裏コイモモ
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ベッドのヘッドボードにせもたれる格好で、ギイはぼくを抱いていた。時折やさしい手つきで髪をすいてくれるので、気持ちよさにうっとりしてしまう。黄色のカバーがかかった枕を抱いて、ぼくは半分眠りかけていた。
「ごめんな、託生。こんな時に、すぐに会いに行けなくて」
「ううん、ギイ。本当に、平気だったんだよ。三洲くん達が助けてくれたし。それに」
ぼくは首をまわして、ギイの顔をのぞきこんだ。
きちんと目を見て、言いたかったのだ。
「ギイは、ちゃんとぼくをたすけてくれてたから」
「え?」
不思議そうな顔のギイに、ぼくはくすりと笑って、さっき気付いたばかりのことを教えてあげた。
「だって、出なかったんだよ、嫌悪症。記憶は一年生の時のままなのに、身体は平気だった」
「……そうか」
「うん、ギイの、おかけだよ。記憶をなくしても、ぼくは何もなくさずに済んだんだよ」
「そうか、……託生」
ギイはうれしそうにぼくを呼ぶと、またやさしくキスをした。

他の何を忘れても、ギイがくれたはそこに残っていた。
このとんでもない経験の中で、ぼくにとって、それは一番の収穫だったのだ。






*happy end*







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