裏コイモモ
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「どういうこと?」
「葉山を記憶喪失にした、犯人」
「ちょっと待て、お前これが人為的なものだっていうのか? オカルト小説じゃああるまいし、そんなこと……ありえないだろう」
確かに、あまりに非科学的な話ではなかろうか?
呆れ声の赤池くんにぼくがうんうんと頷いていると、高林くんは美貌がゆがむのにも頓着せずにぷーっと頬をふくらませた。
「だって僕、犯人知ってるんだもん」
「誰だよ」
「精神分析同好会」
「はあ?」
赤池くんとぼくが思わず声をあわせると、高林くんはさらにむっとした顔をした。
「なんだよ、葉山も赤池も! せっかく人が親切心から教えてやってるのに、さっきから!」
「あ、あの、ごめんね、高林くん。詳しく教えてくれる?」
「だから、精神分析同好会だってば。そこの部長ってやつが、葉山の記憶喪失は自分たちの催眠術の成果だっていばってた」
赤池くんはうーむとうなり、腕をくんだ。
「うさんくさいが、確かめる価値はあるな。高林、その部長って奴、知ってるのか?」
「部屋に案内してあげる、一緒に行こう。僕、この後吉沢と約束があるんだから、早くすませちゃおう」
吉沢、って、もしかして、あの吉沢くん? 利久の友達の?
吉沢くん、高林くんと、仲良しになったんだ。
ぼくがこっそり感心していると、赤池くんは、呆れたように大きなため息をついた。
「なんだ、デートか?」
——え?
「なんだって、なんだよ、赤池!」
「だって、今更。いっつも一緒に居るじゃないか、ふたり」
「最近はそうでもないから、会える時間は貴重なんだよ。ここんとこ一日に三時間くらいしか一緒に居ないんだよ!?」
「クラスも部屋も違うってのに、それだけ一緒に居られれば十分だろう……」
……なんですと?
ぼくは開いた口がふさがらないまま、さっさと歩いていってしまった高林くんと赤池くんをあわてて追いかけた。





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