「葉山はよく温室でバイオリンを弾いていたから、昨日もそうだったんだと思うけど」
「ぼくが? バイオリンを?」
「そうだけど……確か、葉山がバイオリンを持ってきたのは、今年のゴールデンウィーク明けだったな」
そうか。ぼく、またバイオリンをはじめてたんだ。
驚きの気持ちとともに、三洲くんにうながされて、ぼくのものだそうなバイオリンを見てみたけれど、まったく見覚えがなかった。
「これ……すごく高価そうだけど、本当にぼくのものなのかな?」
「さあ、そこまでは……そういえば、葉山は今度の文化祭でブラバンと一緒に演奏する予定だって聴いていたから、昨日もその練習をしていたのかもしれない」
「ブラバンなんて、あるのかい?」
「出来たんだよ、去年。野沢が部長で、最近よく葉山と話していて……そういえば、野沢は二階長だし、顔をあわせておくか?」
これ以上新しい人と会うのは正直気が進まなかったのだけれど、三洲くんの親切を無駄にしたくなくて、ぼくは頷いた。
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