裏コイモモ
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……なにやら背中が暖かい。
寝ている間に、いつの間にやら後ろ抱きにされていたみたいだ。人の体温は温かくて気持ちいい。枕がわりにさせてくれているその腕に、わざとほほをよせてぬくもりを求め、このままいつまでもまどろんでしまいそうで、思い切って目をあけてみる。
いつもと違うような気がする壁に、ここはゼロ番じゃないぞと気づき、はっと後ろを振り返る。
「み、三洲くん!?」
「…………ん」
「ど、どうして? なんで、三洲くん?」
パニックしているぼくに、三洲くんはゆっくり体をおこすと頬杖をつき、すこし眠たげににっこり笑って言った。
「おはよう、葉山」
「み、三洲くん、これ、どうなってるの?」
「なんだ、忘れたのか」
三洲くんは心外そうにそう言うのだけれど、ぼくにはまったく覚えがない。
「葉山は一昨日から記憶喪失になっていたんだよ」
「記憶喪失!?」
またしても!?
「そう。でも昨日病院で精密検査もしたし、記憶も戻ったし、もう心配することはないから」
「そ、そうなんだ、よかった」
ぼくはほっと息をついた。
「でも、なんでぼくは三洲くんのベッドで寝ていたんだい?」
三洲くんは片眉をあげて意地悪く笑った。
「記憶喪失が治ると、逆に記憶喪失だった間のことを忘れてしまうっていうのは本当だったんだな。覚えてないのか? 昨夜、ひとりで寝るのが淋しいって、俺に泣きついてきたの」
え……ええ〜っ!?
ぼくが、三洲くんに!?
まさか、でも、現にこうして……
「あ、あの、ぼく……」
三洲くんは得意のきれいな笑みを見せ、まだ動揺しているぼくに言った。
「崎には内緒にしておいてやるよ、葉山」






-the end [no.1]-




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「ま、一晩のプラトニックな逢瀬でよしとしておこうか。
というわけで葉山、これはおみやげ。
崎に見つからないように、しまっておけよ」
三洲くんはひとり頷きながら「 t 」と書かれた赤紙をくれた。
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