手持ち無沙汰になってしまったぼくは、机の上の自分の持ち物を検分していた。買った覚えのないものばかりだけど、欲しかったものも見付かった。赤い箔押しの音符でふちどられたジャケットの、井上佐智のバイオリンソナタ集。
早速それをかけながら、本や教科書などをみていると、放送がかかった。
『270号の葉山くん、電話です』
ぼくに、電話? 誰だろう、母さんだろうか。
母さんとは、先生方からの連絡のついでに少し話をさせてもらったのだけれど、やっぱりうまく話せない上に、この二年間の間に微妙に関係に変化もあったのか、いつも以上に話しづらかった。
なので、今は正直あんまり話したくないし、赤池くんにもここで待っているようにと言われている。
どうしようか。
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