杉浦志保『氷の魔物の物語』13、14
最終巻だし全体を外観しつつ。
とりあえずベタなファンタジーをうまくまとめてくれたと思うし、一時期すんごい盛り上がったし面白かった。天然いい子のイシュカのブラック面とか、マモノと人とのどうしても共存できない部分とかも、ベタながらも丁寧に描いていたと思うし、かなり好印象。
その上でなお、特にラストのあたりは甘かったような気もした。なんかイシュカとブラッドは愛されまくってるし、作者の自主人公萌えも最後の方ではちょっと鼻についてきてしまった。あと、最後に彼らが勝つことがあまりにミエミエだったのも微妙。カウゼルとの戦いも、闇に取り込まれてしまうあたりは面白かったけど、その後はなんだか盛り上がりに欠けていた。無性に無防備なカウゼルをみんなで封じるって結果になってしまっていて、カウゼルはかわいそうだし戦いとしてもつまらない感じだった。あとカウゼルの存在自体、その言葉もその名すら毒である、という設定が活きなかったのも残念。いい設定だったのになあ。
しかしカウゼルかわいそう、と思ってしまったのは、シルバーダイヤモンド(S◇)というかチグサを既に知っているからなのだろうか(作者がブラッド→チグサでなくてカウゼル→チグサだって言っちゃってるから)とも思う。S◇ではラカンはやっぱり主人公特権でモテモテなんだけど、チグサがヤバイ人認定されてることでバランスがとれているのかもしれない。ファンタジーとしても漫画としても、マモノからS◇へかけて作者が格段に力をつけてきているのは間違いないと思うし、S◇の今後にはますます期待できるように思う。
ところでブラッドの傷跡について、いくらイシュカの治癒能力がなくなったといっても、ブラッドのマモノとしての治癒能力はなんで発揮されないんだろう?と思った。そう言えばイシュカがブラッドが殺されたと思ってむちゃくちゃ黒くなっていたあたりもよくわかんなかった。