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[ 読書/一般コミック ]

森永あい『僕と彼女のXXX』4

 一巻(菜々子×あきら)、二巻(千本木×菜々子)、三巻(菜々子+椎名)ときて、これは千本木+あきらなのか千本木×あきらなのかどっちにしても、遂に表紙からしてなんかやおい。

 暴力美少女菜々子と、内向美男子あきらの中身が入れ替わり、あきら(中身菜々子)は菜々子の友人椎名と付き合いだし、あきらの友人千本木は菜々子(中身あきら)にめろめろに。ちなみに現在、入れ替わりを知らないのは椎名だけ。
 で、まあ四巻は千本木と菜々子(中身あきら)が急接近なので、もはやこれはやおいなのか?BLなのか?という状態に。
 追記:ごめんよく見たらあきら×千本木だった、表紙は。

 掲載誌の対象読者は男子なのか、女子なのか。ヤマジュンやら準にゃんとかやらの影響なのか、最近男子読者もやおい耐性がついてきたり、むしろ楽しんだりしてる(ネタ的に楽しむことの是非はここでは措く)ので、門戸は広がってる気がしなくもない。
 だからこういうちょっとライトなやおいっぽいの、を男子、というか非BL読者がどう思うのか、ちょっと興味がある。

 しかしそんなでかい話を考える前に、この『僕と彼女の』がほんとにやおいなのか、っていうかこのままやおい路線を進むのか、が問題なんだよね。
 まあやおい展開の是非は別としても、あたしは森永あいという書き手の物語の作り方を、あんまり信頼してないのである。
 森永あいはオタクなクロエ的には(あっまだ慣れない)もちろん(もちろん?)、『ユンカース・カム・ヒア』からのつきあいで、しかしあの頃は特に特徴の無い作家でこのままマイナーに終わるんかなと失礼なことを考えていたのだけれど、やっぱり出世作って『山田太郎ものがたり』になるんかね。なんか絵がすごい進化したんだよね。『ユンカース』から『山田太郎』の間をよく知らないので不思議。

 それはさておき、この進化したキラキラ絵は中々味があってよいとも思うのだけれど、一方お話づくりは『山田太郎』的なアクロバットに頼った展開が目立ってきてて、特に『あひるの王子さま』はそんなとこがすごく悪く作用していたように思う。なんというのか、あっちにいったりこっちにいったり、ハラハラドキドキの振り子展開が基本なんだけど、その振り子はどこかに着地するための振り子ではなく、もはや振り子運動そのものが目的化してるというか。

 だから『僕と彼女の』がどんな結末に向かっていくのか、大まかにわけて結末があきら×菜々子なのか、それとも千本木×菜々子(中身あきら)なのか、ってのはまだ見えないし、それで森永あいの力量がちょっと見えてくる気がするのだ。
 あきら×菜々子は、今のところ菜々子サイド的に全くありえないのだけれど(笑、ではなぜあきらの菜々子への未練がくどくどしく語られているのか、ちょっと疑問。千本木×あきらにしたほうが、物語的には自然だと思う。もしもあきら×菜々子になっていくのなら、それなりの説得力が必要になってくるだろう。

 ただ、千本木×あきらの方も今まではちょっと無理矢理なやおいな気がしなくもなかったんだよね。千本木の菜々子(中身あきら)への気持ちってのが唐突な気がしてて、ていうか実は千本木のキャラ自体があまり見えてこなかった気もしていた。かっこよくて女の子にモテモテで、でも地味男なあきらの親友だった千本木って、どんな人なんだー、って感じで。
 でも今回番外編で千本木とあきらの中学時代が書かれていて、千本木の性格とか、なんで菜々子(中身あきら)のことが好きになったのかとかが見えてきて、急に丁寧に描かれ始めたなあという気もして、ますます千本木×あきらが自然な展開に思えるようになったので。

 ところで、千本木の内面が語られたことで、千本木×あきらはBLについて考えるための材料としても面白みが増したと思う。
 千本木は菜々子(中身あきら)の性別ってどう考えてるんだろう。千本木は中身があきら=男子だからこそ好きになったわけだけれど、千本木が好きなあきらっていうのは、実際の女子すら持ちえないほどのたおやめぶり(他にいい言葉が思いつかない)の具現化なわけで、ってことは千本木はあきらの中に理想の女性像を見てるんだ、とも言える。
 千本木はあきらの中に何を見ているのか、女性性なのか、それとも性差を超えたナンカなのか。
 BLって、攻めも受けももはや男でも女でもないところに作られたキャラなんではないかと言う気が最近していて、そういう視点でも千本木は面白いと思うのだ。

 …えーと、なんだかいろいろとくどくどしく書きましたが、正直千本木×あきらでつっぱしってほしいだけです、あたしは(笑

 あ、ところであたしが千本木好きなのは、…メガネだからなのだろうか?

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