「葉山! 探したじゃないか」
話を打ち切らせるかのように背後から掛かった声に、平沢くんと同時に振り返ると、赤池くんが息を切らせてこちらへやって来るところだった。
「ごめんね、電話の呼び出しがあって」
「いいけどな、何こんなところで伸之と浮気してるんだ」
言われて見ればぼくは平沢くんに抱きしめられたままの格好だった。
「そそそそれは、あれだけど、そうじゃないし、あの、うわき、って?」
一体、なんのこと?
ぼくの疑問はふたりにきれいにスルーされ、平沢くんはぼくを離して、赤池くんに向かっていたずらっぽく笑いかけた。
「赤池、ギイには内緒にしておいてくれよ。俺も命が惜しいからさ」
ギイ? なんでそこで、ギイ?
赤池くんは、さてどうだかね、とうそぶきながら、ぼくに向き直った。
「それはともかく、もう随分待たせてるんだから、急ぐぞ葉山」
「待ってよ、赤池くん。待たせてるって、だれを?」
「行けば分かる」
それ以上説明しようとはせずに、赤池くんはすたすたと歩きした。あわててぼくもその後について歩き出したところで、平沢くんがぼくを呼び止めた。
「あ、葉山!」
「うん?」
「グッドラック!」
Vサインで見送ってくれる平沢くんの晴れやかな笑顔に、ぼくは頷き返した。
-the end [no. 8]-
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「俺としては、もうちょっと葉山とからみたかったって感じかな。
ま、ギイが怖いし、いいけどね」
平沢くんはそう苦笑しながら「 o 」と書かれた赤紙をくれた。
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