どのへんに落したいのかよくわからないというかむしろ飛鳥達の行動に体よく引き摺られて(勿論体よくりょうちゃんを〈徴用〉しているのは作家なのだが)キャラ迷子という感じ。いずれも描写の足りてない、設定だけ貼り付けたカキワリのようなキャラに思えてしまう。

 そしてストーリ自体もベタを通り越して凡庸というか、面白みがない。むしろベタ展開を期待していたのだけれど、ベタを通り越して単に単調なだけのストーリになっている。りょうちゃんの父の話とか、特にそんなかんじ。

 しかしこうした難点は、要するにこの作家が漫画がうまくない、ということである気もする。どうもコマのつなげかたや場面の切り替え方がへたで、読んでて入り込めないし、そういう不器用さがキャラづくりやストーリ展開のまずさにもつながっている気がする。
 上述のキャラ設定やベタストーリにしても、もっともっと戯画化して極端な描写で描くとかすれば、もうちょっとインパクトや説得力が出て、漫画としての「力」になっただろうと思うのだけれど、サラリと描いてしまっているという感じ。そういうサジ加減が出来ないという点でも、漫画家としての巧さに欠けている印象を受けた。

 ただ、ちまたでは人気作品らしいので、この作品が楽しめないのはわたしの感性が古くなってしまっているということなのかもしれない。どうしてもやはり漫画としてあまり巧い作品ではないとは思うものの、うまくない漫画でも面白い作品はいくらでもあるのだから。

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 わたしは実は花ゆめ最盛期をぎりぎりはずしてしまったかわいそうな読者(笑)なのだけれど、それでもわたしが読み始めた頃の花とゆめはまだまだ力のある漫画がいっぱいのってた(本橋馨子のやおいくさい漫画がふつうに掲載されていたり和田慎二だってまだいろいろ描いてたりした。それが次第にダメダメになっていって、掲載作品の半分くらいが異性装漫画になった辺りで読むのをやめたのだけれど、とにかくあの頃からどうも花とゆめという雑誌自体の漫画構成能力がものすごく落ちている気がする。まだまだ面白い漫画を描いてる作家もいると思うんだけど、面白い漫画があってもそれは単に作家個人の力量による産物っていうか、〈雑誌〉(編集者やネームバリューや環境すべてをふくめての、『花とゆめ』という〈雑誌〉)は全然バックアップ出来てない印象。
 まあオトメンは別花の掲載らしいのだが、別花は今オールド花とゆめっぽくなっている印象だから。

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