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「あの、赤池君。いろいろ面倒をみてくれて、ありがとう」
「別に、普段とかわらないさ」
ん? ということは、だ。
「……ぼく、そんなに迷惑かけてたんだ」
記憶がないから、どれくらい赤池くんに助けてもらったのかはわからないけれど、なんだか申し訳ない気持ちである。
でも、赤池君は、軽く笑って手をふった。
「迷惑ってほどじゃないけど、葉山が困ってたら助けるってのは、当たり前だったから……特に、この四月からは」
「そう、なんだ」
四月……三年になってから?
どうしてなんだろう、と思ったけれど、赤池君はその先を続けた。
「だから、記憶をなくそうが、葉山の面倒は僕がみてやるよ。今年はずっとそうして来たんだから。それに……事と次第によっては、僕は」
――覚悟は、出来てる。
「わ」
赤池君はその先は言わず、そっと手をぼくの手にかさねた。
「記憶が戻っても戻らなくても、葉山には僕がついてるから」
「赤池くん……」
どうしよう。
ありがたいような、怖いような。
でも、その手のあたたかさに、ぼくの心も少しずつ落ち着いていくような気がした。
「あの、赤池くん」
「ん?」
「……その、これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
赤池くんは笑って、かさねた手に力をいれ、やさしく握ってくれたのだった。






-the end [no. 2]-




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「なんで僕だけこんな本気っぽい話になってるんだ!けしからん!」
よくわからないことを言いながら、章三は「 a 」と書かれた青紙をくれた。
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