「……なんで?」
「なんで、って?」
真行寺くんはぼくを少し離して、首をかしげる。
「その、実はさっきから疑問だったんだけど」
「はい?」
「真行寺くん、前からぼくと仲が良かった?」
「えっと、たぶん」
「たぶん?」
「葉山さんが、迷惑に思ってなければ」
そんなことは、ない気がするけど。
「だから、なんで?」
「へ?」
「なんで君が、そんなふうに……、だって、君は……その、かっこいいし、友達も多そうだし。なんでわざわざ、ぼくなんか?」
「カッコイイ、ですか?」
「へ?」
「葉山さん、俺のことカッコイイって思ってる?」
「え! ちょ、今そこは、つっこむところじゃ……」
「や、だって、うれしいっす、それは!」
しっぽがあればふっていそうな勢いの笑顔で、真行寺くんはふたたびぼくをぎゅうっと抱きしめた。
背中に回された長い腕が強い力でぼくをとらえ、ぼくは思わず真行寺くんの胸にすがりつく。
「し、真行寺くん、くるしいよ」
「だって、葉山さん」
人見知りの激しいぼくが、今日はじめて会った後輩にこんなふうに抱きすくめられて、どうして反撃できないんだろう。理由がわからないけれど、でもどこかでわかってる。
こんなふうに体全体で、こんなまっすぐな目で、好きだなんて言われたら、拒否などできるわけがない。
屈託のない大型犬みたいな真行寺くんは、まるでお日さまのようで。けれどぼくは、彼の痛みをもどこかで知っているような気がして。明るい笑顔のどこかにその翳を感じると、なぜだか胸が痛んで仕方がない。
ぼくは真行寺くんの背中に腕をまわして、いたわる気持ちでそっと抱きしめた。
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