そう、と三洲くんが頷いた時、背後から元気な声が聴こえてきた
「たくみー、だいじょぶだったかー?」
「利久!」
三洲くんにはちょっと申し訳ないけれど、思わずぼくが歓喜の声をあげてしまったのも、仕方のないことだと思う。何しろ、今のぼくの記憶の中では最も親しい友人なのだ。
結局ぼくは、三洲くんと利久と、三人で夕食をとった。
利久が明るく話しかけてくれるので、なんとなく気が楽になり、会話もそこそこはずんでいた。
「でも託生、今年の同室が三洲で、ほんとよかったよなー。三洲、しっかりしてるし、親切だもんなあ」
「うん、三洲くん、すごく気遣ってくれて、ありがたいよ」
利久の言葉にぼくは心底同意し、大きく頷いた。
三洲くんはちょっと照れたような顔をして、軽く首を傾げた。
「同室者が困っている時に助け合うのは、当たり前だろ。俺も葉山には世話になってるし」
「ええ!? ぼくが三洲くんを、……かい?」
ぼくが、同室者の、しかもこんなにしっかりした三洲くんの、世話を?
にわかには信じられなくて、思い切り驚いていると、三洲くんは真面目な顔で頷いた。
「そう。俺が体調が悪いときに、水を持ってこようとしてくれたり」
「え……、それだけかい?」
「他にも、部屋に後輩が来たかどうか教えてくれたり」
「……ぼくって、一体……」
どんよりと落ち込むぼくを見て、三洲くんはちょっといじわるく微笑んだ……なんだか、さっきまでの三洲くんとは、ちょっと雰囲気が違うみたいだ。
そうこうしているうちに食事がすむと、三洲くんはちらりと時計を見て、利久に向き直った。
「片倉、この後俺、生徒会の用事があるんだ。葉山のこと、しばらく頼んでいいか?」
「勿論! 任せてくれよ」
「頼むよ。葉山、ごめんな」
「あ、ううん、そんな」
「消灯前には部屋に戻るから。じゃ、またな」
そう言って、三洲くんは食堂を後にした。
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