「さて、どうするかー」
食器を片付けながら、のんびりと呟いた利久は、突然あっと声をあげた。
「そうだ、託生。ギイんとこは、もう行った?」
「は?」
なんで、ギイ?
「行ってないのか? じゃ、ちょっと一緒に行ってみるか」
ギイ——崎くん?
利久の言おうとしたことをいまだ理解できないでいるぼくの腕をとって、利久はさっさと歩き出してしまう。
「利久、待ってよ。どこに行くんだよ」
「だから、ギイの部屋だって。ギイ、今年は三階長だぜ」
そうか、崎くん、階段長なんだ。さもありなん、だ。
あれ? でもぼくの部屋は、確か二階だったような?
三階長にたよるのは、筋違い、なのでは?
「と、利久、ちょっと待……」
「ギイ、お邪魔ー!」
あたふたしている間に辿り着いてしまったゼロ番、利久が元気のいいノックとともに開いたドアの中には、なぜだか数人の、おそらく下級生と、——崎くん。
相変わらず、とんでもない美男子だ。
大人っぽくなって、ますます、かっこいい。
けど、メガネなんてかけていたっけ? この二年の間に、目が悪くなったんだろうか。
びっくりしたような顔でぼくたちを見上げている下級生達の中から、崎くんはこちらに気さくに笑いかけ、片手をかるくあげて挨拶してくれた。
「よ、片倉、託生」
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