裏コイモモ
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「じゃなくて、あらた」
「ん?」
「三洲新、俺の名前」
三洲くんはにっこり笑ってそう言った。
「託生は俺のこと、名前で呼んでたよ」
「え、あ、そ、そうなんだ」
と、急に言われても、ぼくにとっては初対面同然の人を、名前でなんて呼べやしない。
でも、三洲くんは今年のぼくの同室者なのであって、確かにぼくも利久のことは利久と呼んでいたんだから、それってぼくは三洲くんとも利久とみたいな関係になれた、ってことなんだろうか。
だとしたら、それは素直にうれしい。
三洲くんはぼくが黙っているのを困っていると受け取ったのかどうか、苦笑したようだった。
「ごめん、無理しなくていいよ。託生にとっては、突然そう言われたようなものだよな」
「あ、ううん、そうじゃないんだ、ちょっと、びっくりしただけだから」
「そう?」
「うん、ぼくがどうしていたのかは知っておきたいし。だから、教えてくれてありがとう、えっと、……新、くん?」
三洲くん、もとい、新くんは、少しうれしそうににっこり笑った。
さっきまでの笑顔とは違う、もっと優しい笑顔だ。
ん、あれ? ぼくは新くんの笑い顔がわかるほど、新くんと親しかったんだろうか?
記憶はないけれど、ぼくはやっぱり、新くんともちゃんと友達になれていたのかもしれない。
利久にしていたように、とまでは行かないけれど、ぼくはうちとけた気持ちで新くんに微笑み返した。





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