「平気?」
「う、うん、なんともないよ」
「よかった」
「うん」
「託生が辛いと、オレも辛いからさ。二年前からそう思ってたよ」
新くんは真剣な表情で、そう言った。
なんていい人なんだろう。
「あの、ほんとにありがとう、新くん。君みたいな人が友達になってくれたなんて、ちょっと信じられないくらいだけど、すごくうれしいんだ」
「……友達?」
新くんは口の端をすこしゆがめて笑い、もう一度手をあげて、こんどはぼくの頬にふれた。そして——
唇が、唇にふれた。
「少なくとも俺は、友達とこんなこと、しないけど」
——え?
今の、もしかして、キス?
呆然としているぼくにくすっと笑いかけ、新くんは首にまわした手でぼくをひきよせ、またくちづける。
混乱する頭のまま彼の少しつめたい唇をうけとめ、それが嫌ではないことに更に混乱し、やっと開放された時には何も考えられなくなっていた。
新くんはくすりと笑って、ぼくの唇を親指でなぞる。
「託生、桃の味がする」
「あ、あの、新くん?」
その、君とぼくとは、どうなってるのでしょうか?
「それは、ゆっくり思い出してよ」
新くんはきれいな笑顔で、そう言った。
3