食事を終えたところで、ひとりの生徒がこちらに近づいてきた。
「三洲、ちょっといいか?」
「ああ大路、どうした?」
「これからちょっと生徒会室に来られないか?」
「もしかして、アクシデント?」
「う……実は、そうなんだ。葉山くんのこともあるし、申し訳ないとは思うんだけれど」
「いや……大路たちがこんな時間まで働いていたのに、俺が行かないわけにはいかないよな」
三洲くんは軽くため息をついて、肩をすくめた。
「葉山、悪い。ちょっと出なきゃならなくなった」
「そんな、いいよ。ぼくのことは気にしないでよ」
三洲くんは心配しなくていいと言ってくれたけれど、やはり仕事よりもぼくなんかを優先してもらうのは、なんだか申し訳ない。
ぼくは心からそう言ったのだけれど、三洲くんは皆の方を振り返って声をかけた。
「誰か、しばらく葉山見ててくれるか?」
「うーん、そうしたいのはやまやまなんだが……一年と約束しちゃっててなあ」
「俺も、これから約束があるんだ……葉山くん、ごめんね」
そうか、皆階段長やなんかで、忙しい人たちなのだ。やっぱり、ぼくなんかのためにわずらわせてしまっては申し訳ない。ぼくなら一人で大丈夫だから、と言いかけた時だった。
「俺は暇だから、大丈夫だよ」
そう言ってくれたのは、これまであまり会話に加わってこなかった八津くんだった。
「八津、それじゃ葉山のこと頼んでいいか?」
「葉山くんさえよければ、喜んで」
八津くんはにっこり笑ってそう言うと、ぼくを振り返った。三洲くんたちの邪魔はできないし、勿論ぼくに異論はない。
「ありがとう、えっと、八津くん」
それをしおに、皆はばらばらと立ち上がってそれぞれの目的地へと向かって行った。皆去り際にぼくに声をかけていってくれたのが、なんだか面映かった。
「さて、よかったら散歩にでも行かない? 葉山くん」
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